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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第一章 フィノム
152/1130

第二十四話 刮目せよ(5/7)

2018ペナントレース バニーズ 0-1 ヴァルチャーズ

4回表 攻撃開始


○天王寺三条バニーズ

監督:柳道風(やなぎみちかぜ)


[先発]

1中 赤猫閑(あかねこしずか)[右左]

2遊 相沢涼(あいざわりょう)[右右]

3右 森本勝治(もりもとかつじ)[右左]

4左 金剛丁一(こんごうていいち)[左左]

5三 アレックス・グレッグ[右右]

6指 ロバート・イースター[右左]

7一 天野千尋(あまのちひろ)[右右]

8捕 伊達郁雄(だていくお)[右右]

9二 徳田火織(とくだかおり)[右左]


投 三波水面(みなみみなも)[右右]


[控え]

冬島幸貴(ふゆしまこうき)[右右]

リリィ・オクスプリング[右両]

有川理世(ありかわりせ)[右左]

早乙女千代里(さおとめちより)[左左]

相模畔(さがみくろ)[右左]



●博多CODEヴァルチャーズ

監督:羽雁明朗(はがりあきたか)


[先発]

1二 ■■■■[右左]

2遊 睦門爽也(むつかどそうや)[右右]

3中 友枝弓弦(ともえだゆづる)[右左]

4一 成宮知久(なりみやともひさ)[右右]

5指 フィアマル・ローウェン[右右]

6左 田所瑠璃子(たどころるりこ)[左左]

7三 穂村小町(ほむらこまち)[右右]

8右 ■■■■[右左]

9捕 久保正典(くぼまさのり)[右右]


投 真木菊千代(さなぎきくちよ)[右左]

「4回の表、バニーズの攻撃。1番センターフィールダー、赤猫(あかねこ)。背番号5」

(ふーんだ、誰が"へたっぴ"だよ。自分は塁にも出れてないくせに)

「ストライーク!」

「ボール!」

(う〜ん、さっさと追い込みたかったんだけどねぇ〜……)

(外れたものは仕方ない。内側も攻めていくぞ)


 ストレートにバックドアスライダー……2球目は意図的に外したのか……


(あ、やば……リリースがちょっと早かった!)

「セカンド追いかける……が、追いつかない!ライト前ヒット!」

「さすがは3割常連……甘く入れば逃しませんねぇ」


 内寄りに甘く入ったカットボールを一振り。赤猫さんのようなタイプやと流しばっかで引っ張って強い打球が打てないのも珍しないけど、これだけの引き出しがあってこその3割打者やな。


「おっしゃおっしゃ!(しずか)たそが出たで!」

「ウチの自慢の得点パターンや!」

「2番ショートストップ、相沢(あいざわ)。背番号3」


 相沢さんが打席に立つと、早速赤猫さんが大きめにリードを取る……いや、あの人からしたらそこまででもないのかもしれんけど。


「ここは1つ、投げるフリだけ!▲▲さん、ここはやはり送ってくるでしょうか?」

「どうでしょうね?ビハインドですし、相沢も普通に打てますしねぇ……」


 少なくとも最初からバントの構えはしてないし、そもそも監督からもそういうサインは出されてない。


「今度は牽制投げました!」

「セーフ!」


 実際に牽制球が来ても、臆さず再び大きめのリード。


「今度は手から帰る!」

「セーフ!」

「ふぅ……危なかったわ」


 普段無表情な赤猫さんが、珍しく安堵したような苦笑い。


「閑たそ!ドンマイドンマイやで!」

「盗塁は勇気の証や!ビビらずにゃんにゃんしていけー!」

「ピッチャービビってるよー!」

(ぷっwあんなぬるい牽制に引っかかりそうになってやんのwww)


 火織(かおり)が軽く野次を飛ばしながらも、そのニヤけた目線の先には赤猫さんの姿。さっきのを随分根に持ってるみたいやな……

 せやけど、カタログスペックだけの火織と違って、赤猫閑(あかねこしずか)には『盗塁王の常連』という実績もある。あれを『弘法にも筆の誤り』と断ずるには早計すぎる気もするけど……


(流石の赤猫さんでも、これだけ釘を刺されてマサが捕ってるんだから走れないよね〜)

(相沢さんも確かに打てる方ではあるが、警戒しすぎてクリーンナップの前にランナーを溜めるなど愚策。裏をかいてバントでもさせてやれば良い。臆さず初球からストライク狙っていくぞ!)

「真木、ようやく第一球……ああっと!一塁ランナースタート!!」


 おそらく空振りの援護がなくともストライクだが、アウトロースライダー。これは間に合うか……!?


「セェェェェェフ!!!」

「セーフ!セーフ!赤猫、盗塁成功!!」

「うぉぉぉ!流石は閑たそや!!」

(すっげぇ……単純に脚も(はえ)ぇけど、スライディングで全くスピードが落ちんかったべ……送球キャッチくらいまではどうにか間に合うと思ったのに……)

「むぅぅぅ……!アタシも変化球だったら間に合ってたかもしれないのに……!!」


 ……いや、そんな単純な話でもないんやろうな。メモを取り出して、『4回ノーアウト一塁』と書き記す。正直、今一回見ただけやと火織の何がダメやったんか、それに対して赤猫さんの何が良かったんかはわからんかったから、試合が終わったらチェックせんとな。


「さぁこれで一気にノーアウト二塁のチャンス!」

(こうなってしまったものは仕方ないな……最悪進塁打で後々同点に追いつかれるくらいは割り切るしかない。せめてアウトは確実に取るぞ)

「ドンマイドンマイ!お(きく)、きばってけー!」

「どうせ向こうはコツコツ繋ぎが精一杯たい!」

「ピッチャー、第二球……打ったぁぁぁ!!!」


 でかい……!


「レフト線フェア!」

「おっしゃあああ!」

「走れ!走れ!」

「二塁ランナー赤猫、ホームをタッチして悠々生還!打った相沢も楽々二塁へ!同点タイムリーツーベース!」

「っしゃあああ!同点やあああ!!」

「"AA(ダブルエー)コンビ"最高や!」


 インハイ151km/h速球。そこまで甘い球やなかった。せやけど振り負けずに長打。

 高い出塁率と盗塁技術を兼ね揃えた赤猫さんと、犠打も進塁打もこなせてベースの打力も兼ね備えた相沢さん。貧打のバニーズ打線やけど、1・2番の完成度の高さだけなら球界でもトップクラスやな。しかも守りの面でもセンターラインやし、他のバッティングポジションが不甲斐ないってことなんやろうな……

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