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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第二章 背番号25
303/1169

第四十九話 伝説になんてさせやしない(5/9)

******視点:雨田司記(あまたしき)******


 月出里(すだち)のおかげで一番の憂いは無くなった。ざまぁみろ。

 あとは結果を残して格の違いを思い知らせるのみ。打線の格差から言ってもケチがつくのは仕方ないけど、だからこそ、風刃(かざと)より不甲斐ない結果は残せない。


「3回の裏、白組の攻撃。7番センター、秋崎(あきざき)。背番号45」


 当然、たとえキミが相手でも、接待をするつもりはない。


「ストライーク!」


「151km/h……」

「やっぱ(はえ)ぇ……」


 秋崎にしては珍しく、初球から打ち気が感じられなかったな。正直、今日は変化球の制球にはあまり自信がないから、甘く入る変化球だけに絞ってるのだろうか?

 まぁ良いさ。どのみちやることは同じ。シンプルにストレート勝負……!


(きた……!)


 !!?


「おおっ!」

「レフト!」

「っしゃあ!白組も初安打や!」

「ナイバッチおっぱいちゃん!」


 レフト前クリーンヒット……


(元々ストレート打ちの方が得意だしね。わたしだって、スイングも駆け引きもずっと未熟なままじゃないよ……!)


 まいったね、1球目より甘めに入ったのを普通に捉えられた。1球目は様子見だったんだろうけど、150の球をタイミングだけ掴めれば打てるんなら苦労しない。オフに随分バットを振ってきたみたいだな。


 ・

 ・

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 ・

 ・

 ・


「アウト!スリーアウトチェンジ!!」

(くそっ、まだ上っ面かよ……!)


 シングルなら、後続の3人を抑えれば関係ない。あわよくばこっちがパーフェクトと思ってたけど、まぁ無失点なら同じさ。




******視点:徳田火織(とくだかおり)******


「4回の表、バニーズの攻撃。2番セカンド、徳田(とくだ)。背番号36」

「二巡目やぞー!」

「そろそろ打てやー!」


 プロ5年目にして初めての主力扱いでスタート……なんだけど、風刃(かざと)くんだっけ?いきなりえらい子が出てきたね。


「ボール!」

「ボール!」

「ストライーク!」

「ファール!」

「ファール!」

「ファール!」


 ま、それでも全く手も足も出ないってほどでもない。


(うーん、困った。決め球がなかなか決まらない)


「ファール!」

「よっしゃ!今度は外カーブ振ったで!」


 流石に二度も同じ手には引っかからないよ。


「……ボール!」

「フルカンフルカン!」

「見えてるでーかおりん!」


「頑張ってー風刃くーん!」

「パーフェクトは無理でも完封しちゃってー!」

徳田(あのクソブス)、まだ主力扱いかよ……」

「試合前も氷室(ひむろ)くんとイチャついてたしね……」


 ……あっくんほどじゃないにしても、いきなり人気者になっちゃったね。ほんと、他の女の子はすぐ顔でコロコロ鞍替えする。

 まぁアタシみたいに散々サボりまくって遠回りした奴を追い抜かすのは良いよ。でも、あっくんは追い抜かせない。散々チヤホヤされても真面目にここまでやってきて、ようやくエースの座を掴みかけてるんだから。


「!!!ライト!」

「おおっ!さすがかおりん!」

(くっそぉ、カットボール全然詰まってくれなかったな……)


 悪いけど、アタシは風刃くんの向かい風にしかならないよ。


「3番指名打者、オクスプリング。背番号54」

「続け続けー!」

「英国淑女、先制点頼むでー!」

(ノーアウトランナー一塁……普通に盗塁あるな)

(高卒と組んで徳田相手か……評価が落ちなければ良いが)


 監督からも青信号。リリィちゃん、サポートよろしくね。


「セーフ!」

「セーフ!」


 牽制は普通……


「ストライーク!」


 クイック割と早いなぁ……こりゃもうちょっとリード必要かな……!!?


「……セーフ!」

「惜っしい!」

「あぶね……」


 誘い込まれたかな?プロの初めての試合だってのに、ほんと心臓の強い子……

 だけど、余計に意地になっちゃうね。


「!!!走ったぞ!」

「ストライーク!」


 ……!!?


「セーフ!」

「ッ()……ッ!」

「あらぁ、ごめんなさいねぇ♪」


 間に合ったのは良いけど、(まり)さんはほんと……!


「タイム!……徳田、大丈夫か?」

「はい、大丈夫です……」

「チッ……」


 コーチが駆けつけてくれたけど、思いっきり強くタッチ……というか殴られただけだからね。

 千代里(ちより)さんと相模(さがみ)さんはマシになったのに、鞠さんと財前さんは相変わらず……


「セカン……いや、ライト!」

「くっ……!」

「落ちた!」


 リリィちゃんが拾い上げた低めのボール球はセカンドとライトの間へ。チャンス……!


「ナイバッチリリィさん!」

(やっぱ急造のフォークじゃこんなもんか……簡単に拾われちまった)

「4番レフト、金剛(こんごう)。背番号55」


 内野守ってると一番嫌なシチュエーション、ノーアウト一三塁。流石に歩かせることはないと思うけど……


(ッ……!しまった!!)

「アウト!」

「アウト!」

「セーフ!」


「あっちゃあ……抜けんかったか」

「まぁええ。不格好やけど一応先制や」


 センター前に抜けそうだったけど、セカンドが追いついてアウトカウント優先。まだ4回なら無難な選択だね。


「お疲れ様です、火織さん!」

「ありがと」


 (あい)ちゃんに出迎えられてベンチへ。せっかくならあっくんを……って言いたいとこだけど、今日のあっくんは白組(あっち)のリリーフだから仕方ない。


「アウト!スリーアウトチェンジ!!」

(うう……あのスライダー勘弁してよぉ……)


 千尋(ちひろ)さんはサードゴロ。まぁでも最低限の目的は達成。

 風刃くん。頑張るのは結構だけど、あっくんよりも楽はさせないからね。


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