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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第三章 オーバーダイブ
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第百三話 【悪(お)しの子】(3/7)

バニーズ・徳田火織(とくだかおり)選手 (24)、同僚の"嚆矢園のスター"との結婚・出産が発覚!「過去にはベンチャー企業の若社長から議員の息子まで……」夜の本性を元同僚が告発


『文福オンライン』特集班 2020/08/17

gerne:エンタメ, スポーツ, 月出里逢

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「徳田は金払いの良い男なら大体誰でもOKみたいでしたね。ここだけの話、一軍の選手とも一夜限りで付き合ったこともあって……オレが知る限りでは既婚者には手を出してなかったはずですが、あくまでいち同僚の知る範囲のことなので……」

 徳田とは天王寺三条バニーズの徳田火織(とくだかおり)選手 (24)のことだ。彼女について告発を決意し話すのは、彼女の入団当初から二軍生活でよく行動を共にしていた元同僚のX氏 (20代後半)。

 X氏によって語られた彼女の真の姿は、ある意味現在のバニーズの実態を象徴するかのようなものだった。


■スターと日陰者の秘密の関係

 2014年夏の嚆矢園を制覇し、その実力と甘いマスクで帝国中を沸かせた高校球界のヒーロー・氷室篤斗(ひむろあつと)選手 (24)の姿は野球ファン、特に女性ファンの間ではいまだに記憶に新しいところだろう。

 その輝かしい功績により、同年のドラフトで1位指名を受けてバニーズへ入団。1年目から一軍のマウンドにも立ち、プロの壁に阻まれつつも順調にキャリアを積み、4年目からは先発ローテーションに定着。タイトル争いに加われるほどの好投手へと成長を遂げた。

 そんな氷室選手と同学年で、同じ年に同じ球団に入団したのが徳田選手だ。徳田選手は高校では地元の強豪校に進学し、当時のチームメイトで現在ヴァルチャーズに所属する睦門(むつかど)選手 (24)やアルバトロスの高座(こうざ)選手 (25)の陰に隠れながらも走攻守三拍子揃った内野手として評価され、ドラフト4位でバニーズへ入団。長い二軍生活を経て、4年目に開幕スタメンに抜擢され、6年目の現在は不動のセカンドレギュラーとして定着している。

 今では共にチームにとってなくてはならない存在となったこの二人が、実はすでに結婚し、出産までしていたとはファンにとっても青天の霹靂といったところだろう。


写真1:府内のとあるマンションの一室の前で、口づけを交わす氷室選手と徳田選手。徳田選手が抱えているのは、おそらく生後それほど経っていない赤子。右目近くの泣きぼくろは氷室選手の実子であることを窺わせる


 お互い才色兼備のスター選手ということもあって、異性のファンを多く抱える身。選手間の恋愛は本来特に咎められるものではないが、ファンの反響を予測するに、この隠蔽は仕方のないところではあるだろう。

 それでも今回X氏が告発に踏み切ったのは、元同僚として、同じ男性として、氷室選手には家庭を持つ上で今一度徳田選手と向き合ってほしいという思いがあったからだと言う。



■下積み時代の苦悩と迷走、そして疑惑

 4年目以降の活躍により、一軍に定着してからの徳田選手は他球団のファンの間でも広く知られているが、それ以前の徳田選手はバニーズファンの間でもあまり知られていない。

 バニーズという球団自体が観客動員数で伸び悩んでおり、二軍球場も人工島の僻地。二軍時代の徳田選手は成績も芳しくなく、データアナリストの間で隠れた逸材としてたまにピックアップされる程度の存在だった。


「これが当時の徳田ですね」


写真2:二軍球場の喫煙スペースで一服する徳田選手。現在の徳田選手とはまるで別人である


 徳田選手と言えばショートヘアで化粧っけがなく、ぱっちりと目の大きい童顔の美女として通っている。健康的な見た目と明るいキャラクターで、特に男性ファンからは好評を得ている。

 しかし、X氏が提供してくれた画像データ上の徳田選手はロングヘアで特に目元のメイクが濃く、長い前髪で左目を隠しているのも手伝って陰のある表情である。また、服装も肌の露出が多く、今以上に多くのシルバーアクセサリーを身に付けていて、煽情的な印象を受ける。


「人間見た目だけじゃないですが、この頃の徳田はまぁ印象通りの奴でしたね。練習も正直あんまり熱心じゃなかったですし、成績もイマイチだから当然一軍からは声なんかかからなくて。そのことで同学年の氷室にもよく恨みつらみをぶつけてましたよ。当時一軍半だった氷室が打ち込まれてる姿を中継で見て、『ざまぁみろ"客寄せパンダ"が』とか言ってね」


 試合前後の練習などでもよく行動を共にしたりと、もともと告発以前から親交が深く関係を噂されていた徳田選手と氷室選手だったが、そういった関係が形成されるまでは長い道のりがあったようだ。


「まぁ選手同士の陰口なんてあっち(球界)じゃよくある話ですよ。それだけで発散しとけば良いものを、1年目から外でも色々よろしくやってましてね。オレが知ってる限りでも、テレビでCMも流してるような大企業の重役さんとか、年商10億越えのベンチャー企業の若社長とか、関東の方に遠征した時には国会議員の息子さんとも割り切った関係になってましたね」


写真3:都内の高級焼肉店で中年男性と肩を寄せ合う徳田選手。男性は過去に大臣にも就任したほどの大物議員の血縁者だと言う


 集客に悩む球団の宿命なのか、徳田選手は入団間もない頃は相当奔放に振る舞っていたようだ。


「アイツの2年目の途中くらいですかね?何の拍子かはわからないんですが、急に氷室とつるむようになって、その関係で練習も真面目にやるようになって。ただ、その間にもちょくちょく男と会ったりしてたみたいです。基本的には一夜限りで関係が切れてたみたいですが、特に金払いの良い相手とは定期的に会ってたみたいですし、今もその辺の清算が済んでるかどうか……」


 球界には昔から不倫などの異性間でのトラブルはつきものである。ジェネラルズのスーパースター・神結(かみゆい)選手 (31)の女性トラブルなどはもはや恒例行事と化している。X氏の懸念ももっともである。


「学年がだいぶ違うんで詳しいことは知らないんですが、オレが現役の頃によく一緒につるんでた奴の中に徳田と歳の近い奴もいて、そいつらが言うには高校の頃も相当遊んでたらしいですね。アクセサリー収集とかトレカとかが趣味だから金はいくらあっても足りないとかで。遠征先で相手校の監督ともしたって噂もあったとか……」


 確たる証拠もない過去のことを遡及するのはナンセンスだが、プロ入り後の話は自己責任。ファンのためにも、何より子を成したほどの相手のためにも、徳田選手と球団には誠実にアカウンタビリティを果たしてほしいところである。



■懸念される球団への影響

 徳田選手と氷室選手が所属するバニーズは20年以上優勝から遠ざかっており、経営元が三条財閥へ移った今でも興行的にどうにか立て直せたという段階である。

 しかし、今年は帝都オリンピックで月出里(すだち)選手 (20)が最優秀選手に選出され、十握(とつか)選手 (24)も自慢の打棒で帝国代表の金メダルに大きく貢献し、バニーズには躍進の兆しが見え始めている。


写真4:帝都オリンピック決勝戦での勝利の瞬間。チームメイトと喜びを分かち合う月出里選手


 かつてはキャベツ焼きのおまけにしてようやく捌けていたというバニーズ戦のチケットだが、先日のバニーズのペナントレース再開1戦目では、前売りチケットが完売となった。また、球団のオンラインストアでは現在、月出里選手関連のグッズはほぼ全て再入荷待ちの状態である。戦力面でも経営面でも、月出里選手の存在感は大きい。ルーキー時代から誰よりも長く練習に明け暮れる姿は二軍の若手選手にも良い影響を与えていると、球団関係者は月出里選手の野球に対する姿勢も称賛している。

 前述の通り、件の徳田選手も氷室選手も球界で実力を認められている一流選手である。それも、これらの選手は共通して20代前半と、バニーズの主力選手は若い選手が多い。

 今シーズンは昨シーズンに引退したばかりの伊達(だて)監督 (39)が率いる新体制で、現在の順位は最下位と低迷しているが、裏を返せば選手も指揮官も十分に伸び代を残している。過去の戦績に関係なく、バニーズはいつ優勝候補に躍り出ても不思議ではない。


写真5:球団のオンラインストアのキャプチャ画像。月出里選手に関連するものに絞っているが、定番のタオルやレプリカユニフォームはもちろんのこと、テープカッターなどのニッチなものまで完売している

写真6:フリマサイトのキャプチャ画像。月出里選手のグッズが大量に並んでいる。特にルーキー時代に撮影した水着姿が掲載されている雑誌は非常に高額で取引されているという


 そんなバニーズだが、近年は同時に不祥事も多く付きまとっている。特に昨シーズンは所属選手の無免許飲酒運転や反社会勢力との関与、助っ人外国人選手のドーピングなど、大きなトラブルが相次いだ。三条(さんじょう)オーナー (22)は連日謝罪に明け暮れた末に緊急入院という事態に陥り、(やなぎ)元監督も持病が悪化しこの世を去った。また、詳細は不明だが、夏頃には月出里選手が二軍戦にも顔を出さなかった期間があり、選手間でのトラブルがあったと噂されている。

 それでもなお(うみ)が残り続けるバニーズ。優勝へ近づくためには、選手の能力面を表面的に向上させるだけではなく、普段からの生活態度や練習への取り組み方などを根治する必要があるのではないかと球団関係者も語る。

 過去には樹神(こだま)選手、現在は月出里選手と、世界の舞台でも活躍しうる大物を定期的に輩出することに定評のあるバニーズだからこそ、そんな超一流の選手に恥じない球団に育ってほしいところである。


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