第七十三話 もう期待なんてしたくない(1/8)
******視点:雨田司記******
「先、越されちゃったね……」
「ええ……」
8月18日、選手寮の食堂。風刃と、そして秋崎のヒーローインタビューを見てると、本拠地のゲームなのに遠い国のことのようにも思える。
シーズン後半戦に入る前、ちょうど不祥事続きだったくらいの頃。一軍で課題の先発陣を補うべく、ボクと山口さんと風刃の3人がその枠を争うことになった。二軍の中でその候補に挙げられるくらいにはボクも山口さんも結果を出してたけど……
「防御率ほぼ0じゃ無理だよね……」
「……ですね」
溜め息で鬱憤を洗い流す山口さん。
投げてる球だけならボクだって負けてない自信がある。だけど少なくとも今は認めざるを得ない。投手としては風刃の方が数段上だと。
「はぁ……」
「……で、キミはまだ夏バテなのかい?」
交流戦の途中くらいで二軍に戻ってきた夏樹。実力自体はそれなりに通用してたけど、疲れが溜まって打ち込まれるようになって。二軍でもまだ試合にはあまり出てない状態。
「それもあるけど……彼氏と連絡取れなくなって……」
「……結局、貸したってことかい?」
「そうだよ……」
ボクだって男女のアレコレには疎い方だけど、あのお人好しの秋崎にすら止められてたのに……ボクらの中じゃ一番世間慣れしてると思ってたけど、意外なところで難があるものなんだな。
「え?何の話?」
「コイツこの前、恋人に6桁ほどの金を無心されたんですよ。投資の元手とかって名目で」
「……断るでしょ普通」
「言われてるぞ」
「違うんだよ……タケルさんもすぐに取り返せるって言ってたんだよ……」
「言うだけなら無料でしょ?」
「うう……」
流石の山口さんもこの辺はわかるんだな……
「しっかし逢はどうなるんかねぇ……」
「……まぁ、流石に今日のは……」
言い淀むのも無理はない。ボクも月出里のことは認めてるからこそ、今の月出里は……
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******視点:月出里逢******
8月19日。天王寺区にある大きめの病院。
「失礼します……」
病室に入ると、柳監督と、40代か50代くらいの身なりの良いおばさん。
「おう嬢ちゃん。可愛いのう。小山さんの奥さんかな?」
「……!?」
「お、お父さん!この人は月出里選手ですよ!」
「……おお、そうじゃったな。よう来たのう、月出里」
「…………」
前に来た時より痩せてるけど、それ以上に、あたしをその呼び方って……
「お……お邪魔しました……」
「……ええ、来てくださってありがとうございました……」
またしてもすぐに退散。
「ッ……!」
何でこんなことが重なるんだろ?すみちゃんも、卯花さんも、監督も、そしてあたし自身が掴み取った栄光も、次々とあたしの元から離れていく。二軍じゃしばらく埼玉にも戻れない。
『もう期待なんてしたくない』。そう嘯いてたくせに、やっぱりこんな時くらい誰かに頼りたい。自分勝手な話だけど。
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【バニキ・バネキの集い】天王寺三条バニーズ総合スレ35【2019】
334 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/08/21 (水)
公示
リーグ・プログレッサー
出場選手登録
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出場選手登録抹消
天王寺三条バニーズ 投手 43 風刃鋭利
天王寺三条バニーズ 内野手 52 月出里逢
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聖域、終結
335 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/08/21 (水)
残当
むしろおせーわ
336 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/08/21 (水)
えいりーんも抹消なんか
普通に必要戦力やろ
337 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/08/21 (水)
>>336
一応投げさせるとは言うてたやん
登板間隔空けるためやろ
338 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/08/21 (水)
おっぱいちゃんは抹消やないんやな
ちょうど通算60打席やったんやけど
339 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/08/21 (水)
>>338
ちょうちょおらんかったら必然的に
サードに相模も入るやろうからな
右少ないし調子良いし普通に必要や
340 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/08/21 (水)
>>338
おっぱいちゃんとしても
来年獲れるかどうかの新人王よりレギュラーやろ
341 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/08/21 (水)
盗塁王どうなるかねぇ……
高座は妖精やからまた抜けるかもやけど
招福がペース上げまくってるのが怖い
342 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/08/21 (水)
ちょうちょは本当に絶対復活するよ!
もし復活しなかったらサンジョーフィールドの
外周池に沈めてもらってもかまわないよ!
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