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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第二章 背番号25
341/1152

第五十五話 当たり前の応酬(6/8)

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「ストライク!バッターアウト!」

「外!見逃し三振!!」

「今日の氷室(ひむろ)は左の外を上手く使えてますねぇ」

「スリーアウト!2回の裏、エペタムズ。三者凡退です」


 調子が良いね、氷室さん。ほんとに危なげのないピッチング。ファールで怖い当たりとかも今のところない。


「3回の表、バニーズの攻撃。4番レフト、金剛(こんごう)。背番号55」


 とは言え、誰が投げてようが2点リードじゃ心許ないものだけど……


「アウト!」

「アウト!」


「ツーアウトツーアウト!」

「良いぞ戸松(とまつ)!」

「それでこそエースや!」


「ナイスボール!」

(立ち上がりはまっすぐとカットに頼るしか無かったが、ナックルカーブも入るようになったおかげでかなりやりやすくなった。コースが多少雑でもタイミングと軌道にメリハリをつけられりゃ、戸松の球はそうそう打たれねぇよ)


 2回から本領発揮の戸松さん。去年勝負した嵐田(あらしだ)さんとはまるでタイプが違うけど、どっちにせよ力のある投手。


「!?」

「セカンド!」

「セーフ!」


「「「「「おおおおおっ!!!」」」」」


十握(とつか)、二塁到達!ツーベース!何と十握、プロ初打席から二打席連続安打です!!」

「さっきは振り抜いて外野まで持っていきましたけど、今度は逆方向技あり……いやぁ、器用ですねぇ」


 そんな戸松さんをポンポン打つ十握さん。ほんとこの人はすごい。火織(かおり)さんとかリリィさんも上手いと思うけど、十握さんはそれ以上かも?


「アウト!」

「スリーアウト!二塁残塁、追加点ならず!」


 とは言え、いくら長打が出てもツーアウトからじゃなかなかね。


「3回の裏、エペタムズの攻撃。8番キャッチャー、■■。背番号■■」

(初回から援護もらって、得点に繋がらなくても攻撃の形はちゃんと作ってくれてる。なら俺もこのまま抑え続けるまでだ……!)

「ストライク!バッターアウト!!」


 ほんと今日の氷室さんはスイスイ投げるね。


「■■、スイングアウトの三振!氷室、今日これで5つ目の三振です!」

「フォークがいつも通りで、制球もまとまってますね。これはエペタムズも手こずりそうですねぇ」

「9番ショート、黄金丸(こがねまる)。背番号9」

魅零(みれい)ー!とりあえず出塁してくれー!」


 名手・黄金丸さん。火織さんの守備力を上げてショート寄りになったような人だけど、バッティングは9番が基本。あたしの去年の二軍の立ち位置みたいな感じ。正直非力な部類の打者。ボーイッシュな見た目で童顔だけど、意外と背はプロとして普通くらい。日本のショートとして考えればむしろ大きいくらいかも?


(とは言え、目が良くてしつこいバッターだ。氷室くん、無駄球は極力避けて今日冴えてる外の球中心で抑えよう)

(はい!)

(……そうくると思ったよ)


 !!!


「!?レフト!」

「ッ……!」

「よっしゃ!落ちた!」


 やば……!黄金丸さんの脚だと……


「セーフ!」

「「「「「よっしゃあああああ!!!」」」」」

(へっへーん、ボクの狙い通り!)


 黄金丸さんの好打に、向こうのベンチも観客も湧き、黄金丸さんもイタズラ小僧みたいに笑う。


「ツーベース!黄金丸、初球を捉えました!!」

「外、ほんの少し浮いた球だったんですが逃しませんでしたね。バッテリー的にも追い込んでからが勝負と思ってたんでしょうね」


 確かあたしと同じで高卒のドラフト下位指名。そこから這い上がって何年も強豪チームの二遊間のレギュラーをやってるんだから、これくらいのことはやってくるよね……


(これ以上はやらせねぇ……!)

「アウト!」

「セカンドフライでツーアウト!ランナーはそのまま二塁!」


 でも、多分勝負はここから……


「2番センター、騒速(そはや)。背番号7」

明煌(あきら)くーん!」

「繋いでけ繋いでけー!」

(ここから4番までが役者揃いなんだよね……)

(次は向こうの事実上の最強打者、草薙(くさなぎ)さん。何とかこの人をランナーじゃなく打者として仕留めたいところだが……)




「ボール!フォアボール!!」

(くっ……!!!)


「騒速、7球粘ってフォアボール!」

「これは大きいですね。騒速も3割打った実績のある打者ですが、2点差ですからね。目先の1点も欲しいところですが、この出塁は向こうにとっても痛いでしょうね」

「3番指名打者、草薙(くさなぎ)。背番号8」

「草薙ー!逆転弾でも良いんだぞー!!」

「決めたれ天才打者!」


 一昨年に規定には届かなかったけど軽く4割以上打った天才打者、草薙さん。次の黒毛屋(くろけや)さんも実績のある長距離砲だけど、打者としては多分この人の方が厄介。


(やらせるか!)

「ボール!」

(くっ……ストライクから入れなかったか……!)


 打率が高いだけじゃなく、この目の良さも厄介。次の黒毛屋さんは打点王の実績持ちの勝負強い打者。この人は長打はあんまりないから、多分氷室さん達としてはボール球から入る気はなかったはず。


「!!ライト!」


 やられた……!


「セカンドランナー黄金丸、一気にホームへ……そしてファーストランナー騒速は三塁へ!」

「セーフ!」

「セーフ!草薙、タイムリーヒット!エペタムズ、ここで1点返しました!」

「ナイバッチ草薙!」


 なおも一塁三塁、これはちょっとまずいかも。

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