第八十二話 やっぱりこいつは(1/8)
******視点:宇井朱美******
「白組、選手の交代をお知らせします。ピッチャー、三波に代わりまして、山口。ピッチャー、山口。背番号61」
「恵人きゅんキター!」
「prprprprprpr……」
「もしもしポリスメン?」
山口先輩、この回から投げるんすね。しかしすごい歓声。この球団の人って綺麗な人が多いけど、逆にそのせいなのか男性の選手だったら女性のファンが、女性の選手だったら男性のファンが極端に盛り上がってばっかなんすよね。でも山口先輩に関しては珍しくどっちも。まぁ可愛いっすからねぇ。
「7回の表、紅組の攻撃。3番指名打者、オクスプリング。背番号54」
(恵人との勝負は久しぶりやな)
「おっ、今度は右やな」
「先頭ならちょうどええかもな」
さっき氷室さんからタイムリーツーベースを打ってた外人さん。何か外人さんだけど助っ人扱いじゃないとかよくわかんないっすけど、スイングはめっちゃ鋭かったっす。
でもさっきまで左打席に立ってたのに、今は右打席……入る方間違えてるんすかね?自分もたまにお箸持つ方とお茶碗持つ方どっちかわかんなくなっちゃうっすけど……
「ストライーク!」
(144……調子は良くも悪くもナシっとこか?っていうかそれ以前に……)
「あれ?恵人きゅんワインドアップしてないな」
「ランナーおらんのにセットポジションから投げとる」
「もしかして恵人きゅんもフォーム変えた?」
うーん、良い球。でもそれ以上に立ち振る舞いが同い年とは思えないっす。
「ボール!」
「ファール!」
(やっぱ制球良くなったな……インコースを躊躇いもなくこんなポンポンと……)
まっすぐと……多分スライダーっすかね?膝下をガンガン攻め立てるように投げ込んで追い込んだ。
(リリィさんは基本的に左の中・長距離砲タイプのプルヒッター。でも右に立ってる時は……)
(ストレート!)
キャッチャーはまたインコースに構えてたけど、コースは外。でもかなり遠い……
(何の!)
「「「おおっ!!!」」」
インコースが続いたせいか体勢は泳ぎ気味ながら、外の球を拾ってライトの前に落とした。
(やっぱり上手いな。右打席でのオクスプリングの右打ち)
(まぁどっちの打席でも総合的に良いバッターなんだけど、右に立ってる時は巧打者寄りになるんだよね。左の時ほど打球は飛ばないけど、粘り強くなってどの方向にも満遍なく返してくる)
さっきまでは左に立ってバットをブンブン振り回してたのに、器用な人っすね。月出里さんと同じ3番を任されてるだけある。
「4番ファースト、天野。背番号32」
「ダメ押し頼むで主砲!」
「ホームランホームランチッヒ!」
(今のおれだと、こっちの方がまだやりやすい)
自分と同じくらい背が高くて、しかも見るからに筋肉モリモリでおっぱいも秋崎さんに負けないくらいでっかい。見るからにホームランバッターっすね。
(うえっ!?)
「ストライーク!」
「おっそ……」
「93って……」
「カーブか今の?」
スローカーブってやつっすかね?さっきまで140を軽く超えるまっすぐをガンガン投げてきてたのに、いきなりの冷やかし。
(伊達さんに認めてもらうため、開幕先発ローテを勝ち取るため、このキャンプでのテーマは『緩急を極めること』。元あったサークルチェンジも含めて)
「セーフ!」
(抜け目ないな……)
少しリードが大きかった一塁の外人さん。緩い球を使う関係か牽制も忘れない。ほんとクールっすねぇ。
「ストライク!バッターアウト!!」
(的が絞れない……!)
「うーんこの扇風機」
「まぁあったかくなってきたら変わるやろ」
「元々波のでかいタイプやしな」
あのまま緩急を駆使して奪三振。ランナーも動けず。
「5番レフト、アゴナス。背番号44」
「ほんとでっけぇな……」
「チッヒや松村がチビに見えるって相当やで……」
今度も大きな女の人……でも2mオーバーは流石にデカすぎっすね。この人もさっき氷室さんからタイムリーを打った人。油断ならないっすね。




