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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第二章 背番号25
415/1157

第六十六話 キミだけはそうであってほしくなかった(5/5)

******視点:伊達郁雄(だていくお)******


「ストレート打ち上げて……セカンド後ろ向きで……追いつきました!これでスリーアウト!」

「やっぱすげぇよワン子は……(テノヒラクルー」

「あと1イニング!あと1イニングなんだ!(*^○^*)」

「まだ完封があるんだ!(*^○^*)」


「うーむ……思った以上に向こうが粘るのう……」

「ですね……」


 思った以上にスコアが動かない。この8回裏の攻撃も、結局三者凡退。月出里(すだち)くんの次に妃房(きぼう)くんと合ってるっぽい相沢(あいざわ)くんも、またしても向こうの堅守に阻まれて出塁できず。


(やっぱり良い打者だね、この人も。多分病み上がりで下位なのが残念)


「バニーズ、選手の交代をお知らせします。ピッチャー、夏樹(なつき)に代わりまして、埴谷(はにや)。ピッチャー、埴谷。背番号21」

「ハニィィィィィィ!!!」


 最近のシャークス打線は速球派投手に強く出られるところがあるけど、埴谷くんならまぁ心配いらないだろう。


「9回の表、シャークスの攻撃。2番センター、戸狩(とがり)。背番号1」


 確かに今日はいつもの唐須(からす)くんが不調だったけど……


「ストライク!バッターアウト!!」

「ええでええで!」


 戸狩くんは戸狩くんで去年からバットが湿りっぱなし。


(あんまりバッテリー組めんかったけど、ハニーさんは元々先発ローテ候補。他のクローザーと比べると球威よりも手札の多さが武器になるタイプ。こういう時にスライダーカーブで(かわ)せると楽でええわ)

「3番指名打者、ハンマー。背番号99」


 問題は一発が怖いここからだけど……


「打ち上げた!ピッチャーそのまま天を仰いで……」

「アウト!」

「3939」


 右サイドの変則投手、左キラーと続いた後の右の本格派。投手陣全体で緩急が効いてる。不意のソロムランの危険はあれど、そうそう繋いで繋いでの大量失点は喰らわないだろう。


「4番レフト、天竺(てんじく)。背番号25」


 今日唯一得点を挙げてる天竺くんは流石に怖いけど……


「まっすぐ打って……ライト大きい!」

(このくらいは……!)

「アウトオオオオオ!!!」

「ライト松村(まつむら)、追いつきました!これでスリーアウト!」


「おっしゃあああああ!!!」

「9回もどうにか抑えたで!」

「逆転!次の回こそ逆転や!!」


 天竺くんがあまり得意ではない速球がどうにか(まさ)った。スコアが思ったより動かないのはこっちも同じだったけど、守備ならこっちの方が上。


「さぁ9回のマウンドですが……妃房(きぼう)がそのままマウンドに向かいます!今シーズン初の完封勝利を目指します!」


 あとは終盤まで積み重ねてきた布石が最後の最後に()いてくるか……


「9回の裏、バニーズの攻撃。8番ライト、松村(まつむら)。背番号4」

「バニーズの9回の先頭打者は、先ほど好プレーの松村。今日は三振とキャッチャーファールフライ。同学年対決、最後に一矢報いることができるか!?」

(月出里(すだち)さんばかりに良いところを持っていかせませんよ……!)


 今は外野は左打者だらけだけど、妃房蜜溜(きぼうみつる)が相手なら左右はあまり関係ない。ある程度打席慣れした打者の方がまだ期待値は大きい。


「ッ……!」

「スライダー引っ掛けて……」

(よーし!最後にキッチリ決めて、交流戦後もレギュラー……)

「ああっと!セカンドグラブ弾いた!!」

「「「「「ファッ!!?」」」」」

「セーフ!!!」

「何やってんだワン子ァ!!!」


 ……まぁ、今日のシャークス野手陣はやけに守備が固かったからね。


(最後の最後で未香(みか)め……!)

(まぁ良いよ。どのみち月出里逢(すだちあい)と勝負するのは確定なんだから)

「9番キャッチャー、冬島(ふゆしま)。背番号8」


 どうにか得点圏で月出里くんと勝負させたいところだけど……


「ああっ!」

「くそッ……!」

「冬島、スリーバント失敗!これでワンナウト!」

「164km/h……」

「もう100球超えてるのに元気満々やな」


(バントが決まろうが別に構わなかったけどね。こっちにはミラー監督への手札があるし)


 疲れが一周回ったのか、妃房くんの制球がまた整い始めた。


「1番サード、月出里(すだち)。背番号52」


 やれる手は尽くしてきた。後は妃房くんの最後の底力が上回るか、月出里くんの特長が上回るか。

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