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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第三章 オーバーダイブ
529/1153

第八十三話 それぞれの宿命(3/7)

******視点:鹿籠葵(こごもりあおい)******


 二軍戦で一度投げたことのあるサンジョーフィールド。結構古い球場のはずなのに、ブルペンが広くて綺麗。


「ナイスボールよぉ!」


 捕ってくれてるのは、いつも通り岡正(おかまさ)さん。


「おおオッケーでーしゅ!ウェヒヒ……」

「お疲れ。良い感じだったわよぉ」

「ありがとうございます!」

「それにしても、ブルペンもアタシで良かったのぉ?アナタの球、結構気難しい子だからできるだけ二乃(にの)ちゃんに捕ってもらった方が良かったんじゃないのぉ?」

「マウンドでもまた投げますから、肩慣らしくらいは……」

「……ありがとね」


 もう試合では一緒にプレーできないから、ね……


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


「ストライク!バッターアウト!スリーアウトチェンジ!」


「ええぞ恵人(けいと)きゅん!」

「3939」

「最近投手陣がアチアチやったから三凡はありがたいわ」


「ナイピー恵人!」

「おい大神(おおがみ)。敵を応援するな」


 向こうの先発は山口(やまぐち)さん。まっすぐが速くてカーブも良い。大神くんと同い年なんだよね?ちっちゃいけど良いピッチャー。

 ……わたしも負けられない。


「1回の裏、バニーズの攻撃。1番センター、秋崎(あきざき)。背番号45」


「おっ、今日の1番は佳子(よしこ)ママか」

「おっぱいミサイルかましたれ!」


 そう言えば初めての対外試合もバニーズだったね。おっぱいが情けなくない人。打者一巡分しか投げなかったけど、一番良い当たりしてたからよく覚えてる。


「ファール!」

(前の時より速くなった……かな?)


「145か、まぁまぁやな」

「でもあんま特徴ないなぁ。どこにでもいるような右のスリークォーター。身体はデカいけど」

「おっぱいもママに負けないくらいデカいやん」


 タイミングは合ってる。なら……


「ボール!」


 外スラ、釣られてくれなかった。だけどこれ以上恐れはしない。


「!?」

「ストライーク!」


「えぇ……今の高め振るかぁ……?」

「落ち着け!よく見ていけ!」


(今の球、まっすぐ……だよね?すごい伸びててきたけど、それだけじゃなく……)


 わたしはあくまでまっすぐで勝負するんだから……!


「ッ……!」

「オーライ!」

「アウト!」


「うーんこのダボハゼ」

「まぁ元々フリースインガーやし」

「脚速いからって無理に1番やらせんでもなぁ」


(やっぱり……外いっぱいくらいに見えたのに……)


 岡正さんが言ってたように、あの時の当たりはマグレ……だったのかな?油断はできないけど。


「2番ライト、松村(まつむら)。背番号4」


 次は左。やることは変わらないけど……ウェヒッ!?


(今日こそ打つ……!)


 ネクストからものすごい視線を感じると思ったら、月出里(すだち)さん……素振りもしないでわたしの方をじっと見てる……こ、怖い……


「ふぅーっ……」


 落ち着いて落ち着いて。今の相手はあののっぽさん。


(絶好球……ッ!?)

「ピッチャー!」


 折れたバットが近くに……でも怖がらない。せっかくピッチャーを勝ち取ったんだから……!


「ふぁ、ファースト!」

「アウト!」


「おいィ!?何やっとんねん!!?」

「松村があんなクソ甘ボールを打ち損じた……?」

「ここ最近打線だけはホッカホカやったけど揺り戻しか?」


(捉えたはずなのに……想定よりも根っこ……)

「つ……ツーアウト!」


「おう、良いぞ(あおい)ちゃん!」

「こっちも三凡で片付けたれ!」


 わざわざ大阪まで来ててくれたファンの人達が、わたしの背伸びしたパフォーマンスを受け容れてくれる。おかげで良い気分で臨める。


「3番サード、月出里(すだち)。背番号25」


 今バニーズで一番当たってる人との勝負に。


「ちょうちょ!ツーアウトでも遠慮はいらんで!」

「でもあのピッチャー、ちょうちょと3回勝負して全部三振らしいで」

「マ?」


 それはわたしも覚えてる。だけど、猪戸(ししど)くんと並ぶわたし達世代の出世頭。油断なんてできない。

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