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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第一章 フィノム
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第三十七話 筋書き通りなんやから(3/3)

「おい」

「は、はい!」

「今日軽く投げるから、付き合えや」


 サカり猿を捨てた次の日から練習再開。陰キャメガネと組んで軽くキャッチボールから。一応脚のこともあるし、次の登板日もまだ先やから、投げるのは調整程度。


「……なぁ」

「はい」

「お前は言ったこと、責任取れるんか?」

「……え?」

「『キャッチャーはピッチャーに理想を押し付けて実現させるのが仕事』」

「は、はい……!もちろんです!」

「『実現させる』ってのは、口を出すだけなんか?」

「そんなことはないです。練習はとことん付き合いますし、リードもキャッチングも、そのピッチャーの良さを殺さず生かしていきます!」

「……そうか」


 ま、口だけやないのは一昨日の試合で理解してる。


西科(にしな)

「……!?はい!」

「整理対象一歩手前のウチができることなんて知れてるやろけど、支配下に入れるまで色々面倒見たる。その代わり、ウチが練習したい時はどんな時でも絶対に付き合え」

「……!」

「ええか?」

「は、はい!よろしくお願いします!」


 月出里逢(すだちあい)、借りは絶対に返す。そのためなら、一からやり直しも上等や。お前に実力でやり返せるピッチャーになって、今度こそ顔も性格も財布も持ってる良い男を捕まえたるわ。




「それと」

「?」

「お前、もうちょっと身だしなみ整えーや。そんなんのままこれから先一軍の試合出るんか?」


 普段から良い男を見慣れてるせいか、清潔感のない男はどうしても生理的に受け付けん。

 西科(コイツ)はスタイルだけは悪くないし、体臭的に風呂はちゃんと入ってるっぽいから、赤点はギリギリ免れてるけど……瓶底メガネもボサボサ頭も無精髭もキャッチャーやから防具で隠せるだけまだマシやけど、バッテリーでの関わり合いは球の受け渡しだけやなく顔合わせて話すことも多いからな。


「す、すみません……!練習が忙しくてつい……支配下に入れたらどうにかしようとは思ってたんですが……」

「育成でも一応プロなんやから、ファンとも関わったりするやろ?」

「え、ええ……でも僕、髭とかすぐ伸びちゃうんで……」

「今日の夜、食堂でメシ一緒に食いながら打ち合わせするから、それまでに何とかせぇ。今日試合ないんやし時間あるやろ?一軍の試合本番やと思って、バシッと整えてこい」

「はい……」


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


「ふぁぁ……」


 いつもの練習の後の昼寝、ちょっと長すぎたな。もうとっくに食堂が賑わってるわ。


「ん?」


 と言うか、食堂にいる同僚連中が何やらざわついてる。特に女子の集まりが向こうのテーブル見ながら何かヒソヒソしてるけど……


「あ、西園寺さん!お疲れ様です!」

「……え゛?」


 そこにいたのは、見慣れない良い男。それもテレビで見るようなレベルの……やけど、選手個々に配ってる背番号入りのトレーニングウェアを着てて、その番号は「127」。

 ボサボサ頭はきちんと切り揃えて整髪料で整えてて、眉も太いままやけど手入れしてて、瓶底メガネで隠してた左右対称の大きな眼を露わにしてて、剃った髭の下には、ずっとニキビで悩んでたウチが妬ましくなるほどの白い玉肌。


西科(にしな)……やんな?」

「?ええ、そうですけど……」

「お前……『漫画みたいにベタ』や言われへんか?」

「???」


 ヤバイヤバイヤバイ……せっかくやる気出して彼氏振った直後にこれはアカンって。

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