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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第五章 ホンジ・スキーム
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第百六十九話 幻の変化球(1/?)

******視点:月出里逢(すだちあい)******


 4月8日、お母さんの生まれ故郷の千葉県。

 2022年のペナントレースは今の所雨天中止とかはなく順調に消化していって、今日からのアルバトロスとの3連戦でカード1周になる。

 そしてバニーズは今絶好調。開幕7連勝のヴァルチャーズすら3タテして、8連勝で貯金も8の首位。そして、あたし自身も……


(あい)ちゃん!逢ちゃんじゃないの!」

「……!?おばあちゃん、おじいちゃんも……」

「おお、逢……!」


 球場に向かってる途中。久々に千葉の方のおじいちゃんとおばあちゃんとの再会。でも羽織ってるのはアルバトロスのレプリカユニフォーム。しかも……


「おじいちゃん、また"推し"が変わったの?」

「おう!今はやっぱり(あおい)ちゃんよ!今年こそ葵ちゃんが沢村賞じゃ!」


 首に提げてるタオルも、鹿籠(こごもり)さんの背番号5のやつ。


「ごめんなさいねぇ、逢ちゃん。逢ちゃんがバニーズに入った時も、おじいちゃんに言ったんだけどねぇ……」

「ばかもん!千葉にようやくプロ球団がやってきて、わしは生涯アルバトロス一筋と決めたんじゃ!いくら孫娘が同リーグのライバル球団に入ったからと言って、アルバトロスを裏切れるか!」

「……うん、まぁ別に良いんじゃない?」


 いまだにお父さんのことを毛嫌いし続けてる頑固者だしね。そういう意味でも、別に応援されたところで……って気持ちもあるし、意地でも筋を通したいって気持ちも理解できる。

 でも実の孫娘より優先してるのがよりによって鹿籠さん……そこはちょっと複雑な気分。


 ・

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「1回の表、バニーズの攻撃。1番サード、月出里(すだち)。背番号25」

「バニーズ、今日も先頭打者はご存じこの人、月出里逢(すだちあい)。『打率4割』というJPB史上前例のない大記録を目標に掲げた今シーズンは開幕から絶好調。12試合を消化した現在でも打率は.511。さらに2本塁打に13打点と、チームの8連勝にも大きく貢献しております」


「化け物すぎて草」

「これでまだ三振0なんだよなぁ……」

「こんなん絶対敵に回したくないやつや」


 そう。ここまでは上手くやれてる。低めは無理しない、長打は高めだけっていう割り切りが上手くハマって、長打をあまり減らすことなく打率を維持できてる。

 ただ、今日の相手は……


「ストライーク!」

「まずは外まっすぐ、見送ってストライク!初球から149km/h!!今日のアルバトロスの先発は今シーズンの開幕投手を任されました鹿籠葵(こごもりあおい)。ここまで2試合先発出場し、15回を投げていまだに無失点」


「良いぞ葵姉貴!」

「今年はまたバニカモったれ!」


 おじいちゃんの推しの子が初っ端から。


「ボール!」

「もう1球外!これは外れましたが152km/hが出ました!」

「年々平均が上がってますねぇ。やっぱりあの大きい身体だと出力がすごいですね」


 このまっすぐ。ただでさえ他の人と違う独特の軌道の上に、スピードもある。今でも脅威であることに変わりはない。


「!!逆方向……」


「「「「「おおおおおおお!!!」」」」」


「ファール!」

「しかしこれはライト線、切れましたファール!」


 でも、プロで対戦し続けて去年までで丸4年。どうにか慣れてはきた。あたし自身調子が良いし、勝負できないことはない。

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