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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第二章 背番号25
324/1152

第五十三話 ひずみ(2/9)

「ショート!」

「アウト!スリーアウトチェンジ!」


「ふぅー、やっと切れたか……」

「ちょうちょ、とりあえず問題なさそうやな」

「やっぱ常光(じょうこう)にはヴァルチャーズ相手は早いんちゃう?」

「言うても先発ローテ候補やで?」


 初回はお互い綺麗に3人で切ったけど、2回にいきなり四球と連打で3点も献上。バッテリーの次に負担が大きいって言われてるショートも、案外こういう時はなかなか打球が飛んでこないもの。ベースカバーとかアシストとかやることはいくらでもあるけどね。


「!!?」

「ゴー!ゴー!」

「セーフ!!!」


 とは言え、ベストメンバーじゃないのは向こうも同じ。エラーとバッテリーミスでチャンス到来。


「1番ショート、月出里(すだち)。背番号52」


(あとワンナウト、ものの数ではありませんわ……!)

「ボール!」

「ストラーイク!」


 確かに引き出しが多いし、制球もまとまってる。でも、カーブの投げ方に癖がある……!


「!!?ショート!」

(行かせねぇべ!)


 向こうのショートはバリバリレギュラーの睦門(むつかど)さんだけど……


「……抜けた!」

「突っ込め突っ込め!」

「セーフ!!!」

「っしゃあああああッ!」

「ええでええで!すぐに点返せた!!」


 睦門さんは肩が強くて三遊間の打球に強いって言われてるけど、速い打球なら案外抜けるみたいだね。チームはまだ劣勢ではあるけど、結果は出せた。


「ほんまよう打つようになったわ」

「こりゃ相沢の代わりはちょうちょしかないやろ(確信)」

「あとはホームランだけやな(ゲス顔)」


(おっかねぇ……ありゃさすがに追いつけねぇべ……)

(……睦門さんが捌けないのなら(わらわ)の責任……ですわね)


 去年の今頃はただ歯を食いしばって妬むしかできなかった人に、こうやって真ッ正面からぶつかっても勝てる。


「2番セカンド、徳田(とくだ)。背番号36」

(やるようになったのう、ほんに)


 そうやってサインを出してくれるなら、柳監督(ジジィ)だってきっと見返せたはず。


「!!走ったぞ!」

「ボール!」

「くそッ……!」




「セーフ!!!」


 やっぱりあたしはやれる。すみちゃんが信じてくれたようにやれる。


「……アウト!スリーアウトチェンジ!!」


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


「お疲れ様、(あい)ちゃん」

「お疲れ様です」


 今日の試合と全体練習を終え、火織(かおり)さんと一緒にホテルの食堂近くのラウンジで、晩御飯を待ちながらソファで身体を休める。スマホをチェックすると、今日の試合についてのメッセージが何通も。もちろん、すみちゃんからも。キーボードがなくて面倒だけど、とりあえず優先順位高い順に返信。


「……では続きまして、プロ野球のニュースです。昨日から始まったオープン戦、バニーズも本日、ヴァルチャーズと対戦しました」


 ラウンジのテレビは早速今日の試合の様子を報じてる。


「やや曇天の元、宮崎で開幕した今年のオープン戦。マウンドに立ったのは高卒3年目の長身右腕・常光(じょうこう)。1回は得意のナックルカーブで2奪三振、三者凡退と上々の立ち上がりでしたが、続く2回、制球に苦しみ、連打も重なって3失点。しかし……」


 それはまぎれもなくあたしさ、なんてね。


「その裏の攻撃。急病の相沢(あいざわ)に代わって急遽1番ショートに抜擢された高卒2年目の月出里(すだち)。カーブを捉え、すぐさま反撃。そして盗塁。さらに3回には見事な併殺プレー」


 しかも可愛い。


「先発の常光は3回、4回は粘り強く無失点で切り抜け、4回3失点5奪三振。金剛(こんごう)のスリーランなども飛び出しましたが、反撃が追いつかず5-4の惜敗となりました」


 どこもかしこも、あくまであたしを"相沢さんの代わり"扱いするのは正直気に入らないけど、あたしのためにずいぶん尺を取ってくれたね。単に画面が映えるからってだけかもしれないけど。


「いやぁ、■■さん。相沢の緊急入院でファンの間でも騒然となりましたが、これなら心配なさそうですね」

「そうですね。バニーズは相沢が絶対的なレギュラーショートではありますが、月出里に桜井(さくらい)徳田(とくだ)も昨年はレギュラーセカンドでしたがショートもできます。課題はやはり守備面より、相沢が抜ける分も含めての得点力と、そして投手陣の整備でしょうね」

「その桜井ですが、こんな映像があります」


 画面が切り替わって、病院の中。


「相沢さん!お体大丈夫ですか!?」

「お、おう……」

「緊急搬送された相沢の元に真っ先に駆け付けたのは桜井。相沢の体調も、バニーズの今シーズンの行方も心配な中、涙ながらにこう答えてくれました」

「ぐすっ……同じ内野としてすごく尊敬してる人なので、私としても心配してますし、不安もあります。ですがこういう時こそ、『バニーズはやれるんだ』ってところをプレーで見せていきたいと思ってます。いつか相沢さんが安心して戻って来られるように、私も精一杯チームに貢献できればって……」


「白々しい」

「でしょ?」


 思わず本音が出ちゃった。火織さんからもお墨付きをもらえたけど。


「……念のため言っとくけど、あの人と財前(ざいぜん)さんには気をつけてね?千代里(ちより)さんと相模(さがみ)さんはまだ話せばわかる人達だけど、あの2人は……」

「大丈夫ですよ。心配してくれてありがとうございます」


 あの手のあざといぶりっこは嫌いだし、『話せばわかる』って言葉ほどアテにならないものはない。"話せばわかる人"ってのは大抵の場合、"話す前に察することのできる人"。それに、嘘はタダで()けるんだから、話が通ったところでその時点でその人が"話せばわかる人"だっていう保証はどこにもない。他人を疑うのもタダなのを活かすのが当たり前。あたしはそうしてきたから、こうやって最低限綺麗なままでいられたんだからね。


 ・

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【天王寺三条バニーズ】キャンプレポートスレ8【in宮崎2019】


 13 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)

 やっぱりマッリは人間の鑑 (確信)



 14 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)

 ちょうちょも確かにええんやけど

 この機会にマッリとも競争させてほしいわね



 15 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)

 それにしてもこの時期なのに離脱者多すぎやろ

 どうなっとるんや



 16 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)

 >>15

 346も腰痛やしな



 17 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)

 >>16

 346って誰?



 18 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)

 >>17

 ルーキーの十握三四郎



 19 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)

 >>18

 サンガツ



 20 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)

 まぁ若手の離脱が多いけど

 不安やったベテランが安定してるのは救いやな

 金剛はようやっとる



 21 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)

 いつのまにかメガネも一軍おらんけど怪我ちゃうよな……?



 22 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)

 >>21

 単純に不調や

 紅白戦一戦目以外は微妙やったからな



 23 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)

 >>22

 150ポンポン投げれるのはええけど

 スライダーが入らなくなったのは痛いわな

 チェンジアップも去年の末くらいは普通に決まってたのに



 24 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)

 メガネは2年目やからそんなに焦らんでええやろ

 常光やって3年目やし

 中堅以上の連中が情けない方が悪い



 25 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)

 開幕スタメン候補


 投手:百々 三波 氷室

 捕手:伊達 土生 有川 (冬島)

 一塁:天野 松村 イースター

 二塁:徳田 キャロット 桜井

 三塁:キャロット 相模 月出里

 遊撃:月出里 桜井 徳田 (相沢)

 左翼:金剛 相模 赤猫 (十握)

 中堅:赤猫 秋崎 森本

 右翼:森本 松村 秋崎

 指名:リリィ イースター 金剛



 26 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)

 >>25

 意外とキャッチャーは駒が揃ってるけど

 野手がやっぱり薄いなぁ

 チッヒかおりんリリィ金剛辺りは確定やろうけど



 27 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)

 >>26

 いやキャッチャーも人数はおるけど

 せっかくの有川が使い回せんの痛いで

 投手陣が伊達冬島に慣れて落ちる球使うようになって

 真壁が一軍で全然使えんからな


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