第百七十一話 巡り巡って(5/?)
「1-1、ついに追いつきましたバニーズ。なおもノーアウト三塁、勝ち越しのチャンス。ここで打席を迎えるのはプロ8年目、徳田火織。打っては2年連続打率3割、俊足好守の不動のレギュラーでしたが、春先は不調で開幕二軍スタート。しかし、ファームで復調をアピールし、今日から一軍昇格、即スタメンとなりました。しかしここまで3打席でヒットはありません」
「最強1・2番コンビ復活や!」
「最低でもちょうちょ帰せやかおりん!」
不祥事を起こしても必要戦力として目され、あんなに良い背番号をもらえるくらいの信用を勝ち取った徳田さんだけど、流石にあんなに打てなかったんじゃね。でも、実力は本物。這い上がってきて当然。
「内野外野共に前進守備……」
「ボール!」
「まずは外、シュート外れました!」
(貴女との勝負も久々ね、火織ちゃん)
「ファール!」
「ストライーク!」
「まっすぐ、ファールチップ!今日最速の146km/hが出ました!」
バッテリーミスは当然NG。内野ゴロの1点が取りづらい体勢だけど、逆に強いゴロが抜けやすい状況。それでもこうやってストライクをきっちり取れて球威も維持できるのは流石の百々(どど)さん。
(一緒に優勝目指して頑張った者同士なのに容赦ないなぁ……まぁこの状況ならしょうがないか)
「ファール!」
「もう1球まっすぐ!」
「ファール!」
「これもまっすぐ!」
(流石ね……)
……多分どこかでチェンジアップ……
「ファール!」
「またまたまっすぐを続けます!145km/h、球数100球に迫りますが球威は衰えません!」
(……やっぱりまっすぐ狙いに……)
(って思ってくれる頃かしら?)
(!!!)
来た、やはりチェンジアップ……!
(ッ……!何の!!)
「「!!?」」
「上手いバッティング!レフト線……」
「フェア!!!」
「「「「「おおおおお!!!」」」」」
上手い……!右腕一本で……!!
「セーフ!」
「三塁ランナーホームイン!」
「セーフ!」
「打った徳田もスタンディングダブル!タイムリーヒット!2-1、バニーズ、逆転!」
「「「「「よっしゃあああああ!!!」」」」」
(……やられちゃった)
(プロに入ってずっと二軍暮らしだったけど、頑張って一軍のレギュラーになって、優勝もして背番号も良いのもらっちゃって……アタシの悪い癖が出ちゃってたね。でももう油断はしないよ……!)
「ウッドペッカーズ、選手の交代をお知らせします。ピッチャー、百々に代わりまして……」
「ここでピッチャー交代です!」
「ええでええで!裏切りもんノックアウトや!」
「そんなこと言うなや……」
「どんだけ百々に世話になったと思ってんねん……」
「悪ィな雨田。この試合の勝利投手は1人だけなんだ」
「わかってるよ。文句はない」
6回1失点って結果も、夏樹からもらったようなもんなんだしね……
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