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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第一章 フィノム
234/1162

第三十八話 再会(4/7)

2018ファーム バニーズ 3-0 ジェネラルズ

1回表 攻撃終了

「アウト!スリーアウトチェンジ!!」

「ええぞええぞ!サクサクや!」

「人気球団のボンボンどもに見せつけたれー!」


 九十九(つくも)くんも第一打席はセンターフライ。流石は常光(じょうこう)さん。雨田(あまた)くんに並ぶ二軍の主力投手。向こうは三凡でゲームは完全にバニーズ有利の状態。


「アウト!スリーアウトチェンジ!!」

「アウト!スリーアウトチェンジ!!」


 向こうの先発さんも制球が落ち着いて、2回はお互いに四凡。


「3回の表、バニーズの攻撃。5番サード、グレッグ。背番号56」


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


「ボール!フォアボール!!」


 ……え?


「よっしゃ!また満塁や!」

「次のバッター誰や!?」

「あっ(察し)」


「9番ショート、月出里(すだち)。背番号52」


 2打席連続で満塁とか、いつぶりだろ……?


「ま、まだワンナウトだから(震え声)」

「ちょうちょ!とりあえず余計なことせんでええで!」

「次に任せりゃええんや!」


 あたしって、つくづく信頼されてないな……

 ……ふざけやがって!!!


「うぉっ!!?」




「ファール!!!」


 くそッ……!タイミングが早かった……!!


「な、何だ今の打球……!?」

「クッソ速くなかったか……?」

「あんなん一軍でも見たことないぞ……」


 制球は良くなったけど、球威は変わってない。むしろストライクゾーンに集まってくれるのならそっちの方が当てられる……!


「ボール!」


 ……だからって、二度もそんなのに引っかかるわけねぇだろうが。


(外カーブに釣られてくれなかったか……いくら打撃成績が良くないって言っても、このスイングであの打球じゃ、事故なんていくらでも起こりうるぞ……)

(満塁だからボール球あんまり使えねぇのがキツイな……)


 バッテリーがどれだけ悩んだって、呼吸と拍子はもう見えてる。ちゃんとヒットになるかはともかく、次は確実に捉える……!


(くそッ!)


 いける……!




「アウトォォォォォ!!!」

「な……!?」

「と、捕ったァ!!!」

「セカン!」

「アウトォ!」


 ショートライナー……センター前抜けたと思ったのに、九十九(つくも)くんに捕られた……


「スリーアウトチェンジ!!!」


「芸術的打順調整」

「これで1点も入らんとか……(呆れ)」

「ちょうちょちゃん、ワイの嫁さんになろう(提案)」


 また……捉えたのに捕れる範囲……


 くそッ……くそッッ!くそッッッ!!

 何でなんだよ……?プロに入って、バッティングを一から習い直して、強い打球も打てるようになってきたのに、何でこうやって、捕れる範囲にばっかり飛ぶんだよ……!?何でピッチャーにぶつけるしかできないんだよ……!!?


「3回の裏、ジェネラルズの攻撃。8番キャッチャー、■■。背番号■■」


 ……次は……次こそは……!


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


「ストップストップ!」

「くそッ……!」


 ここまでスイスイ投げてた常光(じょうこう)さんだけど、ここにきて連打、ノーアウト一二塁。


「1番センター、■■。背番号■■」

(しかもここから上位打線……面倒な場面だぜ)




「……うげッ!!?」

「あっちゃ〜……」

「まーたやりおった……」


 常光さんの鋭いナックルカーブが大きく跳ねて、真壁(まかべ)さんが逸らして進塁。これでフォースアウトも狙えなくなった……


(……なめんなよ!)

「ストライク!バッターアウト!!」


「よっしゃ!ナイスや常光!!」

「流石は二軍のエースや!」


 流石だね、常光さん。一番三振が欲しいところで。あたしもあんなふうに……!


(だが、問題はこの次だ……)

「2番ライト、三木(みき)。背番号009」


 三木さん。背番号が示す通り育成選手だけど、現状リーグBの首位打者。今日の相手の中では九十九(つくも)くんに並ぶ強打者で、脚もある。


(まだワンナウト。第一打席は何とかいなせたが、最悪の場合は歩かせることも視野に入れねぇといけねぇかもな……)

「ファール!」

「ボール!」

「ストライーク!」


 よし、有利なカウント……


「!!!レフト……!」


 通さない……!


「よっしゃ!捕った!」

「さすがちょうちょや!」


 これであたしも良いところを……!!


「ホーム!……!!?」

「な……!?」


 しまった……!


「セーフ!!!」


「おいィ!?何で即バックホームやねん!!?」


 ワンナウト二三塁、捕球体制がそこまで良くなかったとは言え、強い打球……三塁ランナーがスタートを切ってなかったら、釘を刺してから一塁アウトを狙うところだった。スタート切ってても、その判断をするくらいはできたはずだった……

 あたしってば、こんな初歩的なミスを……


「パパ、今のってどうなるの?」

「ショートのフィルダースチョイスで誰もアウトにならずに満塁だよ」


 しかも……


「3番ショート、九十九(つくも)。背番号99」


 よりによって、あたし自身で九十九くんのお膳立てをしちゃうなんて……!

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