第五十三話 ひずみ(2/9)
「ショート!」
「アウト!スリーアウトチェンジ!」
「ふぅー、やっと切れたか……」
「ちょうちょ、とりあえず問題なさそうやな」
「やっぱ常光にはヴァルチャーズ相手は早いんちゃう?」
「言うても先発ローテ候補やで?」
初回はお互い綺麗に3人で切ったけど、2回にいきなり四球と連打で3点も献上。バッテリーの次に負担が大きいって言われてるショートも、案外こういう時はなかなか打球が飛んでこないもの。ベースカバーとかアシストとかやることはいくらでもあるけどね。
「!!?」
「ゴー!ゴー!」
「セーフ!!!」
とは言え、ベストメンバーじゃないのは向こうも同じ。エラーとバッテリーミスでチャンス到来。
「1番ショート、月出里。背番号52」
(あとワンナウト、ものの数ではありませんわ……!)
「ボール!」
「ストラーイク!」
確かに引き出しが多いし、制球もまとまってる。でも、カーブの投げ方に癖がある……!
「!!?ショート!」
(行かせねぇべ!)
向こうのショートはバリバリレギュラーの睦門さんだけど……
「……抜けた!」
「突っ込め突っ込め!」
「セーフ!!!」
「っしゃあああああッ!」
「ええでええで!すぐに点返せた!!」
睦門さんは肩が強くて三遊間の打球に強いって言われてるけど、速い打球なら案外抜けるみたいだね。チームはまだ劣勢ではあるけど、結果は出せた。
「ほんまよう打つようになったわ」
「こりゃ相沢の代わりはちょうちょしかないやろ(確信)」
「あとはホームランだけやな(ゲス顔)」
(おっかねぇ……ありゃさすがに追いつけねぇべ……)
(……睦門さんが捌けないのなら妾の責任……ですわね)
去年の今頃はただ歯を食いしばって妬むしかできなかった人に、こうやって真ッ正面からぶつかっても勝てる。
「2番セカンド、徳田。背番号36」
(やるようになったのう、ほんに)
そうやってサインを出してくれるなら、柳監督だってきっと見返せたはず。
「!!走ったぞ!」
「ボール!」
「くそッ……!」
「セーフ!!!」
やっぱりあたしはやれる。すみちゃんが信じてくれたようにやれる。
「……アウト!スリーアウトチェンジ!!」
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「お疲れ様、逢ちゃん」
「お疲れ様です」
今日の試合と全体練習を終え、火織さんと一緒にホテルの食堂近くのラウンジで、晩御飯を待ちながらソファで身体を休める。スマホをチェックすると、今日の試合についてのメッセージが何通も。もちろん、すみちゃんからも。キーボードがなくて面倒だけど、とりあえず優先順位高い順に返信。
「……では続きまして、プロ野球のニュースです。昨日から始まったオープン戦、バニーズも本日、ヴァルチャーズと対戦しました」
ラウンジのテレビは早速今日の試合の様子を報じてる。
「やや曇天の元、宮崎で開幕した今年のオープン戦。マウンドに立ったのは高卒3年目の長身右腕・常光。1回は得意のナックルカーブで2奪三振、三者凡退と上々の立ち上がりでしたが、続く2回、制球に苦しみ、連打も重なって3失点。しかし……」
それはまぎれもなくあたしさ、なんてね。
「その裏の攻撃。急病の相沢に代わって急遽1番ショートに抜擢された高卒2年目の月出里。カーブを捉え、すぐさま反撃。そして盗塁。さらに3回には見事な併殺プレー」
しかも可愛い。
「先発の常光は3回、4回は粘り強く無失点で切り抜け、4回3失点5奪三振。金剛のスリーランなども飛び出しましたが、反撃が追いつかず5-4の惜敗となりました」
どこもかしこも、あくまであたしを"相沢さんの代わり"扱いするのは正直気に入らないけど、あたしのためにずいぶん尺を取ってくれたね。単に画面が映えるからってだけかもしれないけど。
「いやぁ、■■さん。相沢の緊急入院でファンの間でも騒然となりましたが、これなら心配なさそうですね」
「そうですね。バニーズは相沢が絶対的なレギュラーショートではありますが、月出里に桜井、徳田も昨年はレギュラーセカンドでしたがショートもできます。課題はやはり守備面より、相沢が抜ける分も含めての得点力と、そして投手陣の整備でしょうね」
「その桜井ですが、こんな映像があります」
画面が切り替わって、病院の中。
「相沢さん!お体大丈夫ですか!?」
「お、おう……」
「緊急搬送された相沢の元に真っ先に駆け付けたのは桜井。相沢の体調も、バニーズの今シーズンの行方も心配な中、涙ながらにこう答えてくれました」
「ぐすっ……同じ内野としてすごく尊敬してる人なので、私としても心配してますし、不安もあります。ですがこういう時こそ、『バニーズはやれるんだ』ってところをプレーで見せていきたいと思ってます。いつか相沢さんが安心して戻って来られるように、私も精一杯チームに貢献できればって……」
「白々しい」
「でしょ?」
思わず本音が出ちゃった。火織さんからもお墨付きをもらえたけど。
「……念のため言っとくけど、あの人と財前さんには気をつけてね?千代里さんと相模さんはまだ話せばわかる人達だけど、あの2人は……」
「大丈夫ですよ。心配してくれてありがとうございます」
あの手のあざといぶりっこは嫌いだし、『話せばわかる』って言葉ほどアテにならないものはない。"話せばわかる人"ってのは大抵の場合、"話す前に察することのできる人"。それに、嘘はタダで吐けるんだから、話が通ったところでその時点でその人が"話せばわかる人"だっていう保証はどこにもない。他人を疑うのもタダなのを活かすのが当たり前。あたしはそうしてきたから、こうやって最低限綺麗なままでいられたんだからね。
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【天王寺三条バニーズ】キャンプレポートスレ8【in宮崎2019】
13 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)
やっぱりマッリは人間の鑑 (確信)
14 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)
ちょうちょも確かにええんやけど
この機会にマッリとも競争させてほしいわね
15 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)
それにしてもこの時期なのに離脱者多すぎやろ
どうなっとるんや
16 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)
>>15
346も腰痛やしな
17 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)
>>16
346って誰?
18 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)
>>17
ルーキーの十握三四郎
19 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)
>>18
サンガツ
20 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)
まぁ若手の離脱が多いけど
不安やったベテランが安定してるのは救いやな
金剛はようやっとる
21 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)
いつのまにかメガネも一軍おらんけど怪我ちゃうよな……?
22 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)
>>21
単純に不調や
紅白戦一戦目以外は微妙やったからな
23 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)
>>22
150ポンポン投げれるのはええけど
スライダーが入らなくなったのは痛いわな
チェンジアップも去年の末くらいは普通に決まってたのに
24 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)
メガネは2年目やからそんなに焦らんでええやろ
常光やって3年目やし
中堅以上の連中が情けない方が悪い
25 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)
開幕スタメン候補
投手:百々 三波 氷室
捕手:伊達 土生 有川 (冬島)
一塁:天野 松村 イースター
二塁:徳田 キャロット 桜井
三塁:キャロット 相模 月出里
遊撃:月出里 桜井 徳田 (相沢)
左翼:金剛 相模 赤猫 (十握)
中堅:赤猫 秋崎 森本
右翼:森本 松村 秋崎
指名:リリィ イースター 金剛
26 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)
>>25
意外とキャッチャーは駒が揃ってるけど
野手がやっぱり薄いなぁ
チッヒかおりんリリィ金剛辺りは確定やろうけど
27 : 風吹けばちょうちょ [] :2019/02/24 (日)
>>26
いやキャッチャーも人数はおるけど
せっかくの有川が使い回せんの痛いで
投手陣が伊達冬島に慣れて落ちる球使うようになって
真壁が一軍で全然使えんからな
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