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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第一章 フィノム
69/1128

第十三話 誰よりも近くで(1/7)

6回表 紅3-3白


○白組


[先発]

1二 徳田火織(とくだかおり)[右左]

2中 有川理世(ありかわりせ)[右左]

3右 松村桐生(まつむらきりお)[左左]

4一 天野千尋(あまのちひろ)[右右]

5三 リリィ・オクスプリング[右両]

6捕 冬島幸貴(ふゆしまこうき)[右右]

7指 伊達郁雄(だていくお)[右右]

8左 秋崎佳子(あきざきよしこ)[右右]

9遊 月出里逢(すだちあい)[右右]


投 山口恵人(やまぐちけいと)[左左]


[控え]

雨田司記(あまたしき)[右右]

氷室篤斗(ひむろあつと)[右右](残り投球回:0)

夏樹神楽(なつきかぐら)[左左]



●紅組

[先発]

1中 赤猫閑(あかねこしずか)[右左]

2遊 相沢涼(あいざわりょう)[右右]

3右 森本勝治(もりもとかつじ)[右左]

4左 金剛丁一(こんごうていいち)[左左]

5一 グレッグ[右右]

6指 イースター[右左]

7三 ■■■■[右右]

8代 財前明(ざいぜんあきら)[右右]

9捕 真壁哲三(まかべてつぞう)[右右]


投 三波水面(みなみみなも)[右右]


******視点:早乙女千代里(さおとめちより)******


「6回の裏。紅組、選手の交代をお知らせします。ピッチャー三波(みなみ)に代わりまして早乙女(さおとめ)。ピッチャー早乙女。背番号17」

「早乙女かぁ。そろそろ覚醒してくれへんかなぁ」

「一応ドラ1のエース候補なんやしなぁ」

「というか一軍のリリーフ使わんのか?」

「7・8・9は勝ちパでいくんちゃう?一応紅白戦やから他の戦力も試したいんやろ」


 言ってくれるねぇ……あーしは単にチャンスもらってねーだけだし。

 まぁそろそろ一軍定着するから見てなって。ポイント稼ぎにはちょうど良い相手だしね。


「また、サードの■■は■■と代わり、■■と財前が守備位置を入れ替えます。7番セカンド■■、背番号■■。8番サード財前、背番号46」

(クソッ、あんなガキにコロッと騙されただけで終われるかよ……あと1回は打席があるはず。そこで挽回してやる……!)


 良かった、財前さんはそのまま守備に入れるんだね。山口(あのジャリ)にリベンジできるかは微妙だけど、まぁ氷室(ひむろ)以外の白組ピッチャーなら余裕っしょ。


「9番ショート月出里(すだち)。背番号52」

「月出里さん、徳田(とくだ)さん、有川(ありかわ)さん!もう一度私にチャンスメイクお願いします!」

「さっきのファインプレーのノリで打っちゃえ(あい)ちゃん!」


 おーおー、この状況でも空元気とは恐れ入るねぇ。

 でも打席にいるのはバッピもまともに打てない顔だけチビ。残念残念。


(早乙女、油断するなよ。白組(奴ら)はまだ死んでない。一度プロとして死んで拾われた俺だからよくわかる)


 あいあい、真壁(まかべ)さん。まずはワンナウト稼がせてもらいましょうかねぇ。


「ストライーク!」

「うおっ!相変わらず速ぇ……」


 初球148km/h。うーん、今年初登板にしちゃ上々だねぇ。いつまでもすまし顔でいられると思うなよ、スダチちゃん?


「いきなりおれよりも速いのかよ、くっそ……」

「左でMax153の本格派左腕。チーム1の長身でもあるし、潜在能力だけ見れば高卒でドラ1も納得の逸材ではあるんだけどねぇ……」

「ストライーク!」


 突っ立ってるだけで出塁できると思うなよ?あーしは制球はアバウトだけど、ストレートならストライク取るくらい十分できるんだよ。スピードだって山口(あのジャリ)以上。そのひっくり返したかまぼこみたいな目でもわかるっしょ?

 コイツで決めてやんよ……!


(落ちるね)

(……!!?)

「うぉっ!!!??」

「アウト!」

(こえぇ……打球のスピードだけはイカれてやがるな……真正面で逆に助かった)


 サード財前さん真正面へのライナー……流石に事前情報であーしの球種は把握してるだろうから、初見のスプリットにあっさりと合わせられたのはまだかろうじて理解できる。ストライクゾーンから外れ切らなかったしね。

 でも、この違和感は何?なんとなくスタンドに入ったような感覚だったけど、結果は内野へのライナー……わけわかんねぇ。


(チッ……)


 ま、まぁ良いか。予定通りワンナウト取れたし、しかも後続は左3人。おまけに先の2人は凹みっぱなしの"裏切り者"に、打つのだけはできない有川。こりゃ3凡で良い感じにアピールできるっしょ。


「すみません、火織(かおり)さん……」

「……大丈夫だよ、逢ちゃん。アタシももう大丈夫だから」

「……!」

「さっきはありがとね。『あっくんが2点で抑えてくれたから勝てた』って、この試合が終わったら一緒に言おうね」

「火織さん……」

「1番セカンド徳田。背番号36」


 さぁて。小細工なんて上等な真似はできねぇけど、小細工抜きでねじ伏せてやんよ!


「ボール!」

「ストライーク!」

「うおっ!?すげぇ曲がり幅……」

「雨田(イキリ眼鏡)と同じで、ノーコンではあるけど真っ直ぐとスライダーはガチやからな早乙女は」

「ファール!」


 よしよし、追い込んだね。これでツーアウトもらった……!


(これなら……!)


 何!?


「ファール!」

「ああ、レフトライン際……惜しかったなぁ……」

「外スラ巧く拾ったのになぁ……」


 チッ、ちょっと浮いた分か……去年までならこれで間違いなくやれてたんだけど、こうも引きつけて打たれると簡単には外スラが決められねぇ……

 となると、これっきゃねぇか!


(!!!)

「ボール!」

「うえっ!?危ねぇ……」

「野郎……!」

「落ち着け篤斗(あつと)、ちゃんと避けたんやから。インハイビーンボールなんて外スラ勝負のピッチャーの常套手段や」


 おーおー、"裏切り者"のくせにいっちょまえに睨んでくれるねぇ。まぁ悪く思うなって。内角に強いテメェを脅すのに、生半可な球は投げられないからねぇ。

 今度こそコイツで決まり……


「ボール!」

「は……!!?」


 ストライクゾーンを通るはずの軌道からボールゾーンへ逃げる、ピッチトンネルの観点で言っても我ながら理想的な外スラ。それを悠々と見逃しやがった……

 ……こうなったら!


「ファール!」

「な……!?」

「すげぇ!今の打ち返せるのかよ!?」

「しかも完全に芯で捉えてたで……」

「いやぁ、本当にすごいね。かおりんの内角捌き……」

「ああいうバッティングでくらいは私に目立たせてほしいんですけどね……」


 嘘だろ……四死球覚悟のフロントドアスライダー、とっておきだったってのに……!


「……ぷっ」


 あんにゃろう、バカにしやがって……!


(落ち着け早乙女!……だが、徳田は完全に目が覚めたみたいだな。ただでさえ目が良いのに、今のまで合わせられる以上、曲がり幅重視の早乙女のスライダーで勝負を続けるのはもう危険だ。……どうする?スプリットでいくか?)


 いやいや、あーしのスプリットは基本的に対右用でまだまだ未完成。スライダーを見切れる目をしてるんだったらスプリットだって多分見切られる。

 それにあーしとしちゃ、最悪他の連中に打たれるのはまだ許せるけど、この"裏切り者"にだけは出塁すら許したくないんだよね。スライダーにしてもスプリットにしても、アイツの脚と真壁のキャッチングを考えたら振り逃げの可能性も十分ある。フロントドアもさっきのはたまたま良い感じのとこにいってくれたけど、練習でも大抵は外れるし、仮に入ったとしても甘く入る可能性大。

 もうとっくにフルカウントだし、こうなってくるともう……

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