表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第二章 背番号25
315/1152

第五十一話 ハリボテのヒーロー(1/5)

2019春 第一回紅白戦

紅3-2白

9回表2アウト三塁

三塁:月出里


●紅組

 1中 赤猫閑(あかねこしずか)[右左]

 2二 徳田火織(とくだかおり)[右左]

 3指 リリィ・オクスプリング[右両]

 4左 金剛丁一(こんごうていいち)[左左]

 5一 天野千尋(あまのちひろ)[右右]

 6右 松村桐生(まつむらきりお)[左左]

 7遊 相沢涼(あいざわりょう)[右右]

 8捕 有川理世(ありかわりせ)[右左]

 9三 月出里逢(すだちあい)[右右]


 投 夏樹神楽(なつきかぐら)[左左]



 ○白組

 1三 相模畔(さがみくろ)[右左]

 2遊 桜井鞠(さくらいまり)[右右]

 3右 森本勝治(もりもとかつじ)[右左]

 4左 十握三四郎(とつかさんしろう)[右左]

 5一 財前明(ざいぜんあきら)[右右]

 6指 ロバート・イースター[右左]

 7中 秋崎佳子(あきざきよしこ)[右右]

 8二 デーブ・キャロット[右左]

 9捕 土生和真(はぶかずま)[右右]


 投 早乙女千代里(さおとめちより)[左左]

******視点:早乙女千代里(さおとめちより)******


 やられちまったなぁ……


(すまん……!)


 サードにいる(くろ)が本当に申し訳なさげに、あーしに向かって手を合わせてる。まぁしょうがないよ。そもそも打たれたのはあーし。結果としてツーベースがスリーベースに化けた程度。

 正直、"フェイク"を完成させた時はホントにテンション爆上げで、高校でブイブイいわせてた頃みたいに自信に溢れてたんだケドねぇ。今年こそは先発だってやれるって。それを去年の今頃、散々バカにしてた奴にあっさり打たれちゃうなんてね。

 ……あーしの見る目がなかった、そのことくらいは認めてやるよ月出里(チビ)


「1番センター、赤猫(あかねこ)。背番号53」


「ギャル子ー!踏ん張ってけー!!」

(しずか)たそー!ダメ押しダメ押し!!」


 ケド、投手の仕事はあくまで『できるだけ無傷のまま3つのアウトを積み重ね続けること』。月出里(チビ)に負けたのはもちろんムカつくケド、もうアウトを2つ積み重ねてホームベースもまだ踏まれたわけじゃない。

 上位に回ったとは言え、多分相性は良いはずの赤猫さん。ここらでしっかり締める……!


「ストライーク!」


「うーん、やっぱ今日の閑たそ、真っ直ぐに()され気味やなぁ」


 そこんとこは正直助かる。元々ローボールヒッターだケド、今日はいつにも増して高めまっすぐについていけてない。


「ボール!」


 外したけどもう1球……!


「ファール!」


 次は当てたか……ならそろそろ"フェイク"!!!


(!?曲がって……)

「……ボール!」


「おおっ!見極めた!!」

「さすが閑たその選球眼!!」

(いや、今のは……)


 『見極めた』んじゃなく、『手が出なかった』んだろうね。こういう時に細かいコントロールがないと困る。

 でもやっぱ、左には特に効果覿面だね。


(やっぱり厄介ね、この真っスラっぽいの。一部の思考停止の指揮官が実際の相性を見ずに左右だけで選手起用するから、プラトーンシステムは"左右病"とかって馬鹿にされるけど、実際に左右の違いっていうのはボールの見極め時間だったりリリースポイントの見えやすさだったりっていう明確な違いがあるのも事実。さっき月出里(すだち)ちゃんがすんなり見極められてたのは多分そういうアドバンテージも絡んでたんだろうけど……)


 "フェイク"は単体だと単なる真っスラ程度の代物。でもまっすぐと組み合わせることでギリギリでの見極めを強いれる。特に左打者はより短い時間でどっちかを判別しなきゃいけないから、まっすぐに対してもどうしても振り遅れ気味になる。

 まぁ追い込むまではヤマ張りに気をつけなきゃだケド、そんなのは他のピッチングでも同じ。


「ファール!」

(何とか当てれた……けど、続けられる自信はないわね)


 流石にまっすぐにも慣れてきたかな?


(ボールカウントにはまだ余裕がある。無難に真っスラで決めるか?)


 土生(はぶ)さんのサインは"フェイク"。そうっスね。手堅く仕留めますか……!


「ッ……!」

「……ああっ!!?」


 空振った……ケド!!!


「土生!右!右!」

「セーフ!」

「す、すまん……!!!」

「……いえ、しゃーないっスよ」


 振り逃げ……真壁(まかべ)さんと比べりゃ土生さんの方がまだゴールキーパーとしては信頼できるケド、この球捕るのは今日が初めてだしね。月出里(チビ)が帰れる程度に弾かなかっただけマシと思うしかない。


「2番セカンド、徳田(とくだ)。背番号36」


「一三塁やぞかおりん!」

「ダメ押しダメ押し!」


 コイツに回っちまったか……


「ボール!」

「ボール!」


 くそっ、2球続けて……今度こそ!


(きた……!)


 やば……!


「ファール!」

「惜っしい……!」

「レフト線あとちょっと……!」

(ま……しょうがない。流し打ちは元々あんまり得意じゃないし)


 "フェイク"がストライク入るか微妙な上、まっすぐと同じ軌道から曲げてこそ有効な球だから、ボールが2つも先行するとまっすぐか、それと見分けやすいスライダーしか選択肢がない。外の良いとこにスライダーが決まるはずだったのに、完全に読んでやがった……!


「ボール!」


「よっしゃよっしゃ!よう見えとる!!」

「踏ん張れやギャル子ー!」


 ヤバイ……まだ塁に余裕はあるケド、そうなると次は満塁でリリィ。スイッチだから間違いなく右に入るし、アイツの対応力の高さを考えたら今以上にキツい。ケド、3-1のここから徳田を打ち取るのは……


「……タイム!」


 え……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ