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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第一章 フィノム
58/1129

第十一話 今のあたしもまた、あの人のシナリオ通りであってほしい(4/8)

○白組


[先発]

1二 徳田火織(とくだかおり)[右左]

2中 有川理世(ありかわりせ)[右左]

3右 松村桐生(まつむらきりお)[左左]

4一 天野千尋(あまのちひろ)[右右]

5三 リリィ・オクスプリング[右両]

6捕 冬島幸貴(ふゆしまこうき)[右右]

7指 伊達郁雄(だていくお)[右右]

8左 秋崎佳子(あきざきよしこ)[右右]

9遊 月出里逢(すだちあい)[右右]


投 氷室篤斗(ひむろあつと)[右右]


[控え]

雨田司記(あまたしき)[右右]

山口恵人(やまぐちけいと)[左左]

夏樹神楽(なつきかぐら)[左左]



●紅組

[先発]

1中 赤猫閑(あかねこしずか)[右左]

2遊 相沢涼(あいざわりょう)[右右]

3右 森本勝治(もりもとかつじ)[右左]

4左 金剛丁一(こんごうていいち)[左左]

5一 グレッグ[右右]

6指 イースター[右左]

7三 ■■■■[右右]

8二 ■■■■[右左]

9捕 真壁哲三(まかべてつぞう)[右右]


投 三波水面(みなみみなも)[右右]


******視点:早乙女千代里(さおとめちより)******


「くそっ、何なんだよアイツ……!」

「ま、まぐれですよぉ。あのニコ中腐れビ■チの実力なわけないじゃないですかぁ……」


 ほんそれ。仮に違ってても右サイドの三波(みなみ)相手だからだし。あーしなら絶対勝てるし。さっさと投げさせてくんないかなぁ。何ならアイツ等相手なんだし先発譲ってくれても良かったのに。


「まぁまぁ。(まり)の方が絶対上手いって。俺等今日どっかで出してもらえるの確約出てるし、そん時に紅組に選ばれた俺等の実力見せてやろうぜ?」


 ……そう、絶対に(くろ)の言う通り。お前等じゃなくて、あーし等が選ばれたんだよ。そのことをあの"裏切り者"にも、あの"客寄せパンダ"にも、絶対にわからせてやる……!




******視点:雨田司記(あまたしき)******


 結局、有川さんは7球粘ったけど三振で3回の裏の攻撃は終了。形こそ作れてるけど、ハンデの3点を除けばゼロ進行であることに変わりない。


 だけど……


「ストライク!バッターアウト!」

「ストライク!バッターアウト!」

「う、嘘……!?」

「マジかよ……」

「氷室くぅぅぅぅぅん!!!!!」


 紅組にとっては1番から始まるこの4回表は好機であるはずなのに、氷室(ひむろ)さんは赤猫(あかねこ)さん・相沢(あいざわ)さんというスターコンビからも三振を奪ってしまった。これでここまで六連続奪三振ということになる。そしてそれだけではなく……


「すげぇ氷室……連続奪三振だけじゃなく、ここまで一軍主力組相手にパーフェクトだぞ……!」


 確かに『投球回数5回まで』、『初見のツーシームスプリッター』、『一軍主力組とはいえ貧打のバニーズ打線』と、有利な条件は揃ってる。それでも、同じことが果たしてボクにもできたかどうか……


「ストレートが平均でも140後半、そこそこの制球と、そこそこのスライダーとカーブとツーシームがあって、極め付けはあの140くらいで落ちるエグいフォーク……冷静に考えてみたら普通に良いピッチャーやんけ!」

「まぁ腐ってもドラ1の嚆矢園優勝投手やからな。俺はこれくらいできると思ってたけど」

「こら先発ローテ入りは固いやろなぁ……」

冬島(ふゆしま)とのコンビで売り出していくんやろうなぁ。伊達(だて)に次ぐ二番手で真壁(まかべ)以外のそこそこの奴が出てきてくれたらええわって感じやったけど、冬島はようやっとる」

「あのバッピ眼鏡やなく冬島が実質ドラ1やろ。あのフォーク捕れてる時点で、去年真壁に慣れたバニキ(※バニキ=バニーズファンの俗称)から見たらなろう主人公みたいなもんよ」

「それよかワイのかおりんやるやろ?内野ガラガラやし、開幕一軍どころか開幕スタメンもあるで」


 ギャラリーが勝手な分析をするのは相変わらずだけど、言ってることは概ね合ってる。……確かにその通りなんだよ。白組クリーンナップトリオと徳田(とくだ)さん、冬島さんも認めてる通りなんだよ。この一週間、共に練習をしてきて、なのに彼我の実力差をそこまで見間違うほど、ボクだって高慢じゃない。

 だけど、そんな簡単に認められるわけないじゃないか。ボクだって投手なんだぞ?


「まずいわね……あのフォークっぽい球が頭にあるせいで、ただでさえ速くなったストレートが余計に速く感じるわ」

「ようやく俺相手にも使ってくれましたけど、確かにあれはちょっと初見じゃ無理ですね。たとえ投球回の制限がなかったとしても、この試合中に攻略できたかどうか……」


 これだけのことをされて、ここからでも紅組ベンチの焦りを感じ取れる。当然、こんな状況が続くようじゃ一軍主力組としての沽券に関わるだろうからね。


「もうツーアウトか……せめて体裁くらいは取り繕わねぇとな……」

「3番ライト森本。背番号24」




******視点:徳田火織(とくだかおり)******


 これで今日は三波さん相手に2打数2安打1盗塁。うーん絶好調、というか実力通り?流石は天才美少女かおりんだわ。

 でも何より今日はあっくんが最高にカッコ良いわ。これだけでも今日の試合をやった意味があるね。はっきり言ってこんなあっくんを二軍で干すとかマジでありえないし。


『ありがとな、火織。そう言ってくれる火織に俺も救われてる』


 試合中とかに時々嫌なこと言われるけど、あっくんからの言葉を頭の中で繰り返すことでここまでこれた。一軍じゃショートはともかくセカンドはまだ競争の余地があるし、開幕一軍もきっと狙える。今年こそきっとあっくんと一緒に一軍で活躍できる。


 それで、いつかはあっくんと……フヒッ、フヒヒヒヒ……


 ……やばいやばい。こんなこと考えてるとお腹の下が熱くなってきちゃった。煙草はもう吸わなくても平気になってきたけど、人肌はどうしてもね。けど、もうあっくん以外の男には抱かせないって決めちゃったからなぁ。

 あっくんってば、順序とか初めてとか気にしないで、むしろ襲ってくれたら良いのに……というかそもそも、あっくん鈍感すぎるんだよね……


「セカンド!」

「ちぃっ、だがこれで連続奪三振は途切れたぜ……!」

(少し難しい打球だが、これくらい火織なら……!)

「……え?ああッ!!?」

「な……!?」


 やっちゃった……!


「ファースト!」

「セーフ!」


 アタシがファンブルした打球を(あい)ちゃんが上手くカバーしてくれたけど、脚の速い左の森本さん相手じゃ流石に間に合わない。


 どうしよう、アタシのせいだ……!


「ご……ごめん!あっくん!!」

「ッ……!気にするな、火織!ツーアウト一塁だから焦る必要はねぇ!打たせていくから今度は頼むぜ!!」


 記録はセカンドのエラー、つまりはアタシのミス。当たり前だけど……

 どうしよう……アタシ、何であっくんが投げてる時に……

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