第八話 あたし、頑張るよ(5/5)
******視点:リリィ・オクスプリング******
「……うん、そう言うことで今度ジュースいっぱいそっちに送るから、受け取りよろしくね!」
ジュース?何の話しとるんや?
「リリィちゃん!次いくよ次!」
「おう!」
すっかり月が見つめる頃。明かりが灯った室内練習場でノックを受けてた。月出里はスマホで誰かと通話しながら、ウチらの練習を見つめてた。
「そうなんだよ!来週、あたし多分スタメンで出れるんだよ!昨日は守備固めでちょろっとだったけど、今度は打って守って活躍するからね!」
そういや、月出里があんなに無邪気に笑うとこは初めて見るな。別に無表情なわけやないけど、何と言うか、愛想とかも何か裏がありそうな感じがするって言うか……
「うん。ちょっと初日に危なかったんだけど、すごく良い先輩がいて止めてくれたんだよ。今も今日仲良くなった人のために、ノックを買って出てずっとやってるんだよ」
くそっ、また逸らしてもうた……!
「だからあたし、お母さんとの約束、守り続けるから。……うん、あたし、頑張るよ。おやすみ、お父さん」
「リリィちゃん!打球が速い時は後ろに逸らさなかったらまず間に合うんだから、しっかり打球を身体で止める!!」
「す、すまん……もう1回頼む!」
ウチも長時間ノックを受け続けて、そろそろ体力の限界が近い。だけどそんなんよりも、ずっと付き合わせてる火織に申し訳ない。何か礼を考えとかんとな。
「火織さん。あたし、代わりますよ」
電話を切った月出里が火織と代わった。
火織は近くのベンチに座って水分補給をして、懐から禁煙パイポを取り出してキャップを外したけど、結局吸うことなくキャップをはめ直して懐に戻した。
全く。泣き言なんて言ってられへんな。
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******視点:柳道風******
さぁ、いよいよ今日は楽しい楽しい喧嘩の日じゃな。
「監督。白組のメンバー表、アップロードされてますよ」
「おう。早速見てみるわ」
便利な世の中になったもんじゃな。相手のメンバー表がすぐチェックできるし、過去のもんもカレンダーや検索ですぐに出せる。こう言う点でもあのオーナー様様じゃな。
「ほう、こうきたか……!」
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○白組
[先発]
1二 徳田火織[右左]
2中 有川理世[右左]
3右 松村桐生[左左]
4一 天野千尋[右右]
5三 リリィ・オクスプリング[右両]
6捕 冬島幸貴[右右]
7指 伊達郁雄[右右]
8左 秋崎佳子[右右]
9遊 月出里逢[右右]
投 氷室篤斗[右右]
[控え]
雨田司記[右右]
山口恵人[左左]
夏樹神楽[左左]
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