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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第二章 背番号25
452/1155

第七十一話 主役なんてない(8/9)

「1回の裏、バニーズの攻撃。1番サード、月出里(すだち)。背番号52」

(あい)ちゃーん!頑張ってー!」


 二軍にいた時と変わらず、佳子(よしこ)ちゃんがベンチから身を乗り出して声援。もはや懐かしさも感じる。


「今日のエペタムズの先発は左の嵐田(あらしだ)。今シーズン18試合目の登板、ここ5試合は安定した投球内容を見せています」


 くしくも去年、一軍デビューの時の相手だった嵐田さん。去年はイマイチの成績だったけど、今年は登板ごとのイニングを短めにしてるのが効いてるのか、数字が良くなってる。

 どのみち制球の良い投手。四球を狙うのはちょっと骨が折れる。甘く入ったら積極的に打っていきたい。


「ボール!」

「初球はカーブから入ってきました!」


 向こうもそれがわかってるのか、1球目から難しいところを狙ってきたっぽい。


(入ればそれに越したことはなかったが、振りにいくにはもってこいの場面。作戦通り行くぞ!)

(はいなのです!)


 インコース、食い込んでくるスライダー……!


「引っ張った!」


 よし、抜ける……!





「ショート追いついた!」


 え……!?


「ファースト!」

「アウト!」

黄金丸(こがねまる)、軽快に捌いてワンナウト!」


「よしよし!良いぞ黄金丸!」

「守備も復調気味だな!」


(ほんとに来た……この位置に……)


 今のがアウト……?

 確かに綺麗に捉えた。ちょっと浮いた内へのスライダー。三遊間を抜けるイメージそのままの打球を放てたはず。今年不調とはいえ、黄金丸さんの守備範囲が広いのは知ってる。それで今まで何度かヒットを損してきた。でも今のは……


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


「サードバウンドが高い……一塁どうか!?」

「セーフ!」

「ヘッドスライディング!間に合いました!秋崎(あきざき)、プロ初ヒット!これでチャンス拡大、ワンナウト一三塁!」


「ナイスガッツおっぱい!」

「あれでヘッドスライディングしても大丈夫なんか……?」

「よっしゃ、ワイが触診したるわ(クソノンケ)」


 佳子ちゃんが良いところでプロ初ヒット。でも、今はちょっとそれどころじゃない。


「1番サード、月出里(すだち)。背番号52」

「ここで打席を迎えるのは兎のホープ、月出里!3試合連続マルチヒット中と当たっておりますが、今日は2打数ノーヒット!」

「当たりは悪くないんですけどねぇ。ちゃんと捉えてるんですが、エペタムズナインがすんでのところで阻止してるんですよねぇ。そろそろアンアッキーが途切れると良いんですが……」

「6回の裏、5-0、逆転の口火を切れるか……」


「大丈夫やちょうちょ!」

「もう嵐田は降りたんや!」

「いつものこういう時のスリーベース頼むで!」


(わかってるな?多少緩くなってもかまわん。その代わり、コントロールはきっちりとな?)

(はい!)


 一昨日までと同じで、きちんとイメージ通りのバッティングができてる。前に監督に言われた通り、一打席一打席初心を忘れずに取り組んでるし、少なくともあたし自身は一昨日までと変わってないはず。なのに、あと一歩のところで阻まれてしまう。


「ストライーク!」


 特別厳しいところじゃなかったけど、様子見のためにあえて見逃し。やっぱり嵐田さんと同じで、そこまで球威がすごかったり、変な癖のある球を投げてるわけでもない。今年に入って散々見てきた、『一軍ではごくありふれてる』くらいの球。なのに……




「一二塁間……いや、ファースト捕った!」

「アウト!」

「二塁フォースアウト!」

「アウト!」

「一塁もアウト!ダブルプレー!!バニーズ、この回も無得点!!!」


「あああああ……」

「マジかよぉ……」

「今ので抜けんのか……」


 外のまっすぐ、流しても強い打球を打てる自信はある。脚にも自信があるけど、ヒットも長打も大体打球の速さで稼いできた自負がある。だから正直、今のも黒毛屋(くろけや)さんなら流石に抜けたと思った。でも阻まれた。

 ここまでくると偶然とは思えない。どうしてこんな……

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