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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第一章 フィノム
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第三十五話 卑怯なんてない(2/8)

******視点:西園寺雲雀(さいおんじひばり)******


「ありがとねぇ、みっくぅん♪」

「ひばりんのためならお安い御用だよ」


 テレビにも出てるようなモデルのカレとか色んなイケメンくん達に可愛がってもらって、テッカテカの外車で寮まで送迎。高校まで汗水血反吐垂らして上級国民に成り上がった甲斐があったってもんやね。ほんま野球大国万々歳やわ。

 ……このクルマがウチの契約金やなくて、カレが自分で買ったもんやったらもっとええんやけどね。


「ひばりん、明日登板なんだよね?結構飲んでたけど大丈夫?」

「だぁいじょうぶやって、ウチなら楽勝楽勝♪」

「明日は仕事で応援に行けないけど、頑張ってね」

「ありがとぉ♪もし良いピッチングできたらぁ、またいーっぱいしてくれる?」

「もちろんだよ、ひばりん。次の登板日まで立てなくなるくらいにね」

「も〜、みっくんってば可愛い顔してケダモノやねぇ♪」

「ところでひばりん。実は今度また別の現場で撮影があってさ、新しいアクセが欲しいんだけど……」

「良いよ良いよぉ、そのくらいウチが用意したるってぇ♪」

「ありがとう、ひばりん。さすがはビリオンズの将来のエースだね」

「気にせんでええんやでぇ。ちゃんとしたもん着けて、もっとお仕事もらわんとアカンやろ?みっくんもお仕事がんばるんやでぇ♪」

「うん。愛してるよ、ひばりん」


 この後も運転するカレに酒気を伝染(うつ)しかねへんくらい、口内の粘膜を(ねぶ)って別れを惜しむ。


「遅いぞ、西園寺(さいおんじ)

「すみませぇん♪」


 やかましいわ。寮の門限律儀に守ってるのなんて、よっぽど真面目か首が涼しい奴だけやろ。


「……■■監督からの伝言。『明日の朝イチ、監督室まで来るように』とのことだ」

「はぁい……」


 めんどくさ。二軍監督のくせに、いっちょまえに説教でもするん?


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「西園寺。今日の登板だが、西科(にしな)に受けてもらう」

「へ……?」


 誰やっけ、そいつ?


「……育成ドラ1ルーキーの西科京介(にしなきょうすけ)だ」

「ああ……」


 やっと思い出したわ。おったなそんなん。大卒のくせに育成で可哀想な、あの地味男(じみお)くん。


「まぁ同い年ではあるが、プロとしてはお前の方が先輩だからな。面倒を見てやってくれ」

「はぁ……」


 そういや今年の大卒って、滑ったりしてへんかったらウチと同い年やな。どうでもええけど。


「……ところで西園寺、大神小次郎(おおがみこじろう)は知ってるか?」

「えっと……今高2の子で、この前154km/hとか投げたんでしたっけ?」

「そうだ。全く最近は若い層の球速向上が著しい。投げる方だけなら幾重光忠(いくえみつただ)レベルの人材も珍しくなくなるかもしれんな」

「そうですね……」

「それと、今一軍が何位か知ってるか?」

「えっと……何位でしたっけ?」

「……首位だ。つまり、今は優勝争いの真っ只中。ウチの野手陣は走攻守全てが高水準で、あのヴァルチャーズにすら追随を許さん。年齢的にもしばらくはその辺で困ることはないだろう……だがその反面、どうしても投手が質量共に足りん」

「…………」

「今日の登板はお前にとって窮地ではあるが、好機でもある。選手に最も求められるのはチームの勝利に貢献すること。実力はあくまでその手段の1つ。チームが好調であればあるほど、立場に甘えられんということは忘れんようにな」

「……はい」


 くそったれが。遠巻きな匂わせしやがって。


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