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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第一章 フィノム
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第十一話 今のあたしもまた、あの人のシナリオ通りであってほしい(1/8)

○白組


[先発]

1二 徳田火織(とくだかおり)[右左]

2中 有川理世(ありかわりせ)[右左]

3右 松村桐生(まつむらきりお)[左左]

4一 天野千尋(あまのちひろ)[右右]

5三 リリィ・オクスプリング[右両]

6捕 冬島幸貴(ふゆしまこうき)[右右]

7指 伊達郁雄(だていくお)[右右]

8左 秋崎佳子(あきざきよしこ)[右右]

9遊 月出里逢(すだちあい)[右右]


投 氷室篤斗(ひむろあつと)[右右]


[控え]

雨田司記(あまたしき)[右右]

山口恵人(やまぐちけいと)[左左]

夏樹神楽(なつきかぐら)[左左]



●紅組

[先発]

1中 赤猫閑(あかねこしずか)[右左]

2遊 相沢涼(あいざわりょう)[右右]

3右 森本勝治(もりもとかつじ)[右左]

4左 金剛丁一(こんごうていいち)[左左]

5一 グレッグ[右右]

6指 イースター[右左]

7三 ■■■■[右右]

8二 ■■■■[右左]

9捕 真壁哲三(まかべてつぞう)[右右]


投 三波水面(みなみみなも)[右右]


******視点:樹神樹(こだまいつき)******


 さて、いよいよ月出里逢(あの子)が打つ番だ。ネクストで見た限り、スイングはそこそこ速いけど本気で振ってる感じではなく、それよりもフォームの確認を意識してる感じだった。

 3回裏のワンナウトランナーなし。何とも中途半端で、テレビで観てる分には適当に聴き流してそうな場面ではあるけど、よほど鳴り物入りのルーキーでもない限り、デビューなんて大抵こんなもんだ。


「ストライーク!」

「ストライーク!」


 外の良いとこにストレートとスライダー。簡単に追い込まれたけど、全然動じてないね。

 いや、それどころか……


「ねぇ君達。あの子、何かめちゃくちゃつまらなそうな顔してるけど、いつもあんなんなの?」

「そうですね……普段もどちらかと言うと大人しめの方なんですが、打席に立つと本当に何事にも動じない感じですね」

「ボール!」


 うーん……インハイ、ビーンボールってほどでもないけど身体の近くのボール球も眉一つ動かさず軽く身体をのけぞらせて見送り。完全に打者不利のカウントなのにグリップも全く動いてなかった。


(このやる気のなさそうな面構えと気配のなさ……コイツ、そもそもスイングする気があるのか?ここまでボールを目で追ってる以外はほとんど棒立ちしてるようなものじゃないか。これなら流石に反応するはずだが……)


 4球目、2球目に近いコースの外スラ。際どくはあるけど……


「……ボール!」

(確かに、2球目と比べれば明らかに外れてはいた)

(でも、これでも簡単に見送っちゃうの……?もしかして根本的に反応できてないとか?)


 流石にスイングの気配がここまでないと、バッテリーも困惑するだろうね。

 近年、スイングする頻度の少ない打者を評価する風潮があるけど、そう言うのを目指してるのかな?俺みたいにヒットの数を稼ぐのをモチベーションにしてる人間からしたら相容れない考え方だけど。


(まぁランナーもいないし、これだけ打ち気を感じないのなら、思い切ってインコースへの速球で勝負してみるか)


 キャッチャーの真壁(まかべ)が内側に構えた。勝負する気だな。

 それに呼応するように、三波は渾身のストレート。


(……よし!見逃し三振……)


 決して速い球ではないけど、コースは完璧。俺もその刹那、見逃し三振を確信した。

 だが……


(……は?)


 さっきまで緩慢に思えた月出里ちゃんだったけど、ここにきていきなり始動。


「ファール!」


 気がつけば、打球はバックネットを叩いてた。


「え……な、何や今のスイング……!?」

「クッソ速なかったか……!!?」

「えっぐ……」


 捕球を確信してたであろう真壁は打球よりもミットを開閉しながらじっと見つめてた。そこにあるはずの球を探し求めるように。

 それにしてもすごいスイングスピードだ。控えめに見積もっても一軍のクリーンナップクラス。あんな小さな身体でよくやる。


「あ……すみません。タイムで」

「どうしました?」

「すみません、バットが折れちゃったみたいで……」

「あ、本当ですね。交換どうぞ」


 ん?ひょっとして折れたのか?


「わたし、行ってきますね」


 やっぱりね。さっき打席に立ってた秋崎(巨乳)ちゃんが替えのバットを持っていった。


「お疲れ。ひょっとして、こういうことよくあるの?」

「あ、はい。よく分かりましたね」

「うん。あのフォームだからね……」


 (やなぎ)監督から聞いてた通り。確かにスイングは速いけど、フォームがとにかくぎこちない。バットが金属か木製かとか以前の問題。あれじゃ自分が想定してたポイントと実際のポイントがずれて、到底芯では捉えられない。木製ではもちろんすぐ折れちゃうし、金属ですらなかなか良い打球は生まれないはず。仮に捉えられたとしても、下半身のパワーを伝え切れるかどうか。


「プレイ!」

(あのスイングスピードだと事故が怖い。無難に外スラで片付けるぞ!)


 さて、低身長でパンチ力のある右打者が相手なら外に逃すのがベターではあるけど……


「ファール!」

「ファール!」

「うっそ……!?」


 良いコースの外スラを2球連続で余裕のコンタクト。三波が驚くのも無理はない。意図的にカットしてるのではなく、きっちり強振して前に飛ばそうとはしてるのがよくわかる。

 三波のスライダーは速さはないけどキレと精度はある。運用次第で十分空振りを狙える代物。ましてや高卒間もない子にこんな簡単に当てられるものではないはず。実際、秋崎(巨乳)ちゃんは手も足も出てなかったからね。


「タイム!」


 そしてまた折れる。うーん不思議だ。ポイントは確かにズレてるはずなのに空振りは全くしてない。

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