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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第二章 背番号25
310/1166

第五十話 ぼんやりとした正解(3/7)

******視点:百々百合花(どどゆりか)******


「紅組、選手の交代をお知らせします。ピッチャー、雨田(あまた)に代わりまして、百々(どど)。ピッチャー、百々。背番号11」


「おっ、百々は紅組から出るんか」

「途中登板やけど一応エース争いみたいな形やな」


 背景はともかく、スコアは2-0、終盤まで締まった展開。氷室(ひむろ)くんと雨田(あまた)くんはさることながら、あの風刃(かざと)くんって子も大したものだわ。


「7回の裏、白組の攻撃。6番指名打者、イースター。背番号42」


 張り合いがあって良いじゃない……!


「センター!」


 ありゃま。


「おっ、助っ人勢にもようやく1本出たな」

「右Pは基本得意やしなイースター」


 ま、先頭打者なのは痛いけど、一発のある打者相手に逆球でシングルなら軽い事故ね。


「7番センター、秋崎(あきざき)。背番号45」

(よーし、せっかくだから猛打賞狙っちゃうよ!)


 今日の雨田くん相手に2-2の佳子(よしこ)ちゃん。確かに警戒すべき場面だけど……


「うっ……!?」

「ストライーク!」


 いなせない相手じゃない。


(カーブ……タイミングは外されたけど、次もまっすぐ狙いは曲げない!)

「ストライーク!」


 まっすぐ狙いが見え見え。スイング自体は去年より鋭くなってるけど、もっと場数を踏んで駆け引きを覚えられれば、ってとこね。


「ボール!」

(……よし、フォーク見極められた!)


 流石にこんなのには引っかからないか。もう結果を残してる余裕もあるんだろうけど、去年の今頃みたいなプレーの落ち着きのなさはかなり改善されてるわね。


「……ッ!」

「ストライク!バッターアウト!!」


「あ〜、おっぱいちゃんアカンかったか……」

「全部変化球やったな」

「さすエース。完全に子供扱いや」

「しゃーない。まだまだ勉強や」


 高卒2年目なんて今の時代じゃ投手でもなかなか結果を出せないもの。良いもの持ってるんだから、へこたれずにこれからも頑張ってね。


「アウト!」

「アウト!スリーアウトチェンジ!!」


「サクサク」

「コントロールええからほんま安心して見てられるわ」


 言っちゃ何だけど、白組の下位打線相手だしね。まっすぐの走りがイマイチなせいか、三振が上手く()れなかったのを反省しなきゃいけないくらいだわ。


「白組、選手の交代をお知らせします。ピッチャー、氷室に代わりまして、三波(みなみ)。ピッチャー、三波。背番号33」


水面(みなも)ちゃんダァァァァァ!!!」

「氷室と百々が出たんやからそらな」


「8回の表、赤組の攻撃。3番指名打者、オクスプリング。背番号54」


 うーん。調整登板とは言え、私と比べて相手の格が違うわねぇ。


「ストライク!バッターアウト!!」

(くそっ、入ってきたか……!)


 いつもの横滑りが大きいスライダーじゃなく、少しカット気味のスライダー。さすが水面さん。何年も結果を出せる投手ってのはこうやって自分の投球を常に少しずつでもずらせるものよね。


「4番レフト、金剛(こんごう)。背番号55」

(リリィや天野(あまの)十握(とつか)にばかりデカい顔はさせん……!)


 ……あ。


「うおおおおお!!!」

「入った!入った!!」

「やっぱ主砲はチッヒより金剛だよなぁ(テノヒラクルー)」


「ドンマイドンマイ!」

「ソロムランや!切り替えてけ!!」


 さっきのリリィちゃんの打席でもちょっと気になってたけど……


「アウト!」

「アウト!スリーアウトチェンジ!!」


「なんやかんやで4人で抑えたな」

「飛翔1つくらい、調整登板なんやから気にせんでええやろ」

「今年も三本柱は安泰やな(確信)」


 やっぱりね。少しだけど、スクリューのキレが弱い。この時期だからって言ってしまえばそれまでだけど……ま、水面さんなら修正できるわよね?




******視点:夏樹神楽(なつきかぐら)******


「紅組、選手の交代をお知らせします。ピッチャー、百々に代わりまして、夏樹(なつき)。ピッチャー、夏樹。背番号27」


「おっ、巫女ちゃんも投げるんか」

「去年一軍デビューもええ感じやったからな」


 ようやく出番か。3-0、戦力差を考えたら白組が健闘してる……というか、風刃が想像以上に良かったって感じだな。あっしも負けてられねぇ。


「8回の裏、白組の攻撃。1番サード、相模(さがみ)。背番号69」


 四巡目、お互い良い感じに打線もあったまってきたところ。それで1番から。ある意味ではチャンスだな。


「ボール!」


「ほう、いきなり141か」

「見た目そんな変わってへんけどな巫女ちゃん」


 雨田みたいに食べて身体を大きくしたりはしてない。中学くらいまではむしろ食べ過ぎで親にも怒られてたくらいなんだけど、高校入ってからはすっかり食が細くなっちまった。伸び悩んだのも多分そういうのも原因の一つなんだろうな。

 その代わり、有名なジムに通って投げ方と鍛え方を根本から見つめ直した。


「ストライーク!」

「ファール!」


「今度は143か」

「巫女ちゃん、マジ速くなってね?」


 おかげで必死こかなくても140のまっすぐがポンポン投げられるようになった……けど、前進したのは当然あっしだけじゃない。


(左右の違いは確かに俺にとっちゃデカいが、まっすぐ自体は雨田と比べりゃ大したことねぇ!)


 相模さんは元々絵に描いたような右投げ左打ちのリードオフヒッター。脚が速くて、逆方向に持っていってシングルなり内野安打なりを量産するのが得意で、サウスポーは苦手。

 だから試合前は内角まっすぐで仕留めるプランを立ててたけど、さっきの雨田との勝負を見てた限りでもちょいとヤバいかもな。佳子と同じで、振りが明らかに鋭くなってる。コンバートの件といい、この人なりに去年色々思うところがあったんだろうな。


「……スイング!」

「ボール!」


「よう見たよう見た!」


 審判の匙加減次第になっちまったけど、それでも外スラーブに釣られなかったか。

 なら……!


(ッ……!)

「ストライク!バッターアウト!!」


「よっしゃ!先頭切ったぞ!!」

「ナイピー神楽(かぐら)ちゃーん!!!」


 まっすぐの威力アップに合わせて重点的に磨いたフォーク。リリーフだと尚更不測の事態が起きないようにできるだけ三振を狙いたいからな。


「アウト!」

(くそが……!この私が左相手に……!!)


 左相手を想定して調整したけど、サクサクとアウト2つ目。昔散々味わった感覚だけど、まっすぐが速くなるとほんと組み立てが楽だわ。


「3番ライト、森本(もりもと)。背番号24」


 もちろん、だからと言って油断はしない。バリバリの一軍の人相手なんだからな。


「セカンド!……!?」


 あ、やべ。これは……


「おっ、落ちた落ちた!」

「まぁヒットはヒットや」


 ……ま、投手と打者の勝負なんてこんなもんだ。投げミスが逆に功を奏することもあれば、今みたいに確実に打ち取ったと思ったのに思わぬテキサスヒットになってしまうこともある。

 けど、よりによってここでかぁ……


「4番レフト、十握(とつか)。背番号34」


「でっかいの頼むで十握ー!」

「十握くーん!ホームランホームラン!!」


 今日明らかに一番厄介そうな打者に回っちまった。

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