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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第一章 フィノム
233/1158

第三十八話 再会(3/7)

------------------------------------

2018ファーム バニーズvsジェネラルズ


○天王寺三条バニーズ

監督:旋頭真希(せどうまき)


[先発]

1中 ■■■■[右左]

2二 桜井鞠(さくらいまり)[右右]

3一 ■■■■[右左]

4指 財前明(ざいぜんあきら)[右右]

5三 グレッグ[右右]

6捕 真壁哲三(まかべてつぞう)[右右]

7右 ■■■■[左左]

8左 ■■■■[右右]

9遊 月出里逢(すだちあい)[右右]


投 常光千里(じょうこうせんり)[右右]



●帝都桐凰ジェネラルズ

監督:■■■■


[先発]

1中 ■■■■[右左]

2右 三木辰郎(みきたつろう)[右左]

3遊 九十九旭(つくもあさひ)[右左]

4左 ■■■■[右右]

5一 ■■■■[右左]

6指 ■■■■[右右]

7三 ■■■■[右左]

8捕 ■■■■[右右]

9二 ■■■■[右左]


投 ■■■■[右右]


------------------------------------


 ホーム側の守備練習が終わり、スタメンの発表も終わって、もうすぐ試合開始。

 ここの球場は観客席がスタンドの方にはなくて、外野の席もライトのファールゾーンの方のみ。だからベンチ近くに観客が集中してて、ちょっとした話し声も聞こえる。


「うーん、バニーズの選手なんて百々(どど)とか赤猫(あかねこ)とか氷室(ひむろ)くらいしか知らないのに、二軍だとマジで誰もわかんねぇなぁ……」

「あ、真壁(まかべ)いるじゃん。シャークスでクビになったと思ったらバニーズにいたんだな」

「言うて贔屓でも二軍の選手なんてわからんだろ。九十九(つくも)は流石にわかるけど」

「まぁ入場料は一軍よりだいぶ安いんだし、ビール飲みながらのんびり観ようや」


 二軍では入場料無料の球場もある。ここの入場料は席と日によりけりだけど、大体が有料。それでも席は十分埋まる。流石は人気球団。此花区の方でもジェネラルズ戦とそれ以外じゃ明らかにお客さんの数が違うからね。関東に住んでるパンサーズファン、関西に住んでるジェネラルズファンなんていくらでもいるんだし。

 バニーズなんて、関西の客層をパンサーズに取られすぎてるせいで、ファンの比率は相沢(あいざわ)さんとかの出身地の群馬が一番高いみたいな、嘘か本当かはっきりしない噂もあるくらいなんだよね。


「あ、でもあの頭にでかいちょうちょ付けてた子、あの子はガチで可愛いな」

「あー、確かオープン戦で妃房(きぼう)からスリーベース打った子だったっけ?」

「あったなそんなん。まぁ今も二軍なんだからそういうことなんだろ」

「そういや今日、妃房の登板日だな」


 ……あたしが可愛いのは当たり前なんだから、そろそろ実力も認められたいなぁ。


「プレイボール!」

「1回の表、バニーズの攻撃。1番センター、■■。背番号■■」


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


「よっしゃー!回れ回れー!!」

「セーフ!」

「ナイバッチ財前(ざいぜん)!!!」


 1番ヒット、2番バント、3番四球、4番のツーベースで1点先制。野球を長年やってると案外よく見るゲームの流れ。

 今のところバントも大事な役割のあたしがこう言うのも何だけど、こういう展開だと何かバントしたのがもったいなく感じてしまう。別にあたしは最近よく見る2番バント完全否定派とかじゃないんだけどね。単純に貧乏性だから、どうしても結果だけ見てそう考えちゃうだけ。

 大体いつも9番のあたしは、初回はひたすら相手投手を観察したり守備の準備とかしてるんだけど、もしかしたらいきなり出番あるかも?


「5番サード、グレッグ。背番号56」


 本来なら一軍戦力のグレッグ。春先に怪我で二軍落ちしてきて、最近よく二軍戦に出てるけど調子が上がらず、しかも代役のリリィさんが活躍してるから昇格のタイミングが掴めてない。まぁ元々野手陣で伊達(だて)さんの次に歳のいってる人だから、衰えとかもあるんだろうね。


「抜けた!」

「ええでええでグレッグ!その調子や!」


 でもここではシングルで追加点。よく貧打とか言われてるバニーズ打線が珍しく回りまくってる。


「6番キャッチャー、真壁(まかべ)。背番号23」

(せっかく防具付けたのにな……まぁ良い、こんな手間をかけた以上、結果は出さないとな)




「アウト!」

「十分十分!突っ込め!」

「セーフ!」

「よっしゃ!ナイス最低限!」


 珍しく真壁さんが打率を下げることなく打点。良い感じの飛距離の犠牲フライで、この回もう3点取っちゃった。

 冗談抜きであたしの番が来るかも……用意しとこう。


「ボール!フォアボール!」

「ヒット・バイ・ピッチ!」


「よーし満塁!まだまだ追加点いけるで!!」

「いや、次のバッター……」

「あっ(察し)」


「9番ショート、月出里(すだち)。背番号52」


 ……ほんとに回ってきちゃった。


「ボール!」


「ええでええで!押し出しでええんや!」

「欲張らずに地蔵かませばええんやで、ちょうちょちゃん!」


 まぁ普段ならそうするつもりだけど、流石に今日の試合はちゃんと打ちたい。でもあのピッチャー返しはナシで。向こうさっき死球出してたけど、明らかに立ち上がりで制球が整ってないだけだし、何よりも『魅せ』が大事な今回のカードであんなの絶対やれるわけがない。


(くそッ……!こんな顔だけ三流バッターにまで良いようにされてたまるか!!)


 外まっすぐ。これも外れる。


「ストライーク!」


 ……え?


「おいおい!どこ見とるんや!?」

「二軍でまでジェネパイアかよォ!!?」


 ま、まぁこんなことはなくはないよね、うん……


(試合のテンポのためと、打者の実績によるストライクゾーンのブレ……まぁ人間の判定ならではの事象ね)


「ボール!」

「ファール!」


 ツーツーとスリーワンじゃ大違い……だけど、幸いちゃんと当てられる。

 そりゃプロの投手なんだから高校時代までとは比べ物にならないけど、それでも今までの二軍戦でいくらでも見たタイプの右投手。140中盤くらいのまっすぐとスライダーとフォークが武器。なんてことはない。さっきみたいなジャッジも考慮して、自分の中のストライクゾーンを気持ちちょっと拡げれば良い。

 ……今日と明日は、何としても結果を残さなきゃいけない。オーナーのためにも、絶対に……!






「ストライク!バッターアウト!!」


 しまった……!


「おぃィ!?何振っとんねん!」

「流石にそれはボールやろ……」

「はいはい打順調整乙」


 外に逃げるカーブ……こんなのに手を出すなんて……くそッ!


「スリーアウトチェンジ!!!」


 ……でもまだ初回。挽回はいくらでもできる。できるはず……


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