表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第二章 背番号25
306/1152

第四十九話 伝説になんてさせやしない(8/9)

「1番センター、赤猫(あかねこ)。背番号53」


 さっきの(あい)ちゃんが1-2-3のホームゲッツーだから、今のランナーは三塁に相沢(あいざわ)さん、二塁にワタクシメ。つまり、マウンドにいる鋭利(えいり)ちゃんを後ろから見てる形になりますね。

 手前味噌となりますが、ワタクシメも脚には自信があります。ツーアウトのこの状況なら、是非ともシングルを打っていただきたいですねぇ。でゅふふ。


(今日はまだノーヒットだが、ここで赤猫さんか……とりあえずこれで入るか?)


 土生(はぶ)さんのサインに迷わず首を横に振る。投球テンポ自体は悪くないのですが、噛み合わないことが多いですね。良くも悪くも捕手のリード信仰の強い日本では高卒まもない子がこんなことしてるとアレコレ言う人も少なくないでしょうが、実際ここまで十分な結果が出てますからねぇ……!?


「ストライーク!」


「は、速ぇ!?」

「150出たぞ!!!」


 (しずか)さんの初球スイングが空振り……この局面で今日の最速……!?


「ファール!」


 149……ではありますが、高めまっすぐに力負け……


(一発のないバッターだからな。全力の高めまっすぐが遠慮なく使える)


 スピード自体は逢ちゃんと勝負してた時とそんなに変わりませんけど、キレが増してますね。高めに投げこんだ方が球が走る、ということですかね?


「……!!?」

「ストライク!バッターアウト!!」


「うおおおおお!!!」

「ここで三球三振かよ……」

風刃(かざと)くぅぅぅん!!!」


(やられた……!)


 技あり……ですねぇ。もう最速付近で頭打ちだと思われてたまっすぐで追い込み、温存してたチェンジアップで3球勝負。この場面でやっちゃいますか……


「スリーアウトチェンジ!!!」


「あー、ノーアウト満塁だったのになぁ……」

「レギュラー組がもらったチャンスで高卒ルーキー相手に……」

「ええ加減貧打何とかせぇよ……」


 まぁ嘆きたくなるのは当然ですけど、ここは鋭利ちゃんが上手かったということで……


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


「ストライク!バッターアウト!!スリーアウトチェンジ!!!」


「ア全三」

「まぁ白組下位打線やしな」

「おっぱいはようやっとる」


 5回裏も司記(しき)ちゃんは3奪三振の快投……ですが、佳子(よしこ)ちゃんは第二打席もシングルで出塁。この時期なのによく振れてますねぇ。ストレートの対応だけなら現状チームで一番良いかもしれません。


「6回の表、紅組の攻撃。2番セカンド、徳田(とくだ)。背番号36」


 さて、お互い先発の最終回ですね。


「ファール!」


「ねばねば」

「かおりんはこれがあるからなぁ」


(くっ……!)

「ファール!」


 決め球だったのであろうバックドアスライダーもカット。流石の鋭利ちゃんもそろそろ手詰まりですかねぇ?


「アウト!」

「ああっ、真ッ正面……」


 芯で捉えてましたけど、セカンド正面。火織(かおり)さんにとってはアンラッキーですねぇ。


(やべぇ……流石に三巡目にもなると簡単に合わせてくるなぁ……)

「3番指名打者、リリィ。背番号54」


 鋭利くんはここまで駆け引きと制球で巧く(かわ)してきましたが、やはり球威自体は圧倒的と言うほどではない。それゆえに火織さんや桐生(きりお)ちゃん、逢ちゃんといった選球眼があって対応力の高い打者に苦戦してましたが……


「あ、これは行ったな(確信)」

「入ったあああああ!!!!!」

「チーム第一号じゃあああああ!!!」


 速度・角度ともに文句なし。打った瞬間に確信したリリィさんはゆっくりと走り始め、打球は予想通りライトスタンドへ。やっぱりこの人も合わせてきましたねぇ。


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


「サード!」

「……アウトオオオオオ!!!」

「おっぱいミサイル決まったあああああ!!!」

「すっげ……」

「良い肩してんなほんま……」


 金剛(こんごう)さんがライト前で出て、千尋(ちひろ)さんが三振。桐生ちゃんがセンター前を打ったものの、サードを狙った金剛さんを佳子ちゃんがレーザービームで補殺。


「スリーアウトチェンジ!!!」


「うーん、結局おっぱいちゃんに助けられまくったなぁ」

「それでも高卒にしちゃようやっとったやろ」

「少なくとも去年のメガネよりは遥かにマシやな」


 確かに春先の打線と、佳子ちゃんの二度のファインプレーで最小失点に抑えられた部分がありますが、結果は6回2失点で6奪三振四球0、ワタクシメの芝居で死球1。先発として十分すぎる仕事ぶり。


「はぁ……」


 それでも鋭利ちゃんは不満げ。ほんとに伸び代のありそうな子ですね。いきなり白組先発に抜擢されたのも納得ですよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ