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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第一章 フィノム
196/1130

第三十二話 もう一度キミと(2/4)

2018ファーム バニーズvsシャークス


○天王寺三条バニーズ

監督:旋頭真希(せどうまき)


[先発]

1三 ■■■■[右右]

2遊 桜井鞠(さくらいまり)[右右]

3右 松村桐生(まつむらきりお)[左左]

4一 財前明(ざいぜんあきら)[右右]

5指 ■■■■[右右]

6捕 土生和真(はぶかずま)[右右]

7左 ■■■■[右左]

8中 秋崎佳子(あきざきよしこ)[右右]

9二 月出里逢(すだちあい)[右右]


投 常光千里(じょうこうせんり)[右右]



●横須賀EEGgシャークス

監督:■■■■


[先発]

1二 ■■■■[右左]

2左 ■■■■[右左]

3三 ■■■■[右右]

4中 頬紅観星(ほおべにみほし)[右右]

5右 スモーキー・ハンマー[右右]

6指 ■■■■[右左]

7一 ■■■■[右右]

8遊 ■■■■[右右]

9捕 ■■■■[右右]


投 妃房蜜溜(きぼうみつる)[左左]

******視点:旋頭真希(せどうまき)******


「1回の表、シャークスの攻撃。1番セカンド、■■。背番号■■」

「プレイ!」


 今回のウチ主催のシャークス戦は、金曜なしの土日のみ。まぁ二軍じゃよくあること。一軍と違って年間きっちり何試合やれってのもないしね。

 今日の先発は常光(じょうこう)松村(まつむら)と同じ高卒2年目。ドラ6ではあるけど、氷室(ひむろ)早乙女(さおとめ)が一軍へ昇格した現在では、二軍の主戦投手の1人。


「ボール!」

「ファール!」

「ファール!」


 右投げで、レトロなワインドアップスタイル。球は150にギリ届かないくらいだけど、松村と同じ190cmに届く身長の持ち主で、素材としては一級品。去年の段階でも登板数こそ少なかったけど、防御率4点台で試合を破綻させない程度の実力は発揮してた。かつての氷室と同じで、全体的に一軍でやるには力量不足ではあるけど、プロとして致命的な欠点はないという感じね。


「ストライク!バッターアウト!」

「よっしゃ!ナイスカーブや常光!」


 常光がドラフト下位指名だったのは、長身で高校時代にそれなりの実績はあるものの、持ち球にこれといった個性がなかったのが大きい。それでも去年の段階である程度結果を出せたのは、プロ入り後に身に付けたあのナックルカーブがハマったから。


「アウト!」

「思ったよりサクサクやなぁ」

「向こうさん、割と素直に早打ちしてくれるからなぁ」


 加えて、元々一番の売りだったカットボール。フォームは古き良き時代のそれなのに、球種は妙に現代的。課題はまだまだ残ってるけど、今の段階でも二軍の試合を回せるだけの力は十分ある。


「センター!」

(この打球なら、多分この辺……!)

「アウト!スリーアウトチェンジ!」

「おっぱいちゃん、だいぶ安心して見れるようになってきたな」

「まぁ日本でピッチャーやる奴って大体センスの塊やからな」

「良い揺れだぁ……(恍惚)」


 バニーズは昔から外野の育成には定評がある。あのマイペース野郎……樹神(こだま)なんかが良い例。もちろん、これだけ早く実戦に耐える程度のプレーができるようになったのは、秋崎(あきざき)自身の努力と才能に依るところが大きいけどね。




******視点:妃房蜜溜(きぼうみつる)******


「1回の裏、バニーズの攻撃。1番サード、■■。背番号■■」


 遂に待ちに待ったこの時。向こうの9番スタメンに月出里逢(すだちあい)の名前。これだけで大阪に来た甲斐があった。


 極端な話、アタシは一軍とか二軍とか、もっと言えばメジャーとか、環境そのもののブランド価値には興味がない。興味があるのは、そのブランド価値を生み出す良い打者。そんな打者がいっぱいいる環境で投げたいってこと、そしてできればそんな打者に勝ちたいってことがアタシの願い。他の人達と違って愛されることしか許されなかったアタシのなけなしのわがまま。

 だから、戦えただけで満足したつもりでも、そうじゃなかった。一軍で億単位のお金を稼ぐ打者達との勝負。本当なら心が燃えるはずなのに、目の前の勝負に集中することさえできない。打席に立ってるのが同じ美少女であろうがゴツいおじさんであろうが、いつもあの子の、月出里逢の顔がチラついてしまう。


「ストライク!バッターアウト!」

「あれ?蜜溜(みつる)ちゃんが立ち上がりでいきなり三振奪るなんて珍しいんだ……」


 周りの人達が怒るのは当然。アタシだって本当ならそんな、打者に対して失礼な真似はしたくない。二軍に落ちたのも、周りの人達の思惑と同じく、アタシの戒めのためであるとアタシ自身も認識してる。だから、そのついでであの子との再戦を密かに願ったことに罪悪感はある。

 でも言い訳をするなら、周りの人達が最後に求めるのは『結果』。今日の勝負で、勝敗はともかく、気持ちは切り替えたい。別に『月出里逢が世界で一番の打者だ』って、アタシの中でさえ確定したわけじゃないんだし。


「2番ショート、桜井(さくらい)。背番号39」

(フン……前のオープン戦の時は(くろ)が打ちあぐねてたけど、相変わらず立ち上がりは凡ピッチャーみたいね)


 打順が一番最後のあの子とできるだけ多く勝負するためにも、程良く打順が巡るくらいならともかく、途中で降ろされるのは絶対に避けないとね。


「ファール!」

「ファール!」

(また差し込まれた……!?クソッ、思ったよりも球が来てるじゃないのよコレ……!)


 いつもは調子が乗るまで右相手にチェンジアップがあんまり通じなくて悩むとこなんだけど、今日のこのまっすぐならそもそも投げなくてもいけるかな?


(なめんじゃねぇぞ、デカブス……!)

「センター!」

「アウト!」

「チッ……!」

(ふぅ〜〜……ちょっとヒヤヒヤしたぁ……)

「ナイスキャッチなんだ頬紅(ほおべに)ちゃん!」

「おっぱいの大きさ以外は向こうのセンターに負けてないんだ!」

(向こうの頬紅さんもわたしと同じで、高卒ルーキーの元ピッチャーなんだよね……しかも今日は4番……うーん、負けられないなぁ)


 外野フライが凡打になるかヒットになるかは統計上、運次第でしかない。そういう意味では観星(みほし)に助けられたかな?

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