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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第一章 フィノム
217/1164

第三十五話 卑怯なんてない(5/8)

2018ファーム バニーズ 0-1 ビリオンズ

1回表 2アウトランナーなし


○天王寺三条バニーズ

監督:旋頭真希(せどうまき)


[先発]

1左 ■■■■[右左]

2遊 桜井鞠(さくらいまり)[右右]

3一 ■■■■[右左]

4指 財前明(ざいぜんあきら)[右右]

5捕 真壁哲三(まかべてつぞう)[右右]

6中 秋崎佳子(あきざきよしこ)[右右]

7二 ■■■■[右右]

8右 ■■■■[左左]

9三 月出里逢(すだちあい)[右右]


投 雨田司記(あまたしき)[右右]



●大宮桜幕ビリオンズ

監督:■■■■


[先発]

1左 招福金八(しょうふくきんぱち)[右両]

2二 ■■■■[右右]

3中 ■■■■[右左]

4一 ■■■■[右右]

5右 ■■■■[右右]

6指 ■■■■[右左]

7三 ■■■■[右右]

8遊 ■■■■[右右]

9捕 西科京介(にしなきょうすけ)[右右]


投 西園寺雲雀(さいおんじひばり)[右右]

******視点:旋頭真希(せどうまき)******


 さすが雨田(あまた)ね。マイペースは時に投手として欠点にもなり得るけど、基本は美点。元々セットポジションからの投球なのもあって、ランナーが溜まってても球質が落ちにくいし、一発を打たれた後もすぐに気持ちを切り替えられる。

 正直、投球スタイル的には紅白戦の時みたいにリリーフの方が適性が高いと思うけど、回の終わりまでちゃんと投げ切れて継投の計算がしやすいという点では先発としても魅力的と言える。


「ストライク!バッターアウト!スリーアウトチェンジ!」

「はぇぇ!」

「152……今日も走ってるなぁ……」

「ナイピー!」

「サンキュー!」


 いきなりソロムランを浴びたのはむしろ好都合かもしれないわね。程よく危機感が持てただろうし、何より球もしっかり走ってる。おそらく今日の試合はしばらくサクサクと進行するでしょうね。


 ・

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 ・

 ・

 ・

 ・


「2回の裏、バニーズの攻撃。4番指名打者、財前(ざいぜん)。背番号46」

(今日は西園寺(さいおんじ)か……めんどくせぇのがきやがったな……)


 予想的中。1回裏、2回表はどちらも三凡。雨田も、そして向こうの西園寺。世代は違えど、共に将来を嘱望される高卒ドラ1右腕。さすがと言ったところね。

 だけど両者は現状、投手としてのタイプが大きく異なってる。


「ファール!」

「タイム!」


 内角を引っ張り込みすぎて、ファールゾーンに持っていってしまった上にバットも折られた。

 西園寺も高校時代はまっすぐと縦スラを軸に三振を奪う王道のスタイルだったけど、プロに入ってからは今みたいなシュートとカット気味のスライダー……つまり横の変化を軸にしてカウントを稼ぎつつ凡打を誘うクレバーなスタイルに変わった。その関係で腕の振りもオーバーに近いスリークォーターからサイドに近いスリークォーターに変わってる。


「アウト!」

「アウト!」


 高校時代の最速は149、プロでは148、5年目の今なお根本的な球威は据え置きだけど、こういう工夫を軽くやってのけるセンスを持ち合わせてるのは嚆矢園優勝投手の面目躍如ってとこね。色々言われてる投手だけど、素の実力は二軍のスターターくらいは余裕でこなせるくらいはある。


「6番センター、秋崎(あきざき)。背番号45」


「おっ、今日おっぱいちゃん6番なんやな」

「いつも8番やんな?」

「まぁ最近打っとるからな。もっと上でもええくらいやと思うで」

佳子(よしこ)ー!ガツンと打ってやれー!!」


(最近当たってる打者です。警戒していきましょう)

(わかってるって、そんなん)


 秋崎については本当に打順に迷うのよね。調子が良いし脚もあるから1番から3番に置くか、長打力と積極打法を見て4番以降に置くか。とりあえずは今後も評価を上げる余地を残すために今日は6番ってことにしたけど……!?


「っしゃああああああああ!!!」

「届けえええええ!!!」


 真ん中外寄りに浮いたスライダーを強引に引っ張り、打球は勢い良くレフトスタンドへ。


「秋崎選手、今シーズン第三号のホームランとなります」

「いやったあああああ!!!!!」

「これはおっぱいプルプルヒッターですわ(恍惚)」

「将来のセンター、決まる(確信)」


 ここまでの3本全部レフト方向だけど、どれも二軍球場特有の狭さに助けられたものではない文句なしの当たり。まだプロとしては身体が完全に出来上がってないのに、大したパンチ力だわ。


「佳子ちゃん、ナイバッチ!」

「ほんと最近当たってるな!」

「秋崎、よく取り返してくれたね。感謝する」

「えへへ……ありがと」


 同期の高卒組に祝福されながら、秋崎はベンチに帰ってきた。よっぽど嬉しかったのか、ベンチに座ってヘルメットを取らずバットは握らずで、軽くスイングをしながら余韻に浸ってる。


「……ふぅ〜〜〜〜ん」


 だけど……


「秋崎」

「あ、はい!」

「良いバッティングだったわ」

「あ……ありがとうございます!」

「だけどまだ試合は終わってないわ。色々気を引き締めておきなさい」

「……?は、はい!すみません!」


 こういう展開は、最近の秋崎の調子から言っても多少は想定してた。むしろこういう展開を望んでた。どのみち今後のために乗り越えなきゃいけないことだけど、そう望んだ罪悪感みたいなのもあるから、普段はしない試合中の労いと、さりげない助言。

 本当に気をつけるのよ。今日は特にね。


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