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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第一章 フィノム
172/1130

第二十八話 天敵(1/8)

******視点:夏樹神楽(なつきかぐら)******


「〜〜〜〜♪」


 珍しく(あい)が上機嫌。千葉にある日本で一番有名なテーマパークの曲を鼻歌で演奏しながら整理体操。普段からこれくらいニコニコしてりゃ、もっとファンにウケるだろうに。

 と言っても、ここはいつもの大阪府大阪市此花区にある二軍球場。本日、2018年4月10日。この日、あっし達高卒ルーキー組4人は全員、二軍戦に出場することになってる。練習時間を確保するのと移動費の節約のために、今後もしばらく試合はホーム開催のゲームのみ出ることになるらしいけど。


 球界ではここ最近、ビジネスモデルの旧態化の打破と球界全体のレベルアップを目的に、いくつかの試みがなされてる。元々東日本と西日本で二軍のリーグ分けをしてたのを年ごとのシャッフル制にしたのもその一環。リーグ名は毎年所属が変わることを想定して単純にA・B分けで、あっし達バニーズはリーグB。同じリーグBには、一軍でも同じリプのアルバトロスとビリオンズ、そしてリコのシャークスとジェネラルズとスティングレイが所属してる。

 まぁ他の選手から言えばいろんな相手と対戦できて良い経験になるんだろうけど、あっしみたいに特定の相手を対策するタイプからしたら、仮想敵が多すぎて結構困るんだけどな……まぁどのみち素の実力も磨かねぇと上を目指せないのはわかってるから良いんだけどな。今日の登板はリリーフで1回みたいだから、相手打線の傾向を調べてある程度共通してる弱点を突けるように対策はしてきた。


 今日の相手は逢の選曲が示すように、千葉を本拠地とする美浜(みはま)ブッフアルバトロス。食品関係の大手であるブッフ・コンツェルンを運営母体とする球団で、元々球団自体は2リーグ制の導入の際にリプ側の盟主となる予定だったくらい重要な立ち位置にいたけど、リプ全体も球団自体も経営がうまくいかず、今の経営元に移って、昔のリプの例に漏れず不人気球団の一角として落ち着いた。

 と言っても今はリプ全体の活性化もあって、少なくとも地元からは支持されてるし、そのリプ興隆期ちょうどに強かったのもプラスに働いたっぽい。日本一やリーグ優勝の回数から言っても決して弱い球団じゃない。ただ、傾向で言えばスモールベースボール寄りのスタイルで、常に長打力不足で困ってる印象がある。去年のドラフトでもアイツを指名してたしな。その点ではバニーズとよく似てると言える。

 あと、最近はどうも大規模な球団改革をやったみたいで、今年から監督が代わったり、ヴァルチャーズから大量に人材を引き抜いたり、DX化を推進したり、今になってリプの覇権を取り戻さんとしてるとか、そんな噂も立ってる。


「センター!」

「はい!」

「ナイスキャーッチ!」


 ここ最近の一番の変化は佳子(よしこ)の外野守備かもしれない。気がついたらかなり上手くなってる。他のスポーツでも全国クラスの活躍してたくらい運動神経良い奴だから、コツを掴んだらすぐなんだろうな……


「オッケーイ!」


 そして相変わらず鬼のようなバックホーム。元々ピッチャーとしても球速はあっしより上だったしなぁ。最近トレーナーさんの元で肩周りのトレーニングに力を入れてるけど、早く効果が出てほしいよなぁ……


「ナイスボール!」


 ブルペンに戻ると、雨田(あまた)が景気良くミットを叩く音。久々の先発で気合い入ってんな。


「どうだ?調子は」

「最長6回なのが勿体無いくらいだよ」

「大層なこと言うねぇ。向こう、鹿籠葵(こごもりあおい)も今日試合に出るかもしれないのにさ」

「……流石にまだこっちには来ないんじゃないか?」

「どうだろうねぇ?向こうの事情考えたら多分プロスペクト候補だろ?一応連絡先は知ってるけど、守秘義務とかあるだろうからなぁ……」

「まぁ、出るなら出るで楽しみだよ」


 だろうな。なんせアイツは、あっしらの世代を代表するスターの1人だからな。

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