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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第二章 背番号25
451/1161

第七十一話 主役なんてない(7/9)

******視点:月出里逢(すだちあい)******


 7月23日。今日からホームでエペタムズとの2連戦。


「じゃ、じゃあ今日も頑張ってくださいね……」

「はい……」


 いつも通り球場までは卯花(うのはな)さんと一緒だけど、やっぱり気まずい。セクハラだってもうできやしないしね。あの桜井鞠(ドブス)を野に放つことになって一層気が抜けなくなったから、こんな状況でも同伴出勤なのは仕方ないことだけど……


(あい)ちゃん、お待たせ!」


 今日からは怪我をした森本(もりもと)さんに代わって佳子(よしこ)ちゃんが一軍に合流。今年は本当に入れ替わりが激しいけど、佳子ちゃんは佳子ちゃんで下で十分な結果を出してきた。今日の相手の先発は左の嵐田(あらしだ)さんだから、多分スタメンかな?

 積もる話も兼ねて、今日はウォーミングアップから一緒に練習。


「おっぱ……佳子ちゃーん!」

「頑張れー!」

「今日もブルンブルン振り回していけ!」


「ありがとうございます!」


 試合前の練習の時点でもう観客席があったまってる。やっぱり人気がすごいね佳子ちゃん。練習中でも声をかけられるたびに手を止めて、声がした方を向いて笑って手を振ってる。


「ちょうちょー!今日も頼むで!」

「今日で3割や!」

白雪(しらゆき)にも目にもの見せてやれ!」


 流石にあたしには佳子ちゃんほど愛想良く振る舞うことはできないけど、駒として最低限の配慮はする。ちょっとベンチに戻ったりとか手が空いてる時は反応を返したり。それで最近の球団の悪いイメージを払拭できるならってね。


神楽(かぐら)ちゃん、どんな感じだった?」

「やっぱりこの時期だからしんどそうにしてたよ……彼氏さんのことでも悩んでたみたいだし」

「何かあったの?」

「詳しくは聞いてないけど……その……投資関係でお金が必要になったとか……」

「うわ……それもう別れる一択じゃない?」

「それが神楽ちゃん、別れる別れないじゃなくて、貸すか貸さないかで悩んでるみたいで……」

「えぇ……」


 野外球場で、真夏の日中の練習。折を見て日陰に入ったりベンチに戻って水分補給をしながら、佳子ちゃんと久々に何気ない会話。

 正直ちょっと救われる。神楽ちゃんが二軍に行って、おまけにすみちゃんと卯花さんがあんな感じだったから、こうやって直に話をできる人がしばらくいなかったからね。一軍メンバーでぶっちぎりの最年少ってのも考えもの。


「逢ちゃん、ほんとすごいね。もう完全に一軍のレギュラーだね」

「えへへ……」


 だけど、おかげで今のあたしはタイトル争いの真っ只中。正直それがホームランとかじゃなく盗塁ってのはプロに入るまで考えもしなかったけど、それでも自分の実力の証明になるのなら結構なこと。今日は白雪くんが出てくるだろうけど、今やみんなが世代のトップをあたしか猪戸(ししど)くんって言ってくれるようになった。

 ……もうあたしは1人でやっていける。すみちゃんに支えてもらえなくったってやっていける。卯花さんのことも悔いは残るけど、これから先活躍していけばあれくらいの人ともまた縁があるはず。元々あたしクッソ可愛いんだし。

 ネットでも言われてた通り、あたしはこのまま"主役"として突っ走ってやる。


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