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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第五章 ホンジ・スキーム
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第百六十八話 それでも勝利はきちんともたらされる(2/?)

「1回の表、ウッドペッカーズの攻撃。1番レフト、騒速(そはや)。背番号6」


 わたし達がプロになってもう5年目。それだけ経てば、プロ野球で当たり前だった光景が色々変わってたりする。エペタムズの帝国一メンバーで、ずっと1番センターだった騒速さんが今やウッドペッカーズの1番打者。


「ストライク!バッターアウト!!」

「見逃し三振、外いっぱい!」


「ナイピーみつを!」

「今年は1年間借金無しで優勝しようぜ!」


 バニーズの今年の開幕先発ローテ。風刃(かざと)くんと山口(やまぐち)さんはみんな予想してた通り。百々(どど)さんが退団したことで空いた4枠を争った結果、常光(じょうこう)さん、雨田(あまた)くん、それと今日の敷島(しきしま)さん、明日の氷室(ひむろ)さんで確定。去年の成績は氷室さん以上だった烏丸(からすま)さんが怪我で出遅れたのもあって、雨田くんは希望通り、クローザーから先発に転向できた。


「セカンド捕って、二塁トス!」

「アウト!」

「一塁へ……」

「アウト!」

「アウト!ゲッツー!」


 センターからだからピッチングの細かいところまでは見えなかったけど、とりあえず敷島さんの滑り出しは好調。サウスポーで、球種が豊富で、球威よりも緩急と制球で柔軟に勝負するタイプのピッチャー。

 それと、敷島さんはリプのピッチャーだからあんまり活かせる機会がないけど、アルバトロスの(あおい)ちゃんみたいに、アマチュア時代からものすごくバッティングを買われてた人。そういう人って何となくピッチングだとパワーピッチャーのイメージがあるのはきっと幾重(いくえ)さんの影響。わたし自身も一応はそうだったんだけどね……


「1番サード、月出里(すだち)。背番号25」

「ショート捕って、一塁へ……」

「アウト!」

「2番レフト、相模(さがみ)。背番号69」

「アウト!」

「レフト捕って、これでツーアウト!」


 裏の攻撃。最近の逢ちゃんは1打席目からでも打ってたけど、流石に毎日とはいかないよね。


「3番指名打者、十握(とつか)。背番号34」


 十握さんは今のところ指名打者で固定。去年のシーズン終わり頃くらいに大怪我してたけど、別にその影響が残ってるとかじゃなく、単純にリリィさんと金剛(こんごう)さんが開幕二軍スタートになったから。

 今のところアウトがほとんどゴロで、打球があんまり上がってない。相変わらず三振はほとんどしてないけど、打率的にも特別調子が良さそうな感じはしない。


「一二塁間痛烈!ライト前!」


「「「「「おおおおお!!!」」」」」


 それでも今までの実績があるし、元のレベルが高いからね……


「4番キャッチャー、冬島(ふゆしま)。背番号8」

「ツーアウトからランナーが出ました。ここで打席に立つのはプロ5年目にして初めて4番を任されました冬島!」


伊達(だて)のくせに大胆なことするよなぁ……」

「いくらリリィとかがおらんからって……」


 試合前のスタメン発表でも騒然となってたけど、改めて球場中がざわつく。わたしも正直びっくりした。いくらウッドペッカーズ相手でもって。


(ただ、昨日の試合でも実際振れてるんだよなぁ。全然三振取れねぇし、タイミングも外せねぇし)

(まぁ幸いツーアウト。得点圏にいるわけでもないし、ここは平常心で……)






「!!!ストレート打って……これはレフト騒速下がって……」


「「「「「え……?」」」」」


「は、入りましたホームラン!冬島、第1号!!先制ツーランホームラン!!!」


「「「「「うおおおおおおお!!!」」」」」


 逆球……ではあったけど、結果としてインコースの結構身体に近いとこ。それを捌いて、切れずにレフトスタンドまで……


((マジで……!?))

「今ホームイン!2-0!バニーズ、4番抜擢の采配ズバリ!初回から先制!」


「ナイバッチ!」

「すげぇぞ冬島!」

「お前いつの間にあんなバッティングできるようになったんだよ!?」

「いやぁ、僕も鼻が高いよ冬島くん!」

「へへへ……どうもっす」


「「「「「良いぞ良いぞ幸貴(こうき)!!!」」」」」

「これは4番のバッティングですわ(ご満悦)」

「もう(脚以外に弱点)ないじゃん……」

「今年はフルで冬島見たいなぁ」

「いやでも、キャッチャーやしなぁ」


 観客席だけじゃなく、伊達さん含めてベンチのみんなも大盛り上がり。2年連続優勝に向けてせっかく開幕2連勝したのに2連敗で、正直ちょっと焦りみたいなのはみんなあったはず。そういう意味でも、あの一発はきっと大きい。

 ……逆に言えば、今日もまたわたしが結果を残せなかったら、『雰囲気に呑まれた』とかそういう言い訳が成り立たないってことでもあるけど。


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