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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第二章 背番号25
488/1151

第七十七話 『さよなら』をもう言葉にできないから(1/6)

******視点:月出里逢(すだちあい)******


 9月29日、本拠地サンジョーフィールド。これから始まるヴァルチャーズ戦で、お互いにペナントレース全日程が終わり。

 5日前にリプの順位が全球団同じ日の内に決まるという珍しいことが起こって、大方の予想通り、今年のウチは最下位。そして独走してたヴァルチャーズをビリオンズがギリギリ追い抜いて2年連続優勝となった。

 だから今日の試合はヴァルチャーズにとってはCSに向けての練習試合みたいな位置付け。そしてウチにとっては……


 ---------------------------------------

 2019ペナントレース バニーズvsヴァルチャーズ


 ○天王寺三条(てんのうじさんじょう)バニーズ

 監督代行:燕昇司十一(えんしょうじといち)


 [先発]

 1三 月出里逢(すだちあい)[右右]

 2中 赤猫閑(あかねこしずか)[右左]

 3二 徳田火織(とくだかおり)[右左]

 4指 リリィ・オクスプリング[右両]

 5左 十握三四郎(とつかさんしろう)[右左]

 6一 天野千尋(あまのちひろ)[右右]

 7右 松村桐生(まつむらきりお)[左左]

 8遊 相沢涼(あいざわりょう)[右右]

 9捕 有川理世(ありかわりせ)[右左]


 投 風刃鋭利(かざとえいり)[右右]



 ●博多CODE(はかたコード)ヴァルチャーズ

 監督:羽雁明朗(はがりあきたか)


 [先発]

 1二 ■■■■[右左]

 2遊 睦門爽也(むつかどそうや)[右右]

 3左 ジュリアン・ステベンソン[右右]

 4指 フィアマル・ローウェン[右右]

 5右 田所瑠璃子(たどころるりこ)[左左]

 6一 成宮知久(なりみやともひさ)[右右]

 7三 穂村小町(ほむらこまち)[右右]

 8中 ■■■■[右左]

 9捕 久保正典(くぼまさのり)[右右]


 投 一堂一矢(いちどうかずや)[右右]

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 最下位と今年の不祥事続きの申し開きのようなもの。


「バニーズの今シーズン最終戦、先発を任されたのは高卒1年目、ルーキーの風刃(かざと)。今シーズン5回目の登板となります」

「防御率はちょうど6点と決して良い数字ではありませんが、全部アルバトロス相手ですし、こういう試合を任されてるということは首脳陣も相当期待してるってことなんでしょうね」

「1回の表、ヴァルチャーズの攻撃。1番セカンド、■■。背番号■■」


 風刃くんの登板はともかく、あたしの1番はね……あたしの盗塁は今40で、もうペナント全部消化したビリオンズの招福(しょうふく)さんは41。コーチ達の狙いが何なのかは明白。あたしも盗塁王を狙ってる以上ありがたい話ではあるんだけどね。

 ただ、多少マシになったとは言え、二軍落ちする前の時ほどポンポン打ってるわけじゃないし、向こうもそれを承知でなかなかボール球も投げてくれないから盗塁も思いの外伸ばせてない。もし昨日の内に1つ決めれてさえいれば、多分今日はスタメンだとしても9番とかか、ひょっとしたらスタメンですらなかったかもしれない。打線もいつものから無理に1つずらした感じなのが申し訳ない。

 ……やっぱりこういう立場はできれば実力で堂々と勝ち取りたい。高校の頃と違って勝ち取った経験ができたからこそ、余計にそう思う。


「ショート捕って……」

「アウト!」

「軽快に捌いてスリーアウト!1回の表、三者凡退!風刃、上々の滑り出しとなりました!」


「ええでええで風刃!」

「えーりん!えーりん!」

「パーフェクトあるわよ風刃くん!」


「サンキュー!」


 さっすが。淡々と抑えてみせた。そしてあの余裕のある振る舞い。あたしもウカウカしてられない。


「1回の裏、バニーズの攻撃。1番サード、月出里(すだち)。背番号52」

「この回の先頭打者は今シーズン開幕スタメンショートを勝ち取りました、高卒2年目の月出里。シーズン40盗塁に史上最年少で到達し、史上最年少盗塁王の栄冠もあと1つと迫っております」

「36発の猪戸(ししど)と並んで本当に将来が楽しみな選手ですね」

「ヴァルチャーズの先発はこちらも大卒2年目の若い選手、今シーズン12勝を挙げ飛躍の年となりました一堂(いちどう)

「残念ながらヴァルチャーズは優勝を逃してしまいましたが、真木(さなぎ)に並ぶ勝ち頭としてチームに貢献してくれましたね。ポストシーズンでの活躍にも期待したいところです」


 できればタイトルは獲れるだけ獲りたいけど、新人王に関してはこの人の存在がネックなんだよね。元々選ぶ基準が曖昧だし、ヴァルチャーズはCSと、上手くいけば帝国シリーズもあるからまだまだ活躍の機会があるし、新人王は正直『獲れたら良いな』くらいの気持ち。


「ボール!」

「初球外!140km/h外れました!」


 一堂さんは今時じゃ珍しいアンダースロー。それも、ただでさえアンダースロー自体対戦したことあんまりないのに、身長が高くて球も速め。本当に珍しいタイプ。


「ファール!」


 一応、試合前に卯花(うのはな)さんにアンダーで投げてもらったけど、やっぱりこれは擦り合わせるのに苦労しそう。タイミングは問題ないんだけど、球の軌道をイメージと合わせるのがめんどくさいタイプ。


久保(くぼ)、見上げて……」

「……アウト!」

「捕りました!キャッチャーファールフライでワンナウト!」


「うへぇ、めっちゃ浮き上がるなぁ……」

「ドンマイドンマイ!」

「ちょうちょ!まず塁に出んとアカンで!」


 わかってるよそんなの。新人王のことだって、自分の手でできる限りは邪魔したいし。

 ただ、盗塁残り1つを決めるのには、他にも乗り越えなきゃいけないことがあるんだよね……


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