第二十六話 カーテンコール(7/9)
2018ペナントレース バニーズ0-1ヴァルチャーズ
4回裏 0アウト
打者:成宮
○天王寺三条バニーズ
監督:柳道風
[先発]
1中 赤猫閑[右左]
2遊 相沢涼[右右]
3右 森本勝治[左左]
4左 金剛丁一[左左]
5三 リリィ・オクスプリング[右両]
6指 ロバート・イースター[右左]
7一 天野千尋[右右]
8捕 冬島幸貴[右右]
9二 徳田火織[右左]
投 氷室篤斗[右右]
●博多CODEヴァルチャーズ
監督:羽雁明朗
[先発]
1二 ■■■■[右左]
2遊 睦門爽也[右右]
3中 友枝弓弦[右左]
4一 成宮知久[右右]
5指 フィアマル・ローウェン[右右]
6左 田所瑠璃子[左左]
7三 穂村小町[右右]
8右 ■■■■[右左]
9捕 久保正典[右右]
投 ■■■■[右右]
******視点:徳田火織******
「ストライクスリー!バッターアウト!スリーアウトチェンジ!」
あのキモいソロムランの直後でも3人で斬れたのは流石のあっくん。
「5回の表、バニーズの攻撃。8番キャッチャー、冬島。背番号8」
だけど、どんなに内容は良くてもこのままだと負けの責任を背負うことになる。
「初球打ち!ファースト……ジャンプ!」
「アウト!」
「成宮、ファインプレー!ファーストライナーでワンナウト!」
「くそっ……!」
「恐らくストレートにヤマを張ってしっかり捉えたんですが、プロ初ヒットならずですねぇ。これは流れがヴァルチャーズに傾いてる感じですねぇ」
「9番セカンドベースマン、徳田。背番号36」
(厄介な奴だが、1点リードでワンナウトランナーなし。まだマシな状況だな)
アタシ自身もリリィちゃんに負けたのに、その上あっくんまで負けさせるなんて、そんなの許せるわけないじゃん。
……誰も何もしないなら、アタシだけであっくんを勝たせてやる!
「な……!?」
「これは……ライト下がって下がって……フェンス直撃!」
「よっしゃあ!ナイバッチかおりん!」
「ツーベース!何と徳田、これでこのカード全試合で長打です!」
「うーん、しかしどうも納得してないような感じですねぇ……」
もう……!今のでホームランにならないなんて……!!
「1番センターフィールダー、赤猫。背番号5」
「さぁこれでワンナウト二塁、一打同点の場面です!」
「……!?」
「二塁ランナースタート!」
「ストライーク!」
「セーフ!!!」
「セーフ!セーフ!盗塁成功!!」
「打者が左打席なのによく盗みましたねぇ……スタート完璧でしたよ」
(くそっ、不意をつかれた……!)
「やるやんけかおりん!ナイスや!」
(そんな指示出しとらんのじゃがのう……まぁええか、面白いし)
さ……これでヒットじゃなくても1点なんだから、それくらいは取ってよね?
「打ち上げた!しかしこれはセンター浅いところ……」
「アウト!」
「すぐさまバックホーム!三塁ランナーはスタートできず!」
わずかに上っ面……あの距離で友枝さんの肩じゃ流石に走れない……!
「2番ショートストップ、相沢。背番号3」
「ストライーク!」
「ボール!」
「ボール!」
「ファール!」
「ボール!」
「ファール!」
「ファール!」
「粘ります相沢!」
(できればシングルで返したかったが、よりによって荒れ球が良いとこに来ちまった……こうなったらバッテリーエラーの期待込みで森本に繋ぐ……!)
「打ち上げた!これはサード追いかけて……捕ったァ!カメラマン席に突っ込んでナイスキャッチ!」
「アウトォォォ!!!」
「ボンバァァァ!!!」
「小町ィ!ナイスチェストじゃ!!」
……ッ!!!
「スリーアウトチェンジ!」
「これでスリーアウト!ヴァルチャーズ、ピンチを迎えましたがどうにか好守で凌ぎました!!1-0、ヴァルチャーズがリードです!!!」
「やはり流れはヴァルチャーズに傾いてますねぇ……バニーズも1点どころか2点3点取っててもおかしくないくらい良い攻めをしてたんですけどねぇ」
「火織、よく打ってくれた。サンキューな」
「……うん」
あっくんに褒めてもらえたのは嬉しいけど、やっぱり勝たせなきゃ意味がない。
「7番サードベースマン、穂村。背番号5」
「ショート下がって下がって……落ちましたヒット!」
「打ち取った当たりだったんですが、ついてないですねぇ……」
まだ点を取られたわけじゃない。
「8番ライトフィールダー、■■。背番号■■」
「打って、これはセンター前……いや、セカンド追いついた!!?」
「はぁ!?」
(嘘だろ……!?あれを捕るのか……!!?)
これなら2ついける……!
「セカンド!」
「ッ……!」
「アウト!」
「一塁送球間に合うか……ああっと!」
「セーフ!」
「送球が上擦って天野ジャンプ!捕球はできましたが足が離れました!」
「いやぁ……今の、徳田はよく捕りましたねぇ。あの球足の速さ、普通のセカンドならまず捕ることさえ出来ませんよ今のは……しかも着地とほぼ同時にグラブトスですからね。一歩目から完璧な動きでしたよ」
(徳田の奴……まだあんな底力を隠してたんだべか……!?)
何でだよ……!?握り直しがどうとか言ってたくせに、何でちゃんと投げないんだよ……!!?




