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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第一章 フィノム
143/1129

第二十三話 過渡期(2/6)

2018ペナントレース バニーズ 0-0 ヴァルチャーズ

1回裏 1アウト一二塁


○天王寺三条バニーズ

監督:柳道風(やなぎみちかぜ)


[先発]

1中 赤猫閑(あかねこしずか)[右左]

2遊 相沢涼(あいざわりょう)[右右]

3右 森本勝治(もりもとかつじ)[右左]

4左 金剛丁一(こんごうていいち)[左左]

5三 アレックス・グレッグ[右右]

6指 ロバート・イースター[右左]

7一 天野千尋(あまのちひろ)[右右]

8捕 伊達郁雄(だていくお)[右右]

9二 徳田火織(とくだかおり)[右左]


投 三波水面(みなみみなも)[右右]


[控え]

冬島幸貴(ふゆしまこうき)[右右]

リリィ・オクスプリング[右両]

有川理世(ありかわりせ)[右左]

早乙女千代里(さおとめちより)[左左]

相模畔(さがみくろ)[右左]



●博多CODEヴァルチャーズ

監督:羽雁明朗(はがりあきたか)


[先発]

1二 ■■■■[右左]

2遊 睦門爽也(むつかどそうや)[右右]

3中 友枝弓弦(ともえだゆづる)[右左]

4一 成宮知久(なりみやともひさ)[右右]

5指 フィアマル・ローウェン[右右]

6左 田所瑠璃子(たどころるりこ)[左左]

7三 穂村小町(ほむらこまち)[右右]

8右 ■■■■[右左]

9捕 久保正典(くぼまさのり)[右右]


投 真木菊千代(さなぎきくちよ)[右左]

******視点:羽雁明朗(はがりあきたか)******


 ククク……いきなり打線が型に嵌ってるな。

 友枝は歩かされはしたがこれは想定内。友枝は優秀なランナーでもあるからな。それに4番に控えてるのは……


「4番ファーストベースマン、成宮(なりみや)。背番号1」

「天才打者キター!!!」

「今度こそ先制点もらうど!」


 現役最高の右のアベレージヒッター・成宮知久(なりみやともひさ)


「ボール!」

「ファール!」

「二塁牽制……は投げるフリだけ!」

「ストライーク!」

「外の変化球空振り!先ほどとは一転、成宮をスムーズに追い込みました!」

「なんだかんだで三波(みなみ)は右のサイドですからね。ここは面目躍如といったところでしょう」

(……良いスライダーだ)


 三波水面(みなみみなも)はスクリューばかりが注目されてるが、右サイドでありながら今の左打者だらけの球界を先発として生き残れてるのは、スクリューとスライダー両方が左右それぞれの打者への決め球になりうるからに他ならないだろう。ウチでも十分やっていける、バニーズにはもったいない戦力だな。


「……ボール!」

「おいィ!?今のは入ってたやろ!!?」

「お前CODEにいくら積まれたんやー!?」

「インハイ際どいところですが判定はボール!」


 内への制球も良い。判定については意見の分かれるところだろうが、どのみちここでインハイを選択できるのは強いな。右サイドゆえに、通常の右投手よりも身体の近くを通過する速球。並の右打者であれば、頭で分かっていても次の外の球を打つのは厳しいだろうな。

 だが、並の右打者であれば、『シーズン打率7年連続3割』などという偉業は成し遂げられんよ。


「打ったァ!打球は二遊間……」

(よし、これなら……!)


 セカンドがゴロを追うが……


(……え!?)

「抜けました!センターチャージの間に二塁ランナー一気にホームへ!」

「セーフ!!!」

「ホームイン!ヴァルチャーズ、開幕戦初回から鮮やかに先制!」


 セカンドの徳田(とくだ)とやら、不思議そうにグラブを見つめてるな。無理もない。おそらく想定よりも球足が速かったのだろう。

 成宮はただコンタクトが巧いだけではない。インパクトの瞬間の押し込みにより、ゴロであっても球足が衰えづらい、強い順回転の打球を放つ技術をも兼ね備えてる。右打者で、しかも決して俊足とは言えない成宮が打率3割を積み重ね続けられたのは、この卓越した技術あってのもの。


(……フン、あれだけ大口叩いてたのに大したことねーべや。二軍ではそれなりにやれてたんだろうけど、一軍と二軍じゃ打球の質がダンチだっぺ。守備に関しちゃ、まだまだおらの足元にも及ばねーべ)

「1番出塁からの2番バント、そこからクリーンナップで返す。これだけの戦力を抱えてるには堅実すぎるくらいの攻めですが、こういうのを当たり前のようにできてこその王者なんでしょうねぇ」


 確かに、ウチの攻撃パターンを『古臭い』と思う者もいるだろう。特にシャークスファン辺りはな。

 だか、『期待値』よりも『確実な最低限の得点』でウチは十分なのだ。先発ローテもリリーフも充実してるウチならな。1番は俊足、2番で堅実に繋ぎ、3番に最強打者。そして4番には最強打者に次ぐ強打者で後備え。V9時代のジェネラルズもやってた攻撃パターンだ。『王道』はいつの時代にも通用するからこそ『王道』と呼ばれるのだよ。ロースコアや僅差を制することができてこその"王者"なのだからな。




******視点:冬島幸貴(ふゆしまこうき)******


 いきなりヤベェな……今年からこの球場、ヴァルチャーズの本拠地は芝生が変わって打球が死にやすくなったって聞いてたけど、それでも火織(かおり)の範囲を抜けるんか……

 先制点を取られた上に、まだワンナウト一二塁。しかも次に来るのが……


「5番DH、ローウェン。背番号54」

「ヴァルチャーズ、尚もチャンスで昨年の本塁打・打点王のローウェンを打席に迎えます!」


 フィアマル・ローウェン。確実性こそ3番・4番には及ばんけど、あの相撲取りみたいな体型が物語るようにパワーは一級品。


(球界最強打者、3割常連、その後ホームラン王なんて景気の良い打線だこと……)

水面(みなも)ちゃーん!大丈夫や!落ち着いていけー!」

「ちゃん付けはやめなさい!」


 観客にツッコミを返せるんなら三波(みなみ)さんはいつも通りやろうけど、メンタルだけで乗り切れるような場面やない。


「ここでローウェンか……三波さんが投げてる時にこの状況は……」

「ああ、かなりまずいで……」


 リリィも気付いてるみたいやな。


「この状況でバニーズバッテリーは何を選択するのか……第1球!」

(フン……ソンナ球で……!)

「打ったあああああ!!!……しかしこれは右に切れます!」

「ファール!」

「いきなり対右の要のスライダーを捉えられましたね……コースとキレでどうにか凌げましたが……」


 ローウェンは変化球打ちが得意なスラッガー。右サイド相手でもご覧の通り。


「やっぱ幸貴(こうき)ならまっすぐ使っていく感じか?」

「まぁ普通はそうやけど、三波さんの球速やと続けるのは厳しいから、使い所が難しいところやな」


 三波さんと伊達(だて)さんはこの状況をどう料理する気なんや……?

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