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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第三章 オーバーダイブ
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第百十話 清算(1/7)

******視点:卯花優輝(うのはなゆうき)******


 9月23日。バニーズの今年のペナントレースが終わった次の日。


「…………」


 今日の(あい)はおれの部屋に来て早々、ずっとテレビの前。座布団の上で三角座り。持ち込んできた古いゲーム機を繋いで、野暮ったいブルーライトメガネをかけて、黙々とコントローラーを操作してる。

 これが逢なりのリフレッシュ方法みたいだけど、正直、おれにとっては肩透かしを食らった気分。体力底知らずの逢の相手をするためにおれも結構溜めてきたし……


「逢……?」

「…………」


 軽く肩に触れて話しかけても無反応。


「……優輝(ゆうき)

「うぇっ!?な、何……?」

「触りたかったら好きにどうぞ」

「え……!?」

「邪魔はしないでね?」

「う、うん……」


 逢の真後ろにもう1枚座布団を置いて座る。ちょうど鼻の高さに逢の後頭部があって、逢の甘い香りが脳へダイレクトに届く。その香りにあてられて、腕を逢のお腹辺りに回して密着する。


「…………」


 これでも無反応。『どのくらいなら邪魔にならないかがわからない』って言い訳を頭に浮かべながら、胸元に手を持っていく。


「……ッ!」


 流石にちょっと反応。触れた瞬間にほんの少しだけ身震い。でも相変わらず視線はテレビの方で、こっちにはノーリアクションを貫いてる。


「あ……」


 電気ケトルのスイッチが戻って沸騰の(しら)せ。一旦離れて、先にティーバッグを入れてた2つのカップにお湯を注ぐ。他のコップを洗ったりして少し時間を潰してからティーバッグを取り出して、カップを逢の近くのテーブルに持っていく。


「紅茶、淹れたよ」

「ん」


 口を動かすこともめんどくさがってるような返事。まるで思春期男子とお母さん。


「んー……」


 ついでに戸棚を開けてお茶菓子を選ぶ。前の日曜に買い込んだばかりだから色々あって悩む。


「…………」


 そうこうしてると、逢が座布団を片手で叩いてる。視線はそのままで背後にあるおれが座ってた座布団を。

 ……満更でもなかったんだね。


「お待たせ」

「ん」


 さっきと同じように逢の背後に座って、そのまま密着。

 逢がプレーしてるのは、正直観てるだけじゃつまらない、作業感あふれるジャンルのゲーム。でも……


「優輝」

「何?」

「スケベ」

「うぇっ!?な、何でいきなり……」

「背中に当たってる……っていうか押し当ててるでしょ?」

「うっ……」


 逢に触れてるだけで気がまぎれる。こんなふうに別の方向で不満が募るばかりだけど。


「明日になれば頭も身体も切り替わると思うから、明日になったら搾り取ってあげる。根こそぎね」

「あ、ありがとう……」

「というわけで、続き」

「うん……」


 要望に応えて、身体を密着させながら、頭とか身体中を撫で回す。相変わらずコントローラーから手を離さないし、視線もテレビの方だけど、やがておれの方に体重を預けてきた。正直重いけど、おれの方も気持ちが高まる。逢の体温を求めて体積を増すばかり。

 ……でも夕方から学校なんだよね。どうしよう……


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