第五十六話 背負う資格(1/4)
2019ペナントレース バニーズvsエペタムズ
バニーズ 2-1 エペタムズ
4回表 1アウト 二塁:月出里
○天王寺三条バニーズ
監督:柳道風
[先発]
1中 赤猫閑[右左]
2二 徳田火織[右左]
3指 リリィ・オクスプリング[右両]
4左 金剛丁一[左左]
5一 天野千尋[右右]
6右 十握三四郎[右左]
7三 デーブ・キャロット[右左]
8捕 伊達郁雄[右右]
9遊 月出里逢[右右]
投 氷室篤斗[右右]
●函館菊盃エペタムズ
監督:鈴鹿智子
[先発]
1三 ■■■■[右左]
2中 騒速明煌[右左]
3指 草薙敢[右左]
4一 黒毛屋要[右右]
5左 ■■■■[右左]
6右 ■■■■[右右]
7二 ■■■■[右左]
8捕 ■■■■[右右]
9遊 黄金丸魅零[右左]
投 戸松有真[右右]
******視点:徳田火織******
うーん、持ってるなぁ逢ちゃん。良い守備の後ってのもあるんだろうけど。
「1番センター、赤猫。背番号53」
逢ちゃんの脚ならシングルでも帰って来れると思うけど、閑さん良い感じに繋いでくれないかなぁ?
「戸松、いったんプレートを外します!」
「セーフ!」
「まぁワンナウトですからここで三塁狙う可能性は一応ありますね」
「二塁ランナー月出里は昨シーズン二軍で高卒1年目ながら21盗塁、秋季リーグと今シーズンのオープン戦でも最多盗塁を記録しております」
ネクストから見る限り、特に盗塁のサインは出てないけど……
「!?」
「バントした!ファーストチャージ!!」
「……セーフ!」
「一塁間に合いません!二塁ランナーも三塁へ!セーフティバント成功!」
「流石や閑たそ!」
元気の良いおばさんだねぇ。
(絶対に1点欲しいって場面でもないしね。この場は譲ってあげるわ。ハンサム坊やに良いとこ見せてあげなさい)
でも、粋なことをしてくれた……あれ?ってことは閑さんにもバレてる?……まぁ良いか。
「2番セカンド、徳田。背番号36」
「さぁこれでワンナウト一二塁、バッターボックスには徳田が入ります!」
「かおりーん!ダメ押しダメ押し!」
「思いっきりしばいたれー!」
ランナーもアタシも脚には自信がある。併殺崩れでも得点が狙えるこの場面。内野の間めがけて強く転がしたいところ。ただ……
「ストライーク!」
「外速球ストライク!」
やっぱそうくるよね。
(併殺崩れも失点の状況。それにあのチビは内に強く、外はあまり得意じゃない。外中心に攻めて、黄金丸さんの正面辺りに転がってくれりゃベストだ)
「ボール!」
「ボール!」
「ファール!」
ここにきて良いとこ投げてきたなぁ……チョコンとレフトの前でも良いかなぁと思ったんだけど。
(よし、追い込んだ!)
(安全に行くならフォークだが、コイツは去年のデータを見る限り右のフォークには滅法強い。そして傾向を見るにバックドアの変化球を見逃しやすいタイプ。そうなってくると……)
!!ナックルカーブ……
「ファール!」
「粘ります徳田!」
「良いぞ!」
「今のよう当てた!」
(チッ、せっかく想定通りのコースだったのに……!)
(心配ない、今の感じならそうそう前には飛ばん。もう1球だ!)
なんの!
「ファール!」
「これも喰らいつきます!」
まだワンナウトで、次がリリィちゃんだからね。今は最低限の結果優先。
(もう少し低め……)
「……ボール!」
「外れましたボール!フルカウント!」
「流石の選球眼ですねぇ」
「昨年の徳田は打率だけではなく出塁率も4割でチームトップです!」
歩いても満塁。あっくんが勝てる確率がさらに上がるんだから、アタシ自身が活躍できなくても、ゲッツーよりはまだマシ。
「サインが決まりません、バッテリー」
(下手に低め狙っちまったのは不味かった……さっきまでの高さのナックルカーブに修正し直すのはちょっと厳しい……)
(となると、まっすぐで押すしかないか……)
!!内側まっすぐ!!!
(まずい、逆球……)
(いや、これは外れる……!)
いける!
「打った!」
(何!!?)
「一二塁間……」
(抜かせるか!)
「黒毛屋飛びついたが抜けた!」
よし……!
「セーフ!」
「三塁ランナーホームイン!3-1!徳田、ライト前!ダメ押しのタイムリー!」
「「「「「よっしゃあああああ!!!」」」」」
「やっぱかおりん、確変ちゃうかったんやなって……」
一塁から少し駆け抜けたところで、意気揚々と肘当てを外しながら一塁へ戻る。
「一塁ランナー赤猫は二塁ストップ!」
「ワンナウトであの打球の速さですからね。だからこそ内野が抜けましたが。しかし今の内角ストレート、よく捌きましたねぇ……」
あれくらい軽い軽い。見逃して歩いても良かったけどね。
(完全ボール球だったのに……!)
(四球も想定した内容だったのにあえて打ちに行ってこれか……マジで内角打ちには自信があるみたいだな)
「良いぞ火織!ナイバッチだ!」
ベンチから身を乗り出して見てくれてたあっくんからも祝福。これでアタシもあっくんの役に……今夜のご褒美が楽しみだね。ウヘヘヘヘ……
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「……アウト!」
「スリーアウト!しかしこの回、徳田のタイムリーでバニーズ、1点追加!1-3、バニーズのリードが続きます!」
リリィちゃんと金剛さんは揃って内野フライ。まぁ結果だけ見ればアタシが無理して打ちにいったのが正解になったわけだけど、実際のとこはあの球威からして戸松さんが立て直したと見た方が多分正しい。
まぁそれでもあっくんが投げてて2点リード。まだ前半だけど、きっと逃げ切れるよね?
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