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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第一章 フィノム
167/1129

第二十六話 カーテンコール(8/9)

2018ペナントレース バニーズ0-1ヴァルチャーズ

5回裏 1アウト

打者:■■(8番)


○天王寺三条バニーズ

監督:柳道風(やなぎみちかぜ)


[先発]

1中 赤猫閑(あかねこしずか)[右左]

2遊 相沢涼(あいざわりょう)[右右]

3右 森本勝治(もりもとかつじ)[左左]

4左 金剛丁一(こんごうていいち)[左左]

5三 リリィ・オクスプリング[右両]

6指 ロバート・イースター[右左]

7一 天野千尋(あまのちひろ)[右右]

8捕 冬島幸貴(ふゆしまこうき)[右右]

9二 徳田火織(とくだかおり)[右左]


投 氷室篤斗(ひむろあつと)[右右]



●博多CODEヴァルチャーズ

監督:羽雁明朗(はがりあきたか)


[先発]

1二 ■■■■[右左]

2遊 睦門爽也(むつかどそうや)[右右]

3中 友枝弓弦(ともえだゆづる)[右左]

4一 成宮知久(なりみやともひさ)[右右]

5指 フィアマル・ローウェン[右右]

6左 田所瑠璃子(たどころるりこ)[左左]

7三 穂村小町(ほむらこまち)[右右]

8右 ■■■■[右左]

9捕 久保正典(くぼまさのり)[右右]


投 ■■■■[右右]

******視点:柳道風(やなぎみちかぜ)******


 徳田(とくだ)はここ最近乗っておるが、さっきからさらにキレッキレじゃのう。まさかあの相沢(あいざわ)でもカバーしきれんほどの動きを見せるとは……前にも披露したあの無茶な体勢のグラブトスもドンピシャじゃった。ムラは大きいが、氷室(ひむろ)に関わることじゃと恐ろしいのう……


「ッ……!」

「アウト!」

「ストライクスリー!バッターアウト!」

「フォーク!これで三振9つ目!」

「スリーアウトチェンジ!」


 氷室もここにきて球がさらにキレたのう。結構まずい流れじゃったが、思いのほかあっさりと抑えおった。


「ナイピーあっくん!」

「お、おう……」

(情けねぇな……今日の俺は火織(かおり)に助けられっぱなしだ。勝ち負けの責任が常に投手にあるわけじゃねぇけど、あの一発は完全に俺の責任……なのに、あれから何もかも火織に背負わせちまってる……)

「徳田」

「へ?」

「すまなかったな。打つ方も守る方も、続いてやれなかった」


 ほう、珍しいのう。相沢が殊勝にも……


「……ふかすなんて、ぬるいことしちゃいましたねぇ〜?」

「ッ……!テメェ……!!」

「フォッフォッフォッフォッ!!!」


 良い性格しとるわ、それでええ。今のウチに必要なのは馴れ合いよりもそれよ。


 ・

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 ・


「アウト!スリーアウトチェンジ!」


 6回1失点……結果も内容も十分。氷室はようやったが、ちぃとまずいのう……


「ヴァルチャーズ、選手の交代をお知らせします。ピッチャー■■に代わりまして、波照間(はてるま)。ピッチャー波照間。背番号57」

「さぁスコアは1-0のまま、バニーズは7回の表の攻撃ですが、出ました波照間!ヴァルチャーズ、勝利の方程式に入りました!」

「おっしゃあ!勝ちパターンたい!」

「今日も『カーテンコール』かましたれ!」

「頼む!打ってくれ!開幕カード勝ち越しかかってるんやから!」

「たった1点差や!まだ諦めんな!」


 『カーテンコール』とは、『6回終了時点で自軍がリードした状態となり、残り3回を打者9人で抑えて勝利する』ことを指す。

 本来の意味は『舞台演技などの類で舞台本編終了後に演者達が次々に現れて観客に挨拶をする』という、言うなればファンサービスの一種。それが最近では球界でも少しずつ、異なった意味の用語として浸透してきておる。

 近年のプロ野球では先発完投主義が薄れ、先発を6回に降ろして信頼できるリリーフ3人を1回ずつ投げさせる、という投手起用が多くなった。勝ちパターンのリリーフというのはそう簡単に失点せん。3人全員が無失点というのもザラにあるし、何なら3人全員が打者3人で切ることも十分に起こりうる。

 そういう試合は結果だけ見れば『6回の時点で事実上ゲームが終了した』のと等しい状態と言える。そして、リリーフ3人全員が打者3人で切ることになれば、攻撃側からすれば計算上、ちょうど打線が一巡し、打者全員が1回ずつ観客に最後の顔見せをすることになる。それを本来の『カーテンコール』に(なぞら)えた、というわけじゃな。

 もちろん、『カーテンコール』はリリーフ陣に頼らずとも実現は可能じゃ。ただまぁ現実問題として、その達成難度から、主にリリーフ陣の実力と功績を讃えるための、一種の非公式記録になってるわけじゃな。

 そしてこの『カーテンコール』というのは、ヴァルチャーズのリリーフ陣の、一種の代名詞のようにもなっておる。


「ヴァルチャーズ、選手の交代をお知らせします。ピッチャー波照間に代わりまして、柴江(しばえ)。ピッチャー柴江。背番号17」


 リーグ屈指の左キラー、波照間雄三(はてるまゆうぞう)に続き、昨年の最優秀中継ぎ投手の柴江章(しばえあきら)……


「ヴァルチャーズ、選手の交代をお知らせします。ピッチャー柴江に代わりまして、ホッパー。ピッチャー、ホッパー。背番号58」


 大将を務めるのは、3年連続セーブ王に加え、昨年はシーズンセーブ数の日本記録を更新した剛腕、クリスティ・ホッパー。


「ストライク!バッターアウト!ゲームセット!」

「スイングアウト!1-0!ヴァルチャーズ、二夜連続の『カーテンコール』!!!」


 これらの強固なリリーフ陣を揃えとるからこそ、羽雁(はがり)も攻撃においては期待値よりも確実性を重視しとるわけじゃな。全くもって羨ましい限りの戦力じゃの。


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