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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第一章 フィノム
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第三十四話 あたしはあの人の言葉を嘘になんかさせないから(3/4)

 7月12日。フレッシュオールスターの日。

 雨田(あまた)くんと神楽(かぐら)ちゃんと佳子(よしこ)ちゃんの3人が今年のウチの代表メンバーとして選出されて青森行き。あたしだけ大阪でお留守番。

 一軍のオールスターの選出方法はファンの投票がメインだけど、二軍の方はそれぞれの球団の偉い人達同士で話し合って、各球団2人か3人ずつ出すものらしい。

 雨田くんはドラ1だし、二軍でもう何試合か出て結果も出してるから選ばれるのは当然。あたし達の世代はどっちかと言うと野手の方が層が厚いって言われてるから、神楽ちゃんがその補完役として選ばれるのも納得。そして佳子ちゃんも最近好調だからね。それに、同じリーグBにはジェネラルズもいるから、ショートを用立てしたいのならわざわざウチから出さなくても、九十九(つくも)くんを出せば済む話。

 練習に集中できて良いって強がるしかないかな、なんて思いながら、室内練習場で動画を流しながらウォーミングアップ。せっかく確実に試合のない日が続くんだから、この機会にちょっと激しめに身体を動かしたい。


「2回の表、リーグAの攻撃。4番ファースト、猪戸(ししど)。背番号55」

「さぁ2回の表も引き続き、バニーズのルーキー、雨田司記(あまたしき)がマウンドに立ちます。打席に向かうのはペンギンズのルーキー、今日4番ファーストで起用の猪戸士道(ししどしどう)です!」


 地毛じゃないんだろうけど、幕末の官軍の武士が被ってたようなボリュームのある赤い長髪、顔には歌舞伎みたいな化粧という威圧的な装飾。それでいてあの縦も横も一際大きい、一目でスラッガーとわかる風貌の大男が左打席に立つ。やっぱり猪戸(ししど)くんが向こうの4番……

 今年の高卒ルーキーの中で、ドラフトの時点でスラッガーとして一番評価されてたのは、エペタムズに入った白雪譲治(しらゆきじょうじ)くん。実際その評価に(たが)わず、二軍でいきなり暴れて、一軍でもプロ初本塁打をもう放って華々しくデビュー済。今日の試合も向こうの3番で出てる。

 だけど、まだ一軍には上がれてないけど、その白雪くんと同じくらい向こうのリーグで暴れてるのがあの猪戸士道(ししどしどう)くん。先月だけで3割6本塁打。テレビは高校時代の実績もあって白雪くん推しだけど、ネットじゃ猪戸くんがよりプロスペクトとして注目されてる。今日の打順を見る限りでも、向こうの評価もそういうことなのかもしれない。


(猪戸と勝負するのは中学以来か……)

(無名校に進んで惜しんだもんやばってん、強者(もっこす)に育ったようばい)

「福岡出身の雨田、熊本出身の猪戸。九州出身同士の対決、制するのはどちらか!?」

「ストラーイク!」

「1球目まっすぐ空振り!153km/h!!」


 気合が入ってるね、雨田くん。


(……振りがえげつないな。二軍の環境に慣れすぎたからと思いたいが……)

「ボール!」

「ストライーク!」


 今日はまっすぐだけじゃなくて縦スラもキレてるね。あんな強引な振りじゃ打たれないと思うけど……


(なるほど、こら手強か)

(むっ……!?)

「打った!レフトの前に落ちます!リーグA、初ヒットはペンギンズの猪戸です!」


 さすがホームランだけじゃなくて打率も3割超えてるだけある。縦スラを呼び込んで無理せず逆方向に持っていった。


(昔は力任せに振り回してるだけだったのに、小回りがきくようになったな……)

「!!!」

「一塁ランナースタート!」

「セーフ!!」

「セーフ!セーフ!猪戸、なんと走ってきました!」


 あんなゴツい身体で脚も使えるなんてね。嫌だなぁ全く。勝たなきゃいけない相手が多くて……


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