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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第三章 オーバーダイブ
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第八十話 新しいあたしを見せ続ける(2/5)

 春季キャンプ9日目。今日と明日は紅白戦……の前に、試合前練習。

 今年は佳子(よしこ)ちゃんと同じチームでプレイ。キャッチボールも久しぶり。


「行くよー、(あい)ちゃーん!」

「おっけー!」


 センターのフェンス際に佳子ちゃん、そしてサードベース付近にあたしという距離感。


「ナイスボール!」

「「「おおおおおっっっ!!!」」」

「あれが噂の『おっぱいミサイル』……」

「えっぐ……」


 練習とファンサービスを兼ねて、佳子ちゃんの球を捕ってすぐクロスプレーのモーション。そこから佳子ちゃんの方にワンバンで返球。

 相変わらずすごい肩してる。スナップスローみたいに短い距離で素早くなら自信あるけど、ロングスローは流石に佳子ちゃんには敵わない。


「よう、月出里(すだち)。俺にもやらせてくれよ」

「良いですよ。佳子ちゃーん!もう1球、相模(さがみ)さんにも投げてもらって良いー?」

「良いよー!」

「よっしゃ!来い!」

「いきまーす!!!」


 またしても勢いよく放たれるレーザービーム。今度は手前でワンバンしたけど……


「よっ!」

「「「キャアアアアア!」」」

(くろ)たーん!ナイスキャッチ!」

「今年も頑張ってねー!」

「サンキュー!」


 何なく拾い上げてすぐにタッチに入ると、観客席から黄色い歓声。

 上から目線になっちゃうけど、相模さんも去年の今頃よりだいぶ動きが良くなってる。これだったら去年のスリーベースは刺されちゃってただろうね。女の子ウケを狙ったのか、プレーは機敏ながらもどこか気取った感じだったけど。


「相模さん、今日ライトですよね?」

「ああ。でもやっといて損はないだろ?去年のままいけるって調子乗ってるとポジション奪っちまうからな?」

「もちろん、させませんよ」

「……上等だ。楽しみにしてるぜ?」


 なかなか男前なことを……出会いが良ければ候補くらいにはなれてたのに。勿体無い。


「ういっす!月出里さん、何やってんすか?」

「あ、宇井(うい)さん」


 今日のチームメイトが続々と集まる。今度は今日三遊間を組む、ルーキーの宇井さん。


「わたしのロングスローの練習と、サードのクロスプレーの練習だよ」


 一度こっちに駆けつけてきた佳子ちゃんが笑って応対。


「あ、えっと……相模さんと秋崎(あきざき)さんっすね!今年入団の宇井朱美(ういあけみ)っす!今日はよろしくお願いします!」

「おう」

「ふふっ、よろしくね」


 わざわざ持ち歩いてる選手名鑑をめくって名前を確認。何かちょっとだけ勝てた気分。


「今日サードだよね?宇井さんもやってみる?」

「良いんすか!?是非お願いします!」


 裏表のない積極的な子は嫌いじゃない。サードの守備位置でグローブを拳で叩きながら待ち構える宇井さん。


「さぁ来ーい!」

「いっくよー……」

「うぃっ!!?」


 でも最初はそうなるよね。捕れたのは捕れたけど、びっくりしたのかモーションがワンテンポ遅れた。


「どうよルーキー?」

「……プロってやっぱすごいっすねー……」

「アレは投げるだけならプロでも上澄みだよ」

「いや、ほんとすごいっす!バニーズって"最弱球団"って聞いてましたけど、すごい人もいっぱいいるんすね!」

「ははは……」

「?」


 流石の相模さんも乾いた笑い。それはまぁ暗黙の了承みたいなものだけど……


「あたし達は良いけど、あんまり他の人達の前では言わない方が良いよ?」

「……はっ!?す、すみません!軽はずみでした!」


 何となくこの子のキャラが掴めてきた。馬鹿正直すぎる。


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