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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第五章 ホンジ・スキーム
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第百七十一話 巡り巡って(2/?)

「1回の裏、バニーズの攻撃。1番サード、月出里(すだち)。背番号25」

「日程を大きく挟んで対ウッドペッカーズ2回目のカードとなりましたバニーズ。開幕からヴァルチャーズと熾烈なデッドヒートを繰り広げております。今日も先頭バッターは月出里。打率.468、6本塁打、29打点。開幕からすでに1ヶ月を過ぎましたが勢いは衰えることを知りません。本日先発の同期、雨田(あまた)に早速の援護が出来るか……」

(相手にとって不足なし。まさに私が望んだ状況だわ)


 十握(とつか)さんでも守備面や打順で微妙に起用法が変わってる中、野手陣で唯一と言って良いくらいに起用法が全く変わってない月出里。まさに伊達(だて)さんからの全幅の信頼の(あらわ)れ。実際にこれだけの結果を出してるんだから、誰にも文句のつけようがない。

 ……ただ、今日の相手に通用するか。何せ今日は……


「ボール!」

「初球まっすぐは外れました、142km/h!今日のウッドペッカーズの先発はプロ11年目、百々百合花(どどゆりか)!昨シーズンまでバニーズに所属し、バニーズの優勝にも貢献しましたが、まさかのフリーエージェントでウッドペッカーズへ移籍!」


「何で出ていってしもうたんや百々……」

「せっかく暗黒乗り越えて優勝できたのに……」

「でも暗黒の頃に一番投げてたからブーイングなんてできんわ……」


 ボクらもプロで5年やってきて、他球団の主力選手との勝負にもある程度慣れてきた。そういう意味では、ある意味で一番慣れのない主力選手。月出里としてもおそらく簡単に勝てる相手じゃない。

 ……そして、ボクにとっても今日のこの試合は特別な意味がある。百々さんはボクがプロになってからあらゆる試合の中で初めて投げ合った相手。そして調子に乗ってたボクの鼻っ柱を見事にへし折った。

 ボク自身も正直百々さんが出ていくなんて全く思ってなかったから、巡り巡ってこんな形でもう一度百々さんと勝負することになるのも全く予想してなかった。


「ファール!」

「まっすぐ!しかしこれはバックネットへ!!」

(やっぱりこのノビ……それと球離れが妙に遅いから、想像以上に球が『来る』。でも高めだったら……)

(念には念を入れて、『例の対策』、使わせてもらうわよ……!)

「!!!」

「ストライク!バッターアウト!!」

「スイングアウト!最後はチェンジアップ!!」

「うーん、結構浮いた球でちょっと危なかったように思いますが、百々のコントロール的に逆に予想してなかった球だったのかもしれませんね……」

(百々さんもあの球を……)


 ボクら投手からしたら、低めギリギリに決まる理想的なチェンジアップと違って、いわゆる少し浮いた怖い球。それでも打てなかったのは、やっぱり予想外だったからか、それとも単純に対戦経験の少なさからか……

 いずれにせよボクのやることは変わらない。援護をもらうまでひたすら耐え忍ぶ……!


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(春先からバニーズとヴァルチャーズだけが独走で、俺らは早々に噛ませ犬なんてお断りだぜ!)


 ……!?しまった……


「!!逆方向、これはライト下がって……入りましたホームラン!琴張(ことはり)、第6号、先制ソロホームラン!154km/hまっすぐを見事に捉えました!」


「「「「「ぎゃあああああ!!!」」」」」


「今ホームイン!1-0!4回の表、ついにゲームが動き始めました!」


 琴張さん得意の広角打法……

 去年オーナーに認められた高めまっすぐ。もし去年のクローザーとしての球威のままだったら、今のはきっと……


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