表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第一章 フィノム
163/1129

第二十六話 カーテンコール(4/9)

2018ペナントレース バニーズ0-0ヴァルチャーズ

4回表 攻撃開始


○天王寺三条バニーズ

監督:柳道風(やなぎみちかぜ)


[先発]

1中 赤猫閑(あかねこしずか)[右左]

2遊 相沢涼(あいざわりょう)[右右]

3右 森本勝治(もりもとかつじ)[左左]

4左 金剛丁一(こんごうていいち)[左左]

5三 アレックス・グレッグ[右右]

6指 ロバート・イースター[右左]

7一 天野千尋(あまのちひろ)[右右]

8捕 冬島幸貴(ふゆしまこうき)[右右]

9二 徳田火織(とくだかおり)[右左]


投 氷室篤斗(ひむろあつと)[右右]



●博多CODEヴァルチャーズ

監督:羽雁明朗(はがりあきたか)


[先発]

1二 ■■■■[右左]

2遊 睦門爽也(むつかどそうや)[右右]

3中 友枝弓弦(ともえだゆづる)[右左]

4一 成宮知久(なりみやともひさ)[右右]

5指 フィアマル・ローウェン[右右]

6左 田所瑠璃子(たどころるりこ)[左左]

7三 穂村小町(ほむらこまち)[右右]

8右 ■■■■[右左]

9捕 久保正典(くぼまさのり)[右右]


投 ■■■■[右右]

 ******視点:相模畔(さがみくろ)******


 バニーズは元々、機動力が売り。そしてヴァルチャーズも日本球界で最強のスラッガーと去年のホームラン王を抱えてるくせに、『こういうことがきちんとできるから王者なんだ』と言わんばかりに堅実な攻撃をするから、このカードは数字だけで見れば良い勝負をしてる。

 だけど、それは俺や千代里(ちより)みたいな立場だと困るんだよな……接戦ってのは必然的にチームの主力が出張るとこ。俺らみたいな立場はどっちかにとって捨て試合がほぼ確定したような場面で出てきて、主力を休ませてやるのが主な役割。その中で結果を出していかなきゃ、なかなか立場は上がってこない。


「おっと、これはライト下がって下がって……捕りました、ワンナウト!」

「ああっ、惜しい……!」

「ええでええでー!テラスあるんやから打球上げてけー!」

「そろそろ金剛(こんごう)の一発も出て欲しいとこですねぇ」


 向こうの先発も氷室(ひむろ)と同じくここまで無失点だが、出塁の数も現状こっちが上で、今みたいな当たりも出てるから内容でも上回ってる。正直、今日の試合は割と勝ちの目があると思う。


「5番サード、グレッグ。背番号56」

(今日は前の2試合に比べて投手戦になってるから、4番から7番までの並びは要警戒だな……)


 向こうの久保(くぼ)のミットは外低めに構えられてる。やっぱ今日の試合はソロムランでも怖いって考えなんだろうな。


「……!!!ああっと!!!!!」

「ヒット・バイ・ピッチ!」

「おい、大丈夫か!?」


 速球がすっぽ抜けて、恐らく二の腕辺り、肘当てが覆ってるかどうか微妙なとこへ……


「グレッグ、大丈夫か?」

「〜〜〜ッッッ!!!」

「ちょっとすぐには戻れないかもですね……」

「ふーむ……まだシーズン頭じゃし、大事を取るかのう……病院連れてってやれ」

「はい!」


 ベンチに戻ったグレッグはまだぶつかった辺りを手で覆って、苦しそうな顔をしてる。元々思いっきり踏み込んで外の球でも構わず引っ張るタイプで、デッドボールが多かったからな……そしてヴァルチャーズはビリオンズほどじゃねぇけどデッドボールの多さで有名……


「ふざけんなやヴァルチャーズ!」

「ノーコンけしかけとんちゃうぞ!」

「やかましか!ただの事故たい!」

「こげなもん、避けん方が悪いわ!」

「ファーストランナー、グレッグに代わりまして、オクスプリング。5番サードベースマン、オクスプリング。背番号54」


 レフトスタンドからのブーイングと、ライトスタンドからの擁護に紛れてコールされたのは、あのなんちゃってイギリス人。


「代走に入ったのは昨年のドラフト3位、ルーキーのリリィ・オクスプリング!西帝国学院(にしていこくがくいん)大学出身、関西大学リーグで歴代1位の通算本塁打14本を記録した、強打のスイッチヒッターです!」

「ゲーム展開的に脚で1点もぎ取りたいとこですが、まだゲーム中盤ですからね。打線とポジションの補完を優先したんでしょうね」

(ま、そっちがメインじゃが約束もあったしの。せいぜいこのチャンスを生かすことじゃな)


 くそっ、俺には走らせてくれねぇのかよ……!


「6番DH、イースター。背番号42」


 一発打てる奴が2人続くが、リリィはリードを大きめに取ってる。まさか、盗む気なのか……?相手キャッチャーは鬼肩の久保(くぼ)だぞ……?


(確か盗塁も大学通算で2桁はやってたはず……可能性はあるな。一応釘を刺しといて下さい)

「一塁牽制!」

「セーフ!」


 ちゃんと戻れはしたけど、戻るのに集中してリードを活かせないとか、そういう本末転倒になってる方が個人的にはありがたいとこだな。


「ボール!」

「もう一球牽制!」

「セーフ!」

「また一塁へ!」

「セーフ!」


 (あぶ)ねぇな。戻るのかなりギリギリじゃねぇか。


(あんまり投げさせると暴投のリスクもあるからな……そろそろホームだな)

(……!)


 ピッチャーがようやく2球目……!?


「一塁ランナースタート!」

(くそっ、このタイミングか……!)

「ストライーク!」

「セーフ!!!」

「セーフ!セーフ!間に合いました!」

「うぉぉぉ!マジかよ!?」

「久保相手にやるやんけあの外人の姉ちゃん!」

「リリィ・オクスプリング、プロ初出場でいきなり初盗塁!」


 決めちまいやがった……俺より先にプロ初盗塁……


「……ふぅん、やるじゃない」


 あの赤猫(あかねこ)さんが珍しく、他の奴の走りを褒めてる。その横で徳田(とくだ)は頬を膨らませてる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ