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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第三章 オーバーダイブ
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第九十二話 この世で嘘を吐かないのは(2/3)

******視点:西園寺雲雀(さいおんじひばり)******


「バニーズ、選手の交代をお知らせします。ピッチャー、三波(みなみ)に代わりまして、早乙女(さおとめ)。ピッチャー、早乙女。背番号17」


「ギャル子!逃げ切り頼むで!」

水面(みなも)ちゃん、もう1イニングいくと思ったんやけどなぁ」

「あんまり引っ張りすぎても向こうと同じようなことになるやろ」


 千代里(ちより)か……高校の時は一応投げ勝ったけど、ドラフトじゃアイツの方がポテンシャルあるって言われまくってたな。実際、アイツは一昨年からずっと一軍。


「また、6回の裏に代打で出ましたオクスプリングに代わりまして、竹本(たけもと)がキャッチャーに入ります。1番キャッチャー、竹本。背番号48。6回の裏に代打で出ました秋崎(あきざき)はそのままセンターに入ります。9番センター、秋崎。背番号45」


 ……あの巨乳とは入れ違いになってもうたな。アイツともきちんと勝負し直したかったけど。


「7回の表、ビリオンズの攻撃。7番レフト、■■。背番号■■」


 逆転の可能性は十分あるやろうけど、下位打線やしなぁ……


「レフト下がって……」

「「「「「おおっ!!!」」」」」

「落ちました!クッション処理の間に打ったバッター二塁へ!」

「セーフ!」

「ツーベース!ノーアウト二塁!!」

(しまった……いきなりスライダークソ甘く入れちまった……)


 と思いきやいきなりのチャンス。やけど次は……


「8番キャッチャー、西科(にしな)。背番号37」


「代打はないか」

「どうするんだ?」

「うーん、素直に送りか?」

「いや、2点差だぞ?」

「ヴァルチャーズの羽雁(はがり)とかならともかくウチの八汐(やしお)なら……」

(今日は撫子(なでしこ)がDHでキャッチャーを1枚切ってるし、西科もここまで一応三振はしてない。今後も撫子の負担を減らすためにも試合に出せる捕手をもっと拡充させたい。遠慮なく打ってけ)


 京介(きょうすけ)……監督は『自由に打て』って指示やけど、多分京介の性格的に最低限って考えやろうな。


(もちろん、最低限はしますよ西園寺(さいおんじ)さん。だけど、そこまでで妥協するつもりはありません)

「ストライーク!」

「まっすぐ!151km/h!!」


 スピードは出てる。京介は一応右やけど、あのスピードやと左右どうこうはあんま関係ないな。


(確かにスピードは出てるけど……)

「ファール!」

(向こうは左のスライダーピッチャーだから、外に逃げる球はなく、全て入り込んでくる軌道。バットを短く持てば十分合わせられる)

「ボール!」

「高め!外れました!」

(スプリット、使えますか?)

(一応は……!)

「ボール!」

「叩きつけてこれも見送りました!」

(チッ、今日はスプリットもあんまり信用できそうもないね)

(となるとやっぱり、まっすぐですね)

「ファール!」

「ファール!」

「粘ります西科!」


 粘っとる……150超えのまっすぐが容赦なく続いてるのに……


「ああっと!キャッチャー捕れません!!」

「セーフ!」

(スンマセン……!)

(いえ、今の止められないようじゃ正捕手はまだまだですよ……)


 叩きつけたスプリット。今のは京介ならきっと捕ってくれた。


「ノーアウトランナー三塁に変わり、そしてフルカウント!」

(……内に入りすぎる危険性がありますが)

(バックドアの『フェイク』……ここまでスライダー系は見せてないし、それっきゃないか。バット短く持ってるから、比較的手が届きにくいはずだし、最悪外れても空いてる塁が埋まるだけ)

(それを待ってました……!)

「「!!?」」


 思いっきり外に踏み込んだ……!?


「セカンドの頭上、ライトの前落ちました!」

「「「「「おっしゃあああああ!!!!!」」」」」

「三塁ランナーホームイン!3-2!!ビリオンズ、追い上げ開始!!!」


「大宮にもこんなキャッチャーがいたんだ!」

撫子(なでしこ)調子悪いからちょうどええな」

「ちょっとムサいけど今度から追っかけようかしら?」


 一塁からこっちのベンチに向かってガッツポーズ。

 ……ウチも見くびりすぎてたな。


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


「……アウト!」


「心臓飛び出るかと思った……」

「ノーアウト満塁は案外点が入らないらしいから(震え声)」

姫子(ひめこ)が4番やなくて良かった……」


 連続四球でノーアウト満塁までいったけど、火消しに出た夏樹(なつき)に封殺されてもうた。今日はほんまお互いあと1本がなかなか出んな。


「京介、ナイバッチ」


 すぐに守備やから防具付けてる間にこれだけは伝えたかった。


「すみません、同点までいきたかったんですが……」

「そこまで責任負わんでも……

「ピッチャーに理想を押し付けた分のツケを払うのもキャッチャーの仕事です」

「……!」

「理想を押し付けてその通りにやってくれた結果で点を取られたのなら、僕が返さなきゃいけないですよ」


 そう言い残して、裏の守備へ向かっていった。

 ……ほんま、頼りになるやっちゃ。


「お熱いでんなぁ〜?」

「うっさい……」


 大チャンスで凡退したくせにからかってくる撫子。こういう切り替えの早さもまぁ見習うべきところか……

 調子に乗って京介をデートに誘ったのが綺麗にフラグになってもうたけど、後悔はあらへん。ヴァルチャーズの真木(さなぎ)久保(くぼ)バッテリーみたいに、2人でもっともっと成り上がったるわ。

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