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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第一章 フィノム
23/1132

第六話 あんな古臭い投手が(1/5)

◎2月4日 紅白戦メンバー表

※[投打]


●紅組

[先発]

1中 赤猫閑(あかねこしずか)[右左]

2遊 相沢涼(あいざわりょう)[右右]

3右 森本勝治[右左]

4左 金剛丁一(こんごうていいち)[左左]

5一 グレッグ[右右]

6指 イースター[右左]

7三 ■■■■[右右]

8二 ■■■■[右左]

9捕 真壁哲三(まかべてつぞう)[右右]

投 百々百合花(どどゆりか)[右右]


○白組

[先発]

1左 相模畔(さがみくろ)[右左]

2右 松村桐生(まつむらきりお)[左左]

3指 リリィ・オクスプリング[右両]

4一 天野千尋(あまのちひろ)[右右]

5三 財前明(ざいぜんあきら)[右右]

6捕 冬島幸貴(ふゆしまこうき)[右右]

7二 徳田火織(とくだかおり)[右左]

8遊 桜井鞠(さくらいまり)[右右]

9中 有川理世(ありかわりせ)[右左]

投 雨田司記(あまたしき)[右右]

[中継登板確定]

氷室篤斗(ひむろあつと)[右右]、早乙女千代里(さおとめちより)[左左]

[控え]

山口恵人(やまぐちけいと)[左左]、夏樹神楽(なつきかぐら)[左左]、伊達郁雄(だていくお)[右右]、

月出里逢(すだちあい)[右右]、秋崎佳子(あきざきよしこ)[右右]、……

******視点:柳道風(やなぎみちかぜ)******


 3回は両軍共に三者凡退。うーん、現代野球で下位打線が機能しないのは痛いのぉ。


有川(ありかわ)ァ!どこを振ってる!?もっと気合い入れろォ!!」


 またあの有川に入れこんどる小僧が騒いどるな。まぁ有川は守備走塁に関しては高卒3年目にして一流じゃが、打つ方はのぉ……高校時代は巧打者としても名を売ってたんじゃし、センスは十分だと思うのじゃが……


「4回の表、赤組の攻撃。1番センター赤猫(あかねこ)。背番号5」


 ま、と言っても……ここまではワシが思い描いたシナリオ通りじゃな。問題はここからじゃ。


(二巡目……ここからどう工夫していくか……)


 あの雷小僧を、正捕手候補くんはどうあやすかのぉ。


「ボール!」

「ストライク!」


 ここまでは今まで通り、ストレートでカウントを整えてきたか。


(げっ……!?)


 ここで今日初めてのチェンジアップか。


(やば……スイングが止まらない……!)


 当てただけのスイング。打球は三遊間方向やや深めのゴロ。


 褒められた内容ではないのう、赤猫以外なら。


(……!?間に合うか……!!?)


 ショートの桜井(さくらい)も守備は一軍レベル、ファーストの天野(あまの)も巨体を目一杯伸ばして送球を拾い上げた。しかし……


「セーフ!」

「さすが赤猫!超俊足!」

(あれで一塁余裕なのか……!?)


 紅組側の初ヒットは赤猫。盗塁王5回を実現した俊足は伊達ではないのう。


「2番ショート相沢(あいざわ)。背番号3」

(大方予想はしてたけど、この回はキツくなりそうやな……)


「ストライーク!」


 赤猫は様子見のためかスタートを切らんかったが、雨田にはとくに盗塁を警戒してる気配がないのう。ランナーがおらん時でも、クイックモーションの如くセットポジションから大きな予備動作もなく投じる、合理性重視の投球フォーム。どんな状況でもベストな投球を再現し続けるための工夫と考えられるが、裏を返せばランナーに対する警戒の優先度を最初から下げてるということでもある。


(投球をする上で余計なタスクや条件分岐を増やしたくないからね)

(まぁこの手のタイプはランナーがおってもオロオロせんからその辺のフォローはせんでもええんやけどなぁ……盗塁阻止はキャッチャーの責任って思われがちやし、実際記録上でもそうなるけど、実際は投手との共同作業やし、困ったもんや)


 赤猫のリードがさっきよりも少し大きくなっとる。バッターへの負担を考えて浅いカウントで走るタイプやし、仕掛ける気やな。


「ボール!」


 高めに外れたストレート。最初から冬島(ふゆしま)は立ってたし、これは見え見え。当然、赤猫はスタートなど切らない。


 が……


「うぇっ!?」


 冬島は雨田に返球せず、ファーストへ送球。慌てて赤猫は帰塁。


「セーフ!」

(危ない危ない……良い肩してるわね、あのルーキーくん。でもそれ以上に……)


 成る程な、最初からこれが狙いじゃったか。牽制に注力しない投手を抱えた状態で釘を刺すにはこれしかないのう。紅白戦とはいえ、プロの初実戦だというのに賢しい小僧じゃ。


(刺せなくてもええ。最悪盗塁決められてもランナーが増えるわけでもないし、走りづらくなりゃそれで十分や)

(強肩自慢は良いから早く返球してもらえないかな……投球テンポが乱れるとイライラするんだけど)


 雷小僧、明らかに苛ついとるなぁ。まだまだ青い。


(ま、ぶっちゃけ走れなくても全然問題ないんだけどね)


 相沢の打球は一二塁間方向へのセカンドゴロ。打った相沢はアウトだが、赤猫は二塁へ。


「3番ライト森本(もりもと)。背番号24」


 一打先制の場面で去年のチーム首位打者の森本。パワーは物足りんが脚もある左の巧打者。


「速ッ!?」

「ストライーク!」


 ここまで速球は基本的に平均145km/hくらいで、フィニッシュの時だけ150中盤くらいを出していたが、この打席では初球から151km/h。やはりギアを上げてきたか。


「ファール!」


 2球目も高め152km/hストレート。まだ多少球威に圧されておるが、合わせられてはおるのう。


(ストレートには大体アジャストできるようになったのはコイツらも見抜けてるだろう。1球変化球見せてくるかな?)


 3球目は外ボールゾーンを辿る半速球……


(ん、やっぱ見せてきたか……)


 と見せかけてバックドアスライダー。


「チッ!」


 慌てて森本はスイング。空振りはしながったが、打球はサード方向フェアゾーンを走るゴロ。


「サード!」


 してやったりと言わんばかりに冬島はサードに処理を任せるが……


「ファッ!?」


 サード財前(ざいぜん)がファンブル。処理が間に合わず、俊足の森本は一塁セーフ。サード方向のゴロだったから赤猫は二塁に張り付いたままじゃが……


「いやぁ、すまんすまんw」


 財前は悪びれもせず形だけの謝罪。相変わらず軽薄な男じゃのう。バッテリーも明らかに不機嫌。特に雷小僧は親の仇かと思わんばかりに財前を睨んどるな。まぁ財前は態度はともかく、根本的に守備難をどうにかしてくれんと使いづらくてかなわん。


 さぁて、過程はともかく最初の山場じゃのう。


「4番レフト金剛(こんごう)。背番号55」

「金剛キター!」

「でかいの一発かましたれー!」


 ワンナウト一二塁で、去年31本塁打の主砲・金剛。さぁ、どうするかのう?

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