第四話 今日は可愛い後輩としてお行儀良く過ごさなきゃね(4/4)
◎2月4日 紅白戦メンバー表
※[投打]
●紅組
[先発]
1中 赤猫閑[右左]
2遊 相沢涼[右右]
3右 ■■■■[右左]
4左 金剛丁一[左左]
5一 ■■■■[右右]
6指 ■■■■[右左]
7三 ■■■■[右右]
8二 ■■■■[右左]
9捕 真壁哲三[右右]
投 百々百合花[右右]
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○白組
[先発]
1左 相模畔[右左]
2右 松村桐生[左左]
3指 リリィ・オクスプリング[右両]
4一 天野千尋[右右]
5三 財前明[右右]
6捕 冬島幸貴[右右]
7二 徳田火織[右左]
8遊 桜井鞠[右右]
9中 有川理世[右左]
投 雨田司記[右右]
[中継登板確定]
氷室篤斗[右右]、早乙女千代里[左左]
[控え]
山口恵人[左左]、夏樹神楽[左左]、伊達郁雄[右右]、
月出里逢[右右]、秋崎佳子[右右]、……
******視点:月出里逢******
「どうやった?」
白組側ベンチに戻るリリィさんに、守備に入る冬島さんがすれ違いざまに尋ねた。
「話に聞いてた通り……っていうかそれ以上やな。百々(どど)さんはれっきとした速球派投手や」
速球派……?あの球速で……?
「あ、あの、リリィさん。それって一体……」
白組側ベンチに残るのは、指名打者のリリィさんと、ベンチメンバーのあたしや佳子ちゃん達。
「変に思ったやろ?140km/mそこそこの球に押されっぱなしで。でもな、ほんまに速かったんやで。ウチの体感では150くらいには感じたわ」
「だろうね」
会話に入ってきたのは、同じベンチメンバーの伊達さん。色々あって去年ほとんど一軍にいなかったから今日は白組にいるのかもしれないけど、元々はバニーズで長年正捕手を務めてきた人。本体なら一軍レギュラー中心の紅組にいなきゃいけないような人。
「百々くんは球速……つまり球の運動速度は確かに他の投手と比べてあまり速くないのは事実だけど、その代わりリリースポイントからキャッチャーミットまでの距離が他の投手と比べて短いんだよ」
「?それって何か関係があるんですか?」
「例えば50km/hで走る車が100km先の目的地に向かうのと、100km/hで走る車が300km先の目的地に向かうのとじゃ、どっちの方が早く目的地に着くかな?」
あー、やだやだ。急に勉強の話持ち出さないでくれるかなぁ……そこまで苦手ってわけじゃないけど嫌いなのになぁ。佳子ちゃんもどうやらその理由はともかく勉強嫌いなのは同じみたいで、急にすごい顔でフリーズした。
「……50kmの方やな。なるほど、そういうことなんか」
「そう。雨田くんが『速度』に長けた速球派だとしたら、百々くんは『距離』に長けた速球派。長身の上に柔軟な身体で投球のリリースポイントをよりキャッチャーに近づけられて、おまけにストレートの球質もシュート成分が少なめでホップ成分が強い。つまりよりストレートに近いストレートを投げられるから、無駄な軌道が少なくなる分でも距離を縮められる」
「確かに今まで対戦したピッチャーと比べて妙に球が遅れて出てくる感じがしたわ。そこからビュンッとキレッキレのまっすぐがくるから打ちづらくてかなわんかった」
結局のところ、百々さんのストレートは速く感じるらしい。
「あのストレートに加えて、得意のカーブとチェンジアップ、さらには内外自在に投げ分けられるシュートなんかもあって、制球力抜群。僕としても捕ってて楽しいし、どこの球団に出しても恥ずかしくないレベルの好投手だよ、百々くんは」




