表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第三章 オーバーダイブ
687/1134

第百八話 応報(8/9)

 ……ま、もとより実績のある人。ここにきて調子が上がってるんだとしても何もおかしくねぇ。


「ショート宇井(うい)捕って……いったん二塁見てから一塁へ!」

「アウト!」

「アウト!ワンナウトでランナーは二塁のまま!」


 ルーキーだが処理が落ち着いてるな。助かるぜ。


「……アウト!」

「レフト捕りました!これでツーアウト二塁!」


「「「ナイピー氷室(ひむろ)くん!」」」

「ええぞパンダ!ホーム踏ませんかったらええんや!」

「うーん、でもここまで三振1個もないのはなぁ……」


 一般的にノーアウト二塁ってのは相当な確率で失点になるが、100%じゃねぇ。バックを信じて投げてりゃ結果は必ずついてくる。『因果応報』ってのは悪いことばかりじゃない。


「7番ライト、■■。背番号■■」


 右が2人続いたが、今度は左か……


「!!!二遊間……」


 しまった!ストレートが甘い……


「セカンド捕った!!!」

「「「「「おおおおおっっっ!!!」」」」」


 さすが火織(かおり)……だが……


「セーフ!」

「しかし一塁はセーフ!二塁ランナーは三塁へ!」


 脚が速ぇ……紙一重で刺せず。


「あーあ、刺せなかったら意味ないじゃない……」

「肩弱くない?」

「自動アウトなんだから守備でも自動アウトにしなさいよね」


「…………」

(こんな時に……!)

「サンキューセカンド!ツーアウトツーアウト!」


 悔しさで(うつむ)く火織を見かねて声出し。

 実際、火織の守備にはきちんと意味があった。若王子さんはキャッチャーだが脚は遅くねぇし、ツーアウト。外野に抜けてたらホームまで行ってた可能性は十分あった。


「8番レフト、恋塚(こいづか)。背番号53」

「ツーアウト一三塁で打席にはプロ5年目の恋塚。今シーズンはファームで二桁本塁打。俊足強肩強打で非常に将来が楽しみな若手外野手です」

(一発はあるけど振りは荒い。しっかり低めに集めるんやで)


 おう!


「ストライーク!」

「初球から落としました!」


 よし、入りは完璧。


「ボール!」

「高め!ここは見送りました!」

(負けないもん……!)

「ファール!」

「一塁線、切れました!」


 この打席に関しては積極打法を逆手に取れてるな。良い感じだ。


(この分ならもう1回外スラ外しても釣れそうやな)

「ワンボールツーストライクと追い込んで……」


 ッ……!!!


(いける!!!)

「レフト線……」

「フェア!」

「フェア!長打コース!!」


 くそッ、また追い込んだのに甘く……


「セーフ!」

「三塁ランナーホームイン!一塁ランナーは三塁、打った恋塚は二塁へ!ビリオンズ、先制!1-0!」


 やっちまった……!


「「「いいぞいいぞマリア!!!」」」

「うーんこのデータアナリストのアイドル」

「来年こそ"二軍の女帝"卒業してほしいよな」


「9番キャッチャー、西科(にしな)。背番号37」


「タイム!」

「ここでキャッチャー冬島(ふゆしま)がマウンドへ向かいます!」


篤斗(あつと)、大丈夫か?」

「ああ、すまねぇ……」


 今日の登板に備えてやってきたことは、当然火織との復縁とかそういうことばかりじゃねぇ。実理(みのり)をお袋と親父に任せて、此花で身体の方も仕上げてきた。試合前の練習でも制球にそこまで不安はなかったはずなのに……


「……一塁空いとるけど序盤でツーアウト、次は1番。勝負一択や。無駄にランナー貯めて大怪我なんて御法度やで?」

「わかってる」


「プレイ!」


 どうしても甘く入るのなら……開き直ってねじ伏せるまで!


(今日の氷室さんは狙ってストライクを取ることにかけては好調だけど、コーナーにはあまり投げれてない。そしてこの場面、さすがの冬島さんでもフォークは多投したくないはず。ましてや低打率の僕相手なら、ストライクをガンガン狙ってくるはずだ……!)


「「!!!」」


「センターの横……落ちました!」


「「「「「ぎゃあああああああ!!!!!」」」」」


 やべぇ……!


「セーフ!」

「三塁ランナーホームイン!」

(恋塚、アピールチャンスだぞ!)

(はい!)

「センターバックホーム!」


 向こうのサードコーチャーが迷わず腕を回してる中、センターの赤猫さんがホームへ返球……


「……セーフ!!!」

「タッチはセーフ!二塁ランナーもホームイン!……っと、ここで伊達(だて)監督が出てきて……リクエストです!」


 際どいな、今のは……


「頼む、頼む、頼む、頼む……!」

「あっ(絶望)」


「ここで審判団が出てきて……セーフ!セーフです!判定そのままで二塁ランナーもホームイン!3-0となりました!」


「やっぱ(しずか)たその肩じゃなぁ……」

「おっぱいなら余裕でアウトやったやろ」

「ホームラン打てない上に肩貧弱なの多すぎやろ……プロやのに……」


 火織と同じように、赤猫さんの表情も曇る。元はと言えば俺のせいなのに。


「ったく……そもそもあのブスが刺せてたら1点も取られてなかったのに」

「どんだけ氷室くん苦しめたら気が済むねん」

「ほんまセカンド有川(ありかわ)でええやん」


 ……こんな見解を示すのも何だが、今のがセーフになったということは、火織が捕れてなかったらあの時点で点を取られてたはず。それでも相変わらずこういう反応。これも『因果応報』ってやつなのか……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ