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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第二章 背番号25
444/1161

第七十話 瓦解(9/9)

******視点:三条菫子(さんじょうすみれこ)******


「はい。すみません。では後日……」

「お嬢様、こちらへ」

「ありがとう」


 7月15日。講義を欠席する旨の連絡を入れて、次の目的地へ。

 1年の時になるべく単位取っといて良かったわ。こうも大きなトラブル続きじゃ、吉備(きび)だけじゃどうしようもない。ここ数日、本当動きっぱなしだわ。

 キャロットとサイコ女が抜けたから内野をトレードでも何でも良いから補充しなきゃいけないし、(やなぎ)監督の代わりをヘッドコーチに任せるにしてもその分の埋め合わせも必要。それに前のサイコ女の一件について選手会との交渉も。


「……ふぅ」


 落ち着きなさい、落ち着きなさい私。どう取り繕ったって私の身体は1つしかない。優先度を付けて、1つ1つ消化していかなきゃ。私ならできる。できるんだから……


「!!?お嬢様!?お嬢様!!?」


 あ……何か眠い……


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


******視点:月出里逢(すだちあい)******


「トゥディズヒーロー……ナンバー16、アツトー・ヒムロ!ナンバー8、コウキ・フユシマー!ナンバー52、アイ・スダチー!」

「「「「「おおおおおッッッ!!!!!」」」」」

「ほんま冬島(ふゆしま)はキツツキキラーやな……」

伊達(だて)が最近乗ってるけど、やっぱウッドペッカーズ戦ならマスクは冬島やな」


 7月15日。オールスター明け1戦目。オールスター直前のカードもウッドペッカーズ戦で、明けのカードも場所をサンジョーフィールドに移しただけで、相手は同じ。

 すみちゃんのついでに監督にもって気持ちだったけど、冬島さんも負けず劣らずの活躍ぶり。本当にウッドペッカーズ相手だといつもと別人。たまに空回ることもあるけど、普段の冷静そうな感じから一転、やけにギラギラした感じになる。


「…………」


 今もお立ち台に立ってるのに、冬島さんの視線の先はビジター側のベンチ。帰り支度をしてるウッドペッカーズの人達。もしかして向こうに意識してる人がいるのかな?


「冬島選手。今日は先発の氷室(ひむろ)選手を支えつつ、打っては勝ち越しツーベース。攻守にわたって素晴らしい活躍でした!」

「ええ。普段は月出里(すだち)ちゃんとかに頼りっぱなしですけど、"守備の人"とは呼ばれたくないですからね」


 難しい顔から一点、マイクを向けられるとパッと明るく笑って答える冬島さん。まぁこの人、普段から人付き合いが上手い人だけど、何か今はちょっと違う気がする。何と言うか、ちょっと皮肉を交えてるような……


「月出里選手、今日でついに大台の30盗塁!シーズン開幕から飛ばしまくってますね!」

「あ……はい。上手く盗めて良かったです」

「……えっと、これだけの盗塁を成功させるには何か秘訣のようなものがあるんでしょうか?」

「いえ、特に。盗める時に盗んでるだけなんで」


「うーんこの適当な返し」

「これがちょうちょクオリティや」

「実家のような安心感」


 ……すみちゃんも監督も観ててくれてるかな?


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


「……あれ?」


 帰り支度をしながらスマホをチェック。いつも通り、すみちゃんに試合直前にメッセージを送ったのに、既読が付いてない。いつもなら『忙しい忙しい』言ってても、メッセージの確認くらいはするはずなのに……

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