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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第一章 フィノム
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第四話 今日は可愛い後輩としてお行儀良く過ごさなきゃね(1/4)

 キャンプ4日目。紅白戦の日。


 3日間でようやく二軍の人達も多少はわかってきたのに、そこから一軍の人達と必然的に顔合わせ。元々顔と名前を知ってる人はそこそこいるとは言え、気疲れする。どうせ疲れるならその分練習したい。でも観戦しにきたファンの目もあるし、今日は可愛い後輩としてお行儀良く過ごさなきゃね。


松村(まつむら)さん、天野(あまの)さん!おはようございます!今日は白組で一緒ですね!よろしくお願いします!」

「ああ、貴方は確かルーキーの秋崎(あきざき)さんですね?よろしくお願いします」

「わざわざ挨拶に来てくれてありがとね。今日はよろしくね!」

「……すげぇな佳子(よしこ)


 逆に佳子ちゃんはどうやったら人見知りを拗らせるのか全く見当がつかない。初日から二軍の人達相手にもそうだったけど、一軍の人達にも躊躇なく挨拶に回ってる。経験に差はあるとしても同じ立場の二軍の人達ならともかく、流石に一軍の有名人だらけのところに飛び込んでいくのはあたしと神楽(かぐら)ちゃんにはキツいから、佳子ちゃんには申し訳ないけど便乗させてもらってる。


「それと、貴方がたは夏樹(なつき)さんと月出里(すだち)さんでしたね?」

「う、うっす!先輩方の足引っ張らないように頑張りますんでよろしくお願いします!」

「足を引っ張るなんてとんでもないですよ。好投を期待してますよ」

「うんうん。今日は紅白戦だし、ルーキーのみんなもきっとどこかで出られるはずだから、お互い頑張ろうね」


 まぁ同じ白組の人は一軍キャンプメンバーでも一軍レギュラーではないから、比較的近づきやすい。


 めちゃくちゃ背が高くてツーブロックで武士みたいな丁髷してるけど、驚くほど話し方が丁寧で物腰が柔らかい松村桐生(まつむらきりお)さん。

 一昨年のドラ1で、将来のクリーンナップ候補として期待されてる。なのにそんなことを鼻にかけてるようには全く見えない。あたしと違ってずっと周りに恵まれて育ったんだろうなぁって感じ。


 松村さんほどではないにしても相当背が高くて身体も鍛えてる感じだけど、首から上は普通の綺麗なお姉さんって感じの天野千尋(あまのちひろ)さん。

 この人も将来のクリーンナップ候補。2年前にジェネラルズからトレードで来たんだけど、まぁ色々あってあまり良くない意味で有名人。見ての通り、本人の素行が悪いとかそういう意味でもないけどね。


「でゅふふ……小中で世界の舞台に立ち、高校でも頭脳的な投球術で西東京の名門校のエースの座を勝ち取った夏樹神楽(なつきかぐら)ちゃん。小学生の頃から複数の運動競技で全国大会出場、野球一本になってからも神奈川の名門校でエースで4番の秋崎佳子(あきざきよしこ)ちゃん。埼玉の公立強豪校からやってきたという謎の美少女、キャンプ初日から一軍クラスのスイングスピードを叩き出した月出里逢(すだちあい)ちゃん。でゅふ、でゅふ、良いですね良いですねぇ……でゅふふっ、サインもらえます?」

「もちろんですよ!その代わり、わたしも有川(ありかわ)さんのサインすっごく欲しいです!」

「ええ、ええ、書きますとも書きますとも。佳子ちゃんのためなら何枚でも。あと……でゅふっ、あ、握手もしてもらえます?でゅふふ」


 一軍の選手に二軍の選手のサインをねだられるとは全く思ってなかった。そしてこんなことでも全く動じずに対応できる佳子ちゃんは本当にすごいと思う。


 オタクなファンみたいだけど、黙ってれば普通に可愛いと思うこの人は有川理世(ありかわりせ)さん。

 この情報収集能力の高さから推測できるようにメインはキャッチャーだけど、実はピッチャー以外ならどこでもこなせて代走としても優秀という、イメージに反して佳子ちゃんみたいに運動神経抜群なタイプ。


「有川ちゃん!俺も俺も!」

「もちろんですともぉ。でゅふふ」

「ママー!理世ちゃんだよー!」

「はぁいワタクシメですよぉ、可愛いお嬢ちゃん。でゅふふ」


 そして今年でまだ21なのにベンチメンバーながら一軍でバリバリ活躍してて、ファン対応も良いから人気もある。こういうタイプの選手は知らない人が多いけど、相沢(あいざわ)さんが休みの日に普通にショートを守ったりしてたから、流石のあたしにも印象が残ってる。プロ野球選手としての格?みたいなもので見ると、多分白組メンバーの中ではトップスリーには入るはず。


「有川ァ!つい宮崎まで来ちゃったぞォ!!」

「え……真守(まもる)ちゃん!?バイトじゃなかったの!!?」

「休んだに決まってるだろォ!?遠征費用を稼ぐためなんだからなァ!」

「も、もう……!大学生なんだから勉強もしないと……!!」


 すごい。変なテンションだけどあんなイケメンにまで言い寄られてる。綺麗な顔立ちだけど、それで逆に顔が怖い。でも装いは完全に有川さん推しのバニーズファン。さっきまでと打って変わって有川さんが普通の女子っぽくなった。


「理世ちゃーん、相変わらずお熱いねぇ。ホントに高校の頃から何もなかったのー?」

「あ、当たり前ですよ火織(かおり)さん!真守ちゃんみたいな素敵な殿方がワタクシメなんかに……」


「あ、徳田(とくだ)さんと氷室(ひむろ)さん。お久しぶりです」

「おう梨木(なしき)か。よく来てくれたな」


 急にイケメンさんのテンションが普通になった。似た者同士ってやつなのかな?


「チッ、一軍確定組は呑気で良いねぇ」


 同じ白組として一応は共闘することになるクズ4人組のお出まし。有川さん達みたいに、あたしもあのクズどもから悪態を吐かれる立場になりたい。


「あ、神楽ちゃん!逢ちゃん!ヴォーパルくんいるよ!」


 小さなファン達に囲まれてるバニーズのマスコットキャラクター、ヴォーパルくん。ウサギをモチーフにしてるだけあって普通に可愛い。実際、ヴォーパルくんの人気は12球団のマスコットキャラクターの中でもトップクラス。チーム状況がアレだけに、余計にヴォーパルくんが目立ってる状態。


「ヴォーパルくん!今日頑張るから応援よろしくね!」

「ヴォーパルくん!あっしと写真撮ろ!」


 神楽ちゃんは意外とこういうのが好きらしい。正直、あたし達はほぼほぼベンチウォーマーで終わりそうだし、多分ヴォーパルくんの中の人の方が大変だと思う。こういうのってバイトさんがやってるものなのかな?


「……ん?」


 何だろ?心なしかヴォーパルくんにすごい見られてる気がする。

 もしかして中の人は男の人で、あたしが可愛すぎてみとれてるのかな?とりあえずサービスで可愛いポーズでもしておこう。


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