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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第二章 背番号25
430/1152

第六十九話 その瞬間の正解(2/6)

前回、描写に誤りがあったので修正しています

スリーラン→満塁ホームラン

スコア→3-8

******視点:夏樹神楽(なつきかぐら)******


「さぁツーアウトランナーなしですが、注目の対決となりました。15本塁打の猪戸、開幕からリリーフとして要所を抑え続ける夏樹(なつき)。お互い高卒2年目の若い選手」

「5点差ビハインドでも、序盤でこの荒れた状況なら再逆転も十分あり得ますからね。敗戦処理とかじゃなく大事な場面ですよ。しっかり経験を積んで欲しいですね」


 白雪(しらゆき)と比べると対戦したことがあんまりないけど、タイプとしてはそれほど大きな違いはない。デカい身体で飛ばす、左のスラッガー。


「ストライーク!」

(むぅ……外いっぱいか)

「初球カーブから入りました!見送ってワンストライク!!」

「カーブ系を安定して入れられるのが良いですよねぇ」


 スピードで勝負するのが難しいあっしにとっちゃ、緩い球は入れられなきゃ話にならん。見送られてストレートに絞られたらそれだけでアウトだからな。


(よしよし、次はフォークで……)


 伊達(だて)さんのサインは普段なら妥当なとこ。でも……


(……え?これ?)


 代わりのサインに首を縦に振る。


「ボール!」

「ストライーク!」

「ストレート続けて空振り!今度は振らせました!!」


 前のシャークス戦のカード用に対左意識で調整したのもあって、ボールが先行するようなことがない。

 そして何より……


「!!!」

「ストライク!バッターアウト!!」

「高め、空振り三振!最後は141km/hストレート!!」


「おいおい、何でそんなの空振るんだよ……」

「いつもの猪戸なら合わせるくらいできたやろ……」


 元々ゴツい身体してるからわかりづらいけど、昨日のドカ食いが尾を引いてるのは(あい)だけじゃない……ってことだな。

 伊達さんの提案通り、普段なら変化球中心でいきたいとこだったけど、ストレートでも十分勝負できるのなら、失投リスクもあるフォークに頼ることもない。


(月出里逢(すだちあい)には維持ば張れたばってん、盤外戦での勝者は……)


 確かにあっしは逢やお前ほど食が太いわけじゃないけど、喰う量を考えてコンディションを維持するのも立派な調整。選手としての格はお前の方が上なのかもしれないけど、結果が全てってね。


「これでスリーアウト!しかし2回の裏、打者一巡の猛攻で……」

神楽(かぐら)ちゃん、ナイピー!」

「おう!」


 ……そのための、昨日のドカ食いの静観。逢を犠牲にする形にしたのは申し訳ないけど、あっしも生き残るのに必死なんでね。


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


「ストライク!バッターアウト!」

「最後は空振り、スリーアウトチェンジ!夏樹、この回も0で抑えました!」


 回跨ぎで不安はあったけど、左続きで下位打線。想定通りのピッチングができた。


「ようやったのう」

「ありがとうございます!」


 ベンチに戻ると監督からのねぎらい。


「次の回もいってみるか?」

「!?いいんですか?3点差に迫れたのに……」


 表の攻撃で十握(とつか)さんのツーランで今のスコアは8-5。序盤だからまだ捨てるような内容じゃない。


「次の回も左が2人続くしのう。しばらく休んでもらうことになるが、長いイニングも経験しておいて損はなかろう?」

「……やります!」


 そりゃあっしだって先発やれるんならやりたいからね。そのチャンスがあるのなら望むところ。

 雨田(あまた)にはもちろんのこと、逢にだって佳子(よしこ)にだって本音を言えば勝ちたい。今は逢があっしらの中で看板みたいなもんだけど、とって代われるもんなら……ってね。

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