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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第二章 背番号25
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第七十三話 もう期待なんてしたくない(8/8)

「替え玉……」

「ええ。優輝(ゆうき)が約束の時間に私のところに来なくて何かあったのかもと思ったんだけど、サプライズが目的だったから貴女への連絡が後回しになっちゃってたわ。まさか貴女とも関係があったとは思わなかったし。早めに知らせてればこんな目に遭わせずに済んだのに……ごめんなさい」

「……よくここ見つけられたね。スマホのGPS?」

「いえ。スタッフが見つけてくれて後からわかったんだけど、優輝のスマホは壊されてサンジョーフィールドに捨てられてたのよ」

「あのクズ……桜井鞠(さくらいまり)はすみちゃんのスマホ持ってるって言ってたけど……」

「察するに逢が周囲に今回の件を広めるリスクを減らすためと、偽物だと疑われるのを防ぐため、でしょ?なのにその当の本人が偽物を本物と勘違いしてた、と」

「フン……」


 バンビーズと一緒に縛られてるクズが鼻を鳴らした。


「だったらどうやって……?」


 そう言うと、すみちゃんが近づいて耳打ち。


「……ここだけの話、私のスマホはもちろんだけど、服とか身に付けてる物全部にも超小型のGPSを仕込んでるのよ。万が一に備えて」


 そんな極秘事項みたいなこと教えてくれるってのは、あたしを信頼してくれてる証拠?でも……


「何かいろんなことが絡み合ってこうなっちゃったんだね……」

「そうみたいね。そのおかげで桜井鞠を刑事で裁ける大義名分ができて、バックにいた半グレの残党も一掃できたけど……完全に結果論ね。貴女も決して無事だったわけじゃないんだし。私のせいで逢にも優輝にも本当に迷惑をかけたわ。本当にごめんなさい」

「おれは気にしてないよ。それよりも……えっと、月出里さん」

「?」

「おれも、その……すみません。何回も……」


 頬を赤らめてそっぽを向きながら、破られたユニフォームの方を指さす。そう言えば卯花さん、目隠しとかはされてなかったね。

 この人、ラッキースケベの神様に加護でも受けてるのかな?あたしの下着姿だけじゃなく、(すっぽんぽん)まで……今は黒服さんが改めて持ってきてくれた服着てるけど。


「あたし、家族以外の異性には見せない主義なんですけどね」

「すみません……」

「まぁしょうがないですよ。その分、すみちゃんを大事にしてあげてください」


 今の気分ならそのくらいは言える。完全にじゃないけど、汚されちゃったんだしね。






「「……え?」」

「え?」


 え?何?


「……!月出里さん、やっぱりおれとすみちゃんが付き合ってるとかそんなふうに思ってたんですよね……?」

「!!はい……前にすみちゃんが『婚約者がいる』って言ってましたし……この前病院でもそういう感じでしたし……」

「!!!……そ、そういうことだったの……!!?」

「すみちゃん、やっと気づいたの……?」

「え?え?」


 どういうこと?『やっと気づいた』……?


「えっと……月出里さん。すみちゃんの婚約者さんはおれじゃないですよ」

「え!!?」

「だよね、すみちゃん?」

「ええ……球団とは関わりのない人だし、100%結婚するって決まってるわけでもないから、貴女には特段言う必要もないって思ってたのよ。優輝とは親戚かつ幼馴染で、それ以上でもそれ以下でもないわ」

「そ、そうだったんだ……」


 あたし、1ヶ月以上も何悩んでたんだろ……


「……色々と察しが悪かったわ。本当にごめんなさい。つくづく貴方達には迷惑をかけたわ」

「そ、そんなことないよ!?今日のことだって、本当に流れでこうなっただけなんだし……あたしも勘違いしたまま意固地になってなかったら……あたしももっとすみちゃんと卯花さんと話すべきだったよね。ごめんなさい」

「おれも勘違いさせた一因だよね……ごめん。すみちゃんにもその辺早めにはっきり言っておけば……」

「……全員水に流す、ってことで良いかしら?」

「うん……」

「そうだね……」


 今回の珍事で、くしくもわだかまりまでなくなった。卯花さんに女装させたのが発端で色々起こりすぎだけど……


「あ、サイレン……」

「通報もしといたわ。多分私達も取調とかで拘束されるでしょうけど、これだけのことがあったんだから私達にはもう直接手の下しようがなくなるでしょうね」

三条(さんじょう)オーナー。月出里選手については頭を強く打っておられますし、先に病院へ行っていただいて、診断書も取っていただいた方がよろしいかと。卯花さんも念の為」

「そうですね。三河(みかわ)さん、警察への対応はお任せいたします」

「承りました」


「クソが……!」


 このクズどもを豚箱にブチ込めるのなら結構なこと。それでも……


「な、何や……?」


 あたしを汚したこのうすらでかいゴミには落とし前をつけさせなきゃね。


「あっ、足が滑ったー(棒)」

「!?ぐぇ……ッ!!!」

「月出里さん!?」

「縛り上げられてるみなさーん。『あたしは頭を殴られたせいで足元がふらついて、たまたまこの人の股間を蹴っちゃった』。そうですよね?……ね?」

「「「せ、せやな……(焦燥)」」」


 泡吹いて倒れてるゴミを見下してから、正座で縛られてる他のバンビちゃん達の股間の直前で足を素振りして、とびっきりのスマイル。

 あたしは『やられたらやり返す』がモットー。この程度であたしの身体をいじくり回せるのなら安すぎるくらいだけど……


「……シャバに出たら前のバンビちゃん達みたいに『チョッキンかマグロさん』にしてやろうと思ってたから、手間が省けたと思っておくわ」

「コホン……まぁ今回の罪状を考えれば、この程度であれば結果は誤差だと思いますが……私的な報復はこれっきりにしてくださいね、月出里選手?」

「わかってますよ」


 警察(ポリ)も関わるんならこの程度で済ませるしかない。クソッタレが。懲役とか賠償金とかそんなのどうでもいいから完全に潰してやりたいのに。

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