クソザコナメクジ襲来ですわ。
「僕の寝袋返してよぉ!」
「ダメですわ!こんな物に包まってないで日の光を浴びなさいですわ!」
「やだぁ!僕太陽嫌いぃ!」
レルゥの体に縋りつく少女。こんな不健康極まりない体のくせに無駄にデカい胸の彼女であるが、レルゥ自身も相当な胸を持っているので特に気にしない。髪の毛色はなぜか紫。そんなことよりも今は彼女の名前がなんなのかを聞くのが一番である。
「名前はなんですの?」
「ぼ、僕の名前は『メルナ』だよぉ……答えたんだから返してぇ……」
「それはそれ、これはこれですわ」
縋りつくメルナを引きずり、もう一度外に出すレルゥ。相部屋なのかベッドは二つあるがほぼ占領されていた。とりあえずいらないものを片っ端から外に出し、部屋の中を掃除する。明らかにゴミ屋敷同然だがその辺はレルゥの魔法で燃やしていく。
「酷い!悪魔!」
「うるさいですわ!こんなにしておいた自分を恨むですわよ!」
「あはぁん!」
クソザコナメクジレベルの体術なメルナをもう一度投げ飛ばし、悶えているうちに部屋掃除を開始する。そしてものの五分で部屋は片付いてしまったのである。これには涙を隠せないメルナ。
「僕の部屋がぁ……」
「私も今日からここに泊まるんですわよ?その辺考えてからどうにかしなさい」
明らかに怒っているメルナであるが、それ以上にレルゥは怒っていた。そしてこの一瞬で実力差を悟り、何をしても無駄だと言う事を悟ったメルナは唯一返してもらった寝袋に包まると、そのままレルゥに引きずられていくのであった。
一方その頃、ある場所では五人の悪魔が勢ぞろいしていた。最後の一人が来たことを確認すると、今回なぜ集めたのかと言う事を話していく老人悪魔。他の悪魔はと言うとそれを真面目に聞いていた。
「ふむ……さて、今回集まってもらったのは他でもない。我らが主が復活しようとしている」
「マジか『ロウ』!その情報は確かなんだろうな?」
ロウと呼ばれた悪魔に対し、他の悪魔と比べ小型な悪魔がそれに反応する。ロウは気にしていないようだが、隣にいたやや大柄な悪魔はその言動をたしなめる。明らかにその一言で上下関係が分かる一言であった。
「おいそんなことは言うもんじゃないぞ『ヒョウ』。それでロウ、あのお方はどこに?」
「うるさいなぁ『サイ』は……」
悪態をつくヒョウ、それをにらみつけるサイ。そして目くばせをして話を続けるように促すサイ。それを理解したのか、ロウは話を続けることにした。
「あぁ……それがな、どうやら我が主はとある人間に力の一部を与えそれで封印を免れたようだ」
「ふむ……『カゲ』、お前は何か知っているか?」
そう言うとサイは隣にいたやや影の薄い悪魔に話しかける。そのカゲと呼ばれた悪魔は黙って首を横に振るのみであった。ここでシンと部屋が静まり返る。いやな沈黙が続こうとしていたが、ここで何も話していない悪魔が口を開いた。
「それよりもさぁ、今はあの人の蘇生方法について考えるべきじゃない?場所はその後でいいでしょ」
「うぅむ……確かにそうかもしれんが……」
「貴様は本当に適当だな『ゴウ』」
ゴウと呼ばれた悪魔は、そう言われると真っ先に帰ってしまった。何か言おうとしたロウであるが、もういないのでどうしようもない。そして残った四人もこれ以上相談しても無駄だと判断したのか帰っていったのであった。