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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第一章 フィノム
157/1130

第二十五話 認めてやる(3/5)

2018ペナントレース バニーズ 3-2 ヴァルチャーズ

7回表 攻撃開始


○天王寺三条バニーズ

監督:柳道風(やなぎみちかぜ)


[先発]

1中 赤猫閑(あかねこしずか)[右左]

2遊 相沢涼(あいざわりょう)[右右]

3右 森本勝治(もりもとかつじ)[右左]

4左 金剛丁一(こんごうていいち)[左左]

5三 アレックス・グレッグ[右右]

6指 ロバート・イースター[右左]

7一 天野千尋(あまのちひろ)[右右]

8捕 伊達郁雄(だていくお)[右右]

9二 徳田火織(とくだかおり)[右左]


投 三波水面(みなみみなも)[右右]


[控え]

冬島幸貴(ふゆしまこうき)[右右]

リリィ・オクスプリング[右両]

有川理世(ありかわりせ)[右左]

早乙女千代里(さおとめちより)[左左]

相模畔(さがみくろ)[右左]



●博多CODEヴァルチャーズ

監督:羽雁明朗(はがりあきたか)


[先発]

1二 ■■■■[右左]

2遊 睦門爽也(むつかどそうや)[右右]

3中 友枝弓弦(ともえだゆづる)[右左]

4一 成宮知久(なりみやともひさ)[右右]

5指 フィアマル・ローウェン[右右]

6左 田所瑠璃子(たどころるりこ)[左左]

7三 穂村小町(ほむらこまち)[右右]

8右 ■■■■[右左]

9捕 久保正典(くぼまさのり)[右右]


投 真木菊千代(さなぎきくちよ)[右左]

******視点:徳田火織(とくだかおり)******


「ありがとねー、火織(かおり)ちゃん。助かったわ……」

「いえいえ、どういたしましてー」


 6回の守備が終わってベンチに帰る途中で三波(みなみ)さんに声をかけられた。うんうん、こういうのがあると、一軍に上がったって気になるなぁ。


「おい徳田(とくだ)

「あ、相沢(あいざわ)さん、どうも……」

「握り直しなんてぬるいことしてんじゃねぇよ」

「……はい」


 むっかー。赤猫(あかねこ)さんもだけど、相沢さんちょっと厳しすぎない?こちとら一軍デビュー戦だってのに、得意分野で威張り散らしちゃって……ふんだ、絶対に見返してやる。


「おっと、ヴァルチャーズ先発の真木(さなぎ)は7回も投げるようですね」

「7番からというのと、やはり開幕投手としての立場を優先してのことでしょうね」

(天野さんにも伊達さんにも徳田さんにも、今日はしてやられてるからね〜。ウチとしてはこの回をキッチリ締めて、良いイメ〜ジのまま次の登板に備えたいんだよね〜。羽雁(はがり)監督に感謝感謝だよ〜)

(……という風に考えてくれてるとありがたいな。真木は今やウチの主戦力。今日に限らずこの1年間を戦い通してもらうためにも、ここはあと1回踏ん張ってもらいたいところだ)


 ちょうど良い具合に、この回はアタシにも回るからね。


「7回の表、バニーズの攻撃。7番ファーストベースマン、天野(あまの)。背番号32」

「チッヒー!もう1本おかわりやー!!」

(そうはさせないよ〜!)

「ストライーク!」

「1球目空振り152km/h!」


 はっや……7回なのにまだあんなに出るの……?


(気合い入ってるなぁ……抜け球じゃないと打てる気がしないけど、そんなの悠長に待ってられないんだよね……かおりんと違ってぼくじゃあのフォークを何とかできそうな気がしないし、追い込まれたらもうほぼアウトだね……とりあえず追い込まれるまではストライクに入りそうな球は全部振っていくつもりでいこうかな?)

(天野は失投さえなければ問題なく打ち取れる。前の打席のことはあるが、それでも外スラで2つ目取るぞ)

(おっけ〜♪)


 ビハインドで、さっきホームランを打たれた相手なのに、バッテリーには余裕がある。流石に強い球団って戦い慣れてるなぁ……


(スライダー……でもこれなら……!)

(少し入ってきたか……だがこの高さなら……!)

「強いゴロ、三遊間……ショート深いとこ、睦門(むつかど)飛びついて捕った!」

「キャアアア!流石は爽也(そうや)きゅん!!」


 やっぱ追いつけるか……しかも爽也くんの肩だと……


「……!しまった……!」

「ああっと送球逸れた!」

「セーフ!」


 ファーストカバーに入ってた久保(くぼ)さんが捕ったから一塁止まりだけど、それでも出塁。しっかし相変わらずエグい肩してるね……ファーストの手の届くとこなら刺せてたよ今の……


「記録はショートのエラー!」

「いやぁ、でも今のは睦門だからこそエラーが付いたという形ですねぇ。天野も俊足ですからね。普通のショートなら捕れたかどうかも怪しいですし、何よりあの深さであの体勢じゃ普通は送球しても間に合いませんよ」

「流石は元154km/hピッチャーですねぇ……」

(くそッ、急ぎすぎたべ……!よりによって相沢さんや徳田の目の前で……!)


 捕るまでならともかく、アタシの肩じゃまず間に合ってなかっただろうし、流石にこれは煽る気にはなれないね。やっぱパワー的なとこじゃ勝てそうもないかな?アタシもそこまでひ弱じゃないんだけど、やっぱりテクニックで勝負かなぁ。


「8番キャッチャー、伊達(だて)。背番号10」

「ああっと!これは……」

「バントですか……まぁ終盤の1点欲しい場面ですからねぇ」

「おいィ!伊達!お前が決めたらええんやで!」

日和(ひよ)らんでドカンと打たんかい!」


 それってつまり……


(今の僕の脚じゃゲッツーも十分あり得るしねぇ。それに、新戦力の台頭に期待してる僕としても本意だ)

(と言うわけで、氷室(ひむろ)が投げとらんでもキッチリ決めろよ?フォッフォッフォッフォッ……)


 3割打者の大ベテラン様がポッと出のアタシのためにお膳立てなんて、粋なことしてくれるじゃないの。


「ピッチャーファーストの間絶妙なところ……送りバント成功!」

「巧いですねぇ……元々打って帰すタイプだったので、送るとこは初めて見ましたね」

(腰をやった分、バットを振れるようになるまで時間がかかっちゃったからね……ノースイングでも打席での感覚を忘れたくないからバント練習はかなりやったけど、こんな形で役に立つとはね)

「9番セカンドベースマン、徳田(とくだ)。背番号36」

(徳田さんにとっては良いお膳立てかもしれないけど、それはウチにとっても同じだよ〜……!ここで決着を付けるよ〜、徳田さん……!)


 ここまでしてもらって、さっきの打席のお返しをさせてもらえるんだから、応えてナンボだよね……!

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