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868回敬遠された月出里逢  作者: 夜半野椿
第五章 ホンジ・スキーム
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第百六十六話 滑り出し(5/?)

******視点:???******


 3月25日、福岡。博多CODE(はかたコード)ヴァルチャーズの球団事務所。今日からいよいよペナントレース開幕。今年のヴァルチャーズの開幕カードはホーム。相手は去年ギリギリ最下位を免れたエペタムズ。

 単純に『ヴァルチャーズファンだから』って理由で頑張って良い大学出てCODE(コード)に就職して、グループの子会社であるヴァルチャーズへの出向を勝ち取った俺。当然現地で観戦したいところだけど、まだまだ仕事中。現地観戦どころか、中継を見ることすらできない。

 球団関係の仕事だから中継を観るのも仕事の一環として見られたし、そもそも去年までは残業なんてあんまりない立場だったからほぼ毎試合リアルタイムで楽しめたけど、今年からは試合を見てる暇なんかない。ついさっきまでヒイコラ言いながら作ってた資料を抱えて上司の元へ向かう。


「あ、あの!房田(ぼうだ)さん!」

「はい、どうしました?」

「お疲れ様です。あの……今度の休日にウチの部署でお茶会やろうって話があるんですけど……房田さんもどうですか?」


 派遣の女子社員からの誘い。ぶっちゃけ女子に言い寄られるのは昔からそれなりに経験してるけど、年頃の男としてはやっぱり純粋に嬉しい。


「やめとけ!やめとけ!コイツは休日も忙しいんだ。房田本史(ぼうだもとふみ)27歳独身。仕事はまじめでそつなくこなすと言われてたが、最近は新しい球団社長にずいぶん気に入られて……なぁ?今だって急ぎなんだろ?」

「あ、ああ……」


 同年代の同僚のフォロー……に見せかけた嫌味。


「そ、そうだったんですか……すみません……」

「いえ、気にしないで下さい。実際今度の土日は社長の出張に付き合うんですが……良かったらまた誘って下さい」

「は、はい……」


 さっきまでは嬉々として誘ってたのに、この反応……


「やっぱりあの噂って本当なのかな……?」

御前(ごぜん)社長と……ってやつだよね?」

「あんな50過ぎのトドを抱けるなんて、若い男は元気で良いわねぇ」


 女子社員が俺の方をチラチラと見ながら内緒話。内容は大体察せられる。やっぱりそういう噂が流れるよな……


「失礼します。すみません、定時後になってしまって……」

「良いのよ良いのよ。さ、確認させてもらうわ」


 平社員だった俺が、今年からいきなり球団社長のご指名で社長補佐。そりゃ当然俺だって大企業勤めの人間だからそれなりに出世欲はあるけど、こんな形だとやっぱりそういう噂が立つのはしょうがない。


「房田くん。待ってる間退屈でしょう?遠慮なくそこに座って、我がチームの応援をしてなさい」

「良いんですか……?」

「球団の一員として何も恥じることはないでしょう?」

「そ、それでは失礼します……」


 本来なら来客用の椅子。疲れた身体が溶けるように沈み込む座り心地。社長室に入った時からテレビがつけっぱなしでヴァルチャーズ戦が映ってて正直気になってたけど、社長に許可されたから遠慮なく視線をそっちに向ける。

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