第三十八話 再会(4/7)
2018ファーム バニーズ 3-0 ジェネラルズ
1回表 攻撃終了
「アウト!スリーアウトチェンジ!!」
「ええぞええぞ!サクサクや!」
「人気球団のボンボンどもに見せつけたれー!」
九十九くんも第一打席はセンターフライ。流石は常光さん。雨田くんに並ぶ二軍の主力投手。向こうは三凡でゲームは完全にバニーズ有利の状態。
「アウト!スリーアウトチェンジ!!」
「アウト!スリーアウトチェンジ!!」
向こうの先発さんも制球が落ち着いて、2回はお互いに四凡。
「3回の表、バニーズの攻撃。5番サード、グレッグ。背番号56」
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「ボール!フォアボール!!」
……え?
「よっしゃ!また満塁や!」
「次のバッター誰や!?」
「あっ(察し)」
「9番ショート、月出里。背番号52」
2打席連続で満塁とか、いつぶりだろ……?
「ま、まだワンナウトだから(震え声)」
「ちょうちょ!とりあえず余計なことせんでええで!」
「次に任せりゃええんや!」
あたしって、つくづく信頼されてないな……
……ふざけやがって!!!
「うぉっ!!?」
「ファール!!!」
くそッ……!タイミングが早かった……!!
「な、何だ今の打球……!?」
「クッソ速くなかったか……?」
「あんなん一軍でも見たことないぞ……」
制球は良くなったけど、球威は変わってない。むしろストライクゾーンに集まってくれるのならそっちの方が当てられる……!
「ボール!」
……だからって、二度もそんなのに引っかかるわけねぇだろうが。
(外カーブに釣られてくれなかったか……いくら打撃成績が良くないって言っても、このスイングであの打球じゃ、事故なんていくらでも起こりうるぞ……)
(満塁だからボール球あんまり使えねぇのがキツイな……)
バッテリーがどれだけ悩んだって、呼吸と拍子はもう見えてる。ちゃんとヒットになるかはともかく、次は確実に捉える……!
(くそッ!)
いける……!
「アウトォォォォォ!!!」
「な……!?」
「と、捕ったァ!!!」
「セカン!」
「アウトォ!」
ショートライナー……センター前抜けたと思ったのに、九十九くんに捕られた……
「スリーアウトチェンジ!!!」
「芸術的打順調整」
「これで1点も入らんとか……(呆れ)」
「ちょうちょちゃん、ワイの嫁さんになろう(提案)」
また……捉えたのに捕れる範囲……
くそッ……くそッッ!くそッッッ!!
何でなんだよ……?プロに入って、バッティングを一から習い直して、強い打球も打てるようになってきたのに、何でこうやって、捕れる範囲にばっかり飛ぶんだよ……!?何でピッチャーにぶつけるしかできないんだよ……!!?
「3回の裏、ジェネラルズの攻撃。8番キャッチャー、■■。背番号■■」
……次は……次こそは……!
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「ストップストップ!」
「くそッ……!」
ここまでスイスイ投げてた常光さんだけど、ここにきて連打、ノーアウト一二塁。
「1番センター、■■。背番号■■」
(しかもここから上位打線……面倒な場面だぜ)
「……うげッ!!?」
「あっちゃ〜……」
「まーたやりおった……」
常光さんの鋭いナックルカーブが大きく跳ねて、真壁さんが逸らして進塁。これでフォースアウトも狙えなくなった……
(……なめんなよ!)
「ストライク!バッターアウト!!」
「よっしゃ!ナイスや常光!!」
「流石は二軍のエースや!」
流石だね、常光さん。一番三振が欲しいところで。あたしもあんなふうに……!
(だが、問題はこの次だ……)
「2番ライト、三木。背番号009」
三木さん。背番号が示す通り育成選手だけど、現状リーグBの首位打者。今日の相手の中では九十九くんに並ぶ強打者で、脚もある。
(まだワンナウト。第一打席は何とかいなせたが、最悪の場合は歩かせることも視野に入れねぇといけねぇかもな……)
「ファール!」
「ボール!」
「ストライーク!」
よし、有利なカウント……
「!!!レフト……!」
通さない……!
「よっしゃ!捕った!」
「さすがちょうちょや!」
これであたしも良いところを……!!
「ホーム!……!!?」
「な……!?」
しまった……!
「セーフ!!!」
「おいィ!?何で即バックホームやねん!!?」
ワンナウト二三塁、捕球体制がそこまで良くなかったとは言え、強い打球……三塁ランナーがスタートを切ってなかったら、釘を刺してから一塁アウトを狙うところだった。スタート切ってても、その判断をするくらいはできたはずだった……
あたしってば、こんな初歩的なミスを……
「パパ、今のってどうなるの?」
「ショートのフィルダースチョイスで誰もアウトにならずに満塁だよ」
しかも……
「3番ショート、九十九。背番号99」
よりによって、あたし自身で九十九くんのお膳立てをしちゃうなんて……!




