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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第五章 ホンジ・スキーム
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第百七十一話 巡り巡って(1/?)

******視点:雨田司記(あまたしき)******


 5月6日。開幕から早くも1ヶ月以上が経過した。

 今年からボクはプロ5年目にしてようやく念願叶って先発ローテ入り。残念ながら風刃(かざと)ほど無双してるわけじゃないけど、今のところはどうにかやれてる。

 でも、決して今の地位が安泰ってことはない。開幕先発ローテの内、常光(じょうこう)さんが先週脱落したし、野手陣も秋崎(あきざき)が割と早くに二軍に落とされたりと、今年の伊達(だて)さんは結構容赦がない。調子の悪い選手は迷わず二軍に落として、二軍から上がってきた選手をすぐに使う。

 ただ、このやり方は今のところ上手くいってる。現に勝率は今でも7割をキープ。この結果は伊達さんの選手の見極めが的確であることと、選手の層が厚くなったことの(あらわ)れ。


 けど残念ながら、これだけの勝率でも首位はギリギリでヴァルチャーズ。バニーズはヴァルチャーズに勝ちまくってるけど、ヴァルチャーズはバニーズ以外に勝ちまくってるという現状。

 こうなってくると、ウチとしてもヴァルチャーズ戦以外も落とせない。今日からはホームでウッドペッカーズとの3連戦。今日投げ合う相手は、そんなチーム状況じゃなくても個人的には何としてでも勝ちたいあの人。


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「1回の表、ウッドペッカーズの攻撃。1番レフト、騒速(そはや)。背番号6」

「バニーズの本日の先発は、今シーズン6試合目の登板となります、プロ5年目の雨田(あまた)。昨シーズンはクローザーとして30セーブを挙げ、チームの優勝に貢献しました。今シーズンは開幕から先発としての登板となっております。ここまで5試合で33回を投げて防御率2.18、2勝2敗。2年連続優勝を目指すチームにしっかりと貢献しています」


 ウッドペッカーズの打線は全体的に球を選ぶタイプの選手が多い。あまり慎重になりすぎずに……


「ストラーイク!」

「初球は見送ってストライク!いきなりまっすぐ151km/hが出ました!」


「やっぱ今時は右の先発やとこのくらい出してもらわんとなぁ」

「まぁクローザーやってた時と比べたらだいぶ遅いけどな」


 ……先発をやるならまず何と言っても必要以上に球数を(かさ)ませないこと。そのためにはまずストライクゾーンに投げられなきゃ話にならない。そして球数が嵩む以上、スピードを上げすぎると後でバテる。そういう意味でも、必要最低限のギアで的確にゾーンを通していくのが重要。


「ボール!」

「ファール!」

「引っ張りましたがこれは切れました!」

「今のはカットボールですかね?」


 そして打者三巡くらいを想定して、なるべく球種はあった方が良い。


「ストライク!バッターアウト!!」

「最後はチェンジアップ!スイングアウト三振ッ!!」


「ええぞええぞメガネ!」

「先発もいけるやん!」

「これはちょうちょの同期のドラ1、雨田司記(あまたしき)


 もちろん、ボクだって先発であろうが160くらいの球をガンガン投げれるなら投げたいけどね。でもあくまで一番の優先は『先発でNo.1になること』。そしてそのためには必然的に風刃や山口(やまぐち)さん、鹿籠(こごもり)に勝たなきゃならない。結果を出すための手段にこだわりすぎるようなことはしない。


「センター下がって……」

「アウト!」

「これもセンター落下点に入って……」

「アウト!」

「捕りましたスリーアウトチェンジ!雨田、初回はキッチリ3人で抑えました!」


天野(あまの)さん、ありがとうございます」

「このくらい軽いよ!ナイピー!」


 今年はセンターが割とコロコロ変わって、最初は秋崎(あきざき)、そして相模(さがみ)さんが守ってたけど、相模さんもバッティングの調子を崩して今は天野さん。ライトを守らせたらチームで一番上手い人だけど、センターでも十分。

 ……まぁものすごく個人的には、やっぱり秋崎に守ってもらって労って欲しいんだけどね。

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